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体感中国語57―『雪国』冒頭文についても補足

子欲居さんからコメントいただきました。ありがとうございました。

中国語は英語のように動詞の後に目的語がくるので、日本語よりも英語に近いと考えられがちですが、意外と共通点も多いですね。古文よりも漢文の方が理解しやすいこともあるので、子欲居さんのおっしゃるとおり、漢文訓読文体や漢語を通して中国語的発想が私たちの使う現代日本語に影響していることも多いのでしょう。

さて、昨日の記事について、補足したいことが出てきましたので、「『雪国』冒頭文についての補足」として、以下に書いておくことにします。




『雪国』の原文とその日英中文は以下のとおりです。

(原 文) 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

(英語訳) The train came out of the long tunnel into the snow country.


(中国語訳) 穿過県界長長的隧道,便是雪國。



以上の日英中のそれぞれの文構造を、私は以下のように図解しました。


(日本語) 国境の  長い  トンネルを   抜けると   雪国であった。
         (修飾語)    (修飾語)   (被修飾語)
         (連     用     修     飾     語)   (述    語
         (連        用        修         飾         語)     (述       語



(英 語) The train  came out of the long tunnel into the snow country. 
       (主   語)  (述語・動詞)  (副     詞     句)    (副       詞      句)



(中国語) 穿過  県界  長長的  隧道,  便是  雪國。
             (修飾語)    (修飾語)    (被修飾語)
         (述語)    (目           的           語)       (副 詞)   (述語





この図解で私がいちばんひっかかったのは、中国語文の最後の「便是  雪國」でした。

昨日は現行の一般的な中国語文法書に従って、「便(副詞) 是(動詞)  雪國(目的語) 」としていたのでしたが、以下の理由で、「便是(副詞)  雪國(名詞) 」に改めました。

理由は中国語動詞「是」が英語の「be動詞」に該当するとしたら、「be動詞」の後ろの名詞は目的語ではなく、補語となります。しかし、現行中国語文法ではほとんどが目的語としており、ここのところをはっきり説明しているものが皆無なのです。「雪國」がどうして目的語なのか、私には理解できないので、困ってしまいました。

そこで、手元の中国語辞書で「便是」を引いてみました。「便」は副詞と出ていますが、「便是」は一語としてはあつかわれていませんでした。だから、、昨日は「便是」は「副詞+動詞」としたのでした。

ところで、「便」という語は「就」という語と同じ意味があります。「就」には「就是」という語が認められていて、「範囲を限定し、他を排除する」副詞と説明されています。

「便=就」なら、「便是=就是」としても、意味に変わりはないのだから、いいではないか。なにせ中国語の辞書に品詞区分が明記されだしたのも、ここ半世紀内のことだから、まだまだ中国語文法は過渡期のようだから、そのうち私の説は認められるにちがいない。そう思って、「便是」もりっぱな副詞だと認定したのでした。

 



ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、この図解から、主として日本語と中国語の共通点を整理しておきます。


≪日中文の共通点≫

1 日中文とも無主語文です。

日中文とも主語がありません。金谷文法で説明すると、これは主語が省略されているのではなく、もともと主語は必要としないということです。日中文とも主語を加えることは可能ですが、加えると悪文になってしまいます。

2 日中文とも名詞述語文です。

英語は動詞述語文しかありませんが、中国語は日本語と同じで、ほかに名詞述語文、形容詞述語文があります。

動詞述語文は文が動いています。名詞述語文は、名詞というのは存在しているモノの名前ですから、動きではなくて、ある状態が目の前に存在していることを伝える文です。

いま人気の”ハートで感じる英語塾”の大西泰斗先生は「(英文の)過去形は『遠く離れた』をあらわす形。過去形を使うとき、その目は遠くを見つめています。」といっています。この英訳文は「came」という過去形ですから、この文を英訳で読むと、どこか離れたところからトンネルを出てくる列車を見ていることになってしまうのでしょう。




この文だけから日英中文の特徴をズバリというのはムチャな話ですが、でも、「瓢箪から駒」ということもありましょうから、あえて思い付きを書いておくことにします。

日本語=連用修飾語という大風呂敷を述語は背負っています。
英  語=主語と動詞が合体し、あとは後ろに並べておきます。
中国語=物事の順序に従って、細切れに述語を連発します。




                              (マルチリンガルに近づきつつある、でも余命いくばくもない ネズミ)


≪蛇足≫
中国語は日本語と同じで、テンスというものはないといわれています。

日本語の「雪国だった」の「~た」は過去というよりも完了実現でしょう。中国語の「穿過」の「~過」も完了体験に過ぎず、英語の過去形のような距離感、「遠いまなざし」は欠けています。その代わり、過去の出来事も目前で展開し、存在している、そんな感じはしないでしょうか。

中国語も日本語も過去の話をするときは、話者も聞き手も、その時点まで出かけて話している、きっとそうだと思うのです。でも、英語のような距離感、立体感を表す、例えば完了形とか進行形とかは、中国語や日本語では一体どのように表現するのでしょうか。
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by damao36 | 2008-07-02 10:03 | 中国語文法 | Comments(0)
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