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体感中国語113―人称代名詞、日英中の違い

法政大学教授の王敏さんの新著『日本と中国―相互誤解の構造』(中公新書、2008)を読んでいたら、中国人による日本文化研究の嚆矢である周作人(1885-1987)が夏目漱石『吾輩は猫である』についての評論で、こんなことを述べているといって、以下の一文を紹介されていました。

 中国語では『吾是猫』とするしかなく、英語では『I am a cat』と訳しているから間違いとはいえぬけれど、しかし原文の面影がだいぶ損なわれていることはあらそえない。
 夏目の猫がもしOre wa neko jaといったとすれば、車夫の家あたりのクロみたいになるし、Watashi wa neko de gozaimasu なら、さしずめ三弦の師匠のところのミケといったところだろう。(中略)一言で教師苦沙弥家の名無しの猫君の鼻息が歴然とあらわれてくるから妙である。(中略)英語でも中国語でも、こういう微妙な口振りを伝えることができない。(『日本談義集』所収の小論「吾輩は猫である」平凡社東洋文庫、二〇〇三年)


周作人さんは魯迅の4歳年下の弟で、1906年から5年余り、日本に留学した方だそうです。周作人さんは、一人称代名詞とその述語の文末表現の違いによって、話題の背景の微妙な違いを表現する日本語に「妙である」と驚いているのです。私たちにとっては当たり前のことでも、一人称代名詞はほとんど「我」だけですむ中国語のネイティブにとっては驚きなのでしょう。人称代名詞の少ない英語のネイティブもきっと同感に違いありません。


それでは中国語の人称代名詞とはどのようなものか、まとめてみます。

第一人称                   (複数)我们wǒmen    咱们zánmen
          I  my  me  mine        we  our  us  ours

第二人称          nín(敬称)     你们nǐmen
          You  your  you  yours    you  your  you  yours

第三人称               他们tāmen  她们tāmen  它们tāmen
          He  his  him  his         they  their  them  theirs
          She  her  her  hers


人称疑問詞    shéi(shuí)
          who whose whom

中国語の人称代名詞、これだけ知っていれば十分です。英語は主格、所有格、目的格、それに所有代名詞と中国語よりは多いですが、日本語のように相手によって人称を代えないと礼を欠くということはなく、そういう点では中国語と英語は似ているといえましょう。

なお、中国語では主格と目的格は同形で、所有格、所有代名詞は人称代名詞に構造助詞の「~的de」をつけて定語(日本語の連体修飾語、英語の形容詞節)を作ります。ただ、ちょっと注意が必要なことは、この「~」、いつも必要というわけでなく、緊密に結びついて熟語化している場合人称代名詞+家族や人間関係・所属集団名の場合はいらないということです。なにをもって緊密と考えるか、どこまでを人間関係・所属集団名とみるのか、これは自然にいい慣れるしかないのでしょうか。
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by damao36 | 2008-11-02 19:41 | 中国語 | Comments(0)
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