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「大中華圏」、“Greater China”は実在するのか

 

評論家の寺島実郎氏は早稲田の学生時代、個人的関心から中国語を数年勉強したのだそうです。その寺島氏の著書大中華圏 Greater ChinaNHK出版 2012年刊)が図書館にあったので読んでみました。

1章は夏目漱石がロンドン留学渡航中に立ち寄った香港・シンガポールの印象記で、その中に漱石がロンドン滞在中に記した1901315日の日記が紹介されていました。

    日本人を観て支那人といはれると厭がるは如何、支那人は日本人よりも遥かに名誉ある国民なり、ただ不幸にして目下不振の有様に沈淪せるなり。心ある人は日本人と呼ばるるよりも支那人といはるるを名誉とすべきなり。仮令然らざるにもせよ日本は今までどれほど支那の厄介になりしか、少しは考えて見るがよからう。西洋人はややともすると御世辞に支那人は嫌いだが日本人は好きだといふ。これを聞き嬉しがるは世話になった隣の悪口を聞いて自分の方が景気がよいといふお世辞を有難がる軽薄な根性なり。P.7


「大中華圏」というのは英語の“Greater China”の寺島氏たちの訳語のようで、この本のサブタイトルには「ネットワーク型世界観から中国の本質に迫る」と記されています。つまり、「大中華圏」とは「実は中国は香港・シンガポール・台湾など中華圏の国々とネットワーク型発展の中にあって、それを凝縮して表現した」語だということです。

 中国がどうして「ネットワーク型発展」の国なのか。ソ連崩壊後のロシアをも含めた社会主義国の中で、どうして中国だけが著しい経済成長を遂げて第二の経済大国になったのか。その理由を以下の問答で説明していました。

冷戦が終わって20年もたっているのに、かつての社会主義国と言われた国々の中でなぜ中国だけがコンスタントに成長軌道を歩んで来たのか。

   中国は華僑、華人国の香港・台湾・シンガポールの資本・技術を取り込みながら、それを成長のエネルギー源にして吸収し、同時にその華僑・華人国を飛躍のためのジャンプボードとしてたくみに利用している。つまり、香港・台湾・シンガポールとのネットワーク型のつながりを深めることで、コンスタントな成長軌道を走っているのである。(P.14


寺島実郎氏のいう「大中華圏」、“Greater China”は本当に実在し、順調に機能していくのでしょうか。その傍らでわが国はどういう役割を果たしていくのでしょうか。




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by damao36 | 2018-06-08 10:36 | 中国 | Comments(0)
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