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体感中国語141―日本語の切り取り、中国語の切り取り(2)

 前回は王浩智さんが書かれた『日本語から学ぶ中国語・中国語から学ぶ日本語』(東京図書)を引用して、「日本語は因相を遡る方向に向かう傾向があるのに対して、中国語は行相→果相の方向に向かう傾向がある」という日中語彙の現実からの“切り取り”方の違いを紹介しましたが、それ以外にもいろいろあるようです。

 その違いのもう1つの例として「視点の違い」というのがありました。

 例えば駅の「改札口」、日本語では「改札口」はいつでもそのように言われていますが、中国語はそうではないそうです。遠くから「改札口」をながめていたり、キップをもって通過するとき、それは「剪票口」になります。キップをもって出るとき、それは「検票口」です。

 クレジット・カードも話し手がどこに注目して話をするかによって、いい方が以下のように変わるそうです。

信用卡    所持者の社会的ステータスに注目。
刷卡     読み取り機を通過させるという使い方に注目。
購物卡    買い物という使用目的に注目。
充值卡    利用者とカード会社の決済に注目。
方便卡    使用後の感想に注目。
磁卡     素材に注目。


 王浩智さん、その注目点、視点を「参照点」とも名づけており、その参照点をさらに二つにわけて「外部参照点」、「内部参照点」としています。前者は同種の物を見比べた時の「類似点」で、後者はそれぞれ固有のものである「相違点」のことです。

 改札口とクレジット・カードの例でいうと、前者の「~票口」と後者の「~」が類似点である外部参照点、「~票口」と「~」の前にある語句が相違点を表す内部参照点なのです。


 どうも中国語はある事物、出来事を表現するとき、この外部参照点と内部参照点の二つの組み合わせによって表すことが原則のようです。

 例えば「オリンピック大会」(奧林匹克大會)を省略していうときに、日本語は「オリンピック」とだけいいますが、中国語は「奥運会」と必ずいいます。「」(相違点=内部参照点)と「運会」(類似点=外部参照点)の組み合わせです。

 「口香糖」、「雞尾酒」、「四脫舞」はそれぞれ「ガム」、「カクテル」、「ストリップ」の中国語で、こちらも「~」、「~」、「~」が外部参照点です。


 どうも私たちが使っている日本語の漢字表記というのはこうした視点については無関心で、私もそのような見方があることをはじめて気付かされました。

 例えば「北方四島返還運動」の「返還」、これは「返す、戻す」の意味ですから、ロシアからの視点で、「北方四島を返してあげましょう運動」ととれるとのことです。1997年の「香港返還」、中国の新聞報道では「香港回帰」でした。視点に無頓着で、視点の不連続にも気にかけない、これは日本語が中国語よりもおおらかだという証拠なのかもしれません。こんな例も挙げられていました。

拉致問題    北朝鮮からの視点だそうで、「被拉問題」とするといいとか。でも、これはいいにくいですね。
表彰台      あくまでも賞を与える人の視点。もらう人の視点に立つとき、中国語では「領奨台」。
看板       見る人の視点。中国語は広告を出す人の視点から「招牌」、「広告牌」といいます。
受胎告知    「受胎」はマリアの、「告知」は天使ガブリエルからの視点。中国語は視点統一で「聖母領報」。
利用案内    日本語は利用者と案内者が同一語に押し込められているので、中国語は「参観須知」または「本館要
         求
」。
合格発表    これも合格者と発表者の視点が同一語内に。中国語は「錄取通知」か「發榜」。


 こうして見てみると、,中国語の方が日本語より厳格で正確でよさそうですが、でも世の中、厳格で正確なことばかりではなく、あいまいで漠然としたことも多い、あるいはその方が多いのです。中国語で文をつづる人は、そのようなあいまいな現象にぶつかるときは大いに悩むそうです。例えば殺人事件で「鈍器のようなもので殴った」と日本語では書くところを、中国語は具体的でないと書けないので、「ハンマーで殴った」と、そんな証拠品はまだ出てないのに、記者の思い込みで、そんなウソ記事をつい書いてしまうそうです。

≪蛇足≫
前に「定額給付金は定額還付金が正しい」という文をアップしました。「給付」はお上の目線、「還付」は国民目線という主旨ですから、王さんの「視点論」と同じですね。だれも賛同してくれないので”自画自賛”(自我吹嘘)です。(笑)
http://lailai-hanyu.at.webry.info/200901/article_9.html
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by damao36 | 2009-02-13 16:10 | 中国語 | Comments(0)
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