中国語の述語を含む述部については,私は以下のように考えています。
<否定・進行の副詞/助動詞+述語(動詞/形容詞)+動態助詞/補語> ※ 副詞は文成分としてはほとんどが状語に属する。しかし,否定の副詞”不””没”“別”などと進行の副 詞“在”は述部の一部とする。 ※ 中国語のテンス(時態)は述語とのかかわりは極めて薄いが,アスペクト(動態)とのかかわりは強い。 そのアスペクトを示すのが動態助詞“着”“了”“过”と進行の副詞“在”である。 ※ 結果・程度・状態・可能の補語は述部としても違和感はないが,数量・方向補語はやや違和感がある。 しかし,述部に含める。 さて,述部のコアである述語となることのできる語は,中国語の場合は日本語に似て,動詞と形容詞,そして名詞です。しかし,名詞は例外に近く,ほとんどは動詞と形容詞で,中でも動詞が主になります。動詞と形容詞はどうして見分けるのかということもありますが,その前に動詞とは何かを以下のように定義することにします。 事物の動作・作用・状態・存在・文関係などを時間的に持続し,また時間的に変化して行く ものとしてとらえて表現する語。 ※ 上記の定義は『広辞苑』の動詞定義を援用した。日本語の動詞・形容詞・形容動詞 の定義は以下のとおり。 【動詞詞】 事物の動作・作用・状態・存在などを時間的に持続し、また時間的に変化して行くものとしてと らえて表現する語。(『広辞苑』 後半省略。) 【形容詞】 〔言〕(adjective) 事物の性質・状態を、事物の持続的・静態的な属性に着目して表す語。国 語では用言の一つで陳述の力を有する。(『広辞苑』) 【形容動詞】事物の性質・状態を表現する形容詞の活用の不備を補うために発達した語をいう。学校文法 の文語には、名詞に「にあり」の結合した「静かなり」、名詞に「とあり」の結合した「泰然たり」の 2種類あり,口語では、名詞に「にあり」の流れである終止形が「だ」で終わるもののみを言う。 しかし,形容動詞を認めず,形容詞に含める説も近年有力。その場合,もともとの形容詞をイ 形容詞,形容動詞をナ形容詞といって区別している。この書もそれに従う。(管理者解説) ※ 動詞と形容詞の見分け方は「①副詞“很”の修飾を受けるかどうか。②賓語をとる ことができるかどうか。」の2点。「①は可で,②は不可」が形容詞。動詞は,「① も②も不可」(自動詞)・「①は不可,②は可」(他動詞)・「①も②も可」(他動 詞で心理・感覚・生理活動動詞)である。 上記の動詞定義から,動詞と言うものは「事物の動作・作用・状態・存在などを表現する語」,そして「(それらのはたらきが)時間的に持続し、また時間的に変化して行くものとしてとらえた表現」という二つの側面があることがわかります。そこでまず「動作・作用・状態・存在・文関係など」と言う説明から,動詞を大きく五つにわけ,さらに下位分類して全部で12種類としました。 Ⅰ 動作動詞(何かをするときの体や心の動きを表す動詞) 1. 動作動詞(何かをするときの全身または手足の動きを表す動詞) 2. 心理・感覚活動動詞(何かに対する心の動きや感じたことを表す動詞) Ⅱ 作用¬動詞(他のものに力を及ぼして影響を与える「行い」を表す動詞) 3. 行動動詞(実際に体を動かして何かを行うことを表す動詞。) 4. 行為動詞(はっきりした意思をもって何かを行うことを表す動詞) Ⅲ 状態動詞(人や物事の,ある時点でのありようを示す動詞) 5. 状態動詞 6. 知覚・感覚動詞 7. 生理現象動詞 8. 方向動詞(ある事物がどの方向に移動するかを表す動詞)(§参照) Ⅳ 存在動詞(人や物事が現にそこにあることを示す動詞) 9. 存在動詞(§参照) Ⅴ 文関係動詞(具象的な物事を表す語と語の関係を示す動詞) 10. 判断動詞(§参照) 11. 使役・受動動詞(§参照) 12. 能願動詞(§参照) 12種類の動詞のうち,8.方向動詞 9.存在動詞 10.判断動詞 11.使役・受動動詞 12.能願動詞はそれぞれの章で説明するので,ここでは省き,1. 動作動詞 2. 心理・感覚活動動詞 3. 行動動詞 4. 行為動詞 5. 状態動詞 6. 知覚・感覚動詞 7. 生理現象動詞の7種類を主に説明します。 動詞のはたらきから中国語動詞の種類を大きくⅠ~Ⅴの5種類としましたが,Ⅰ(1・2)・Ⅱ(3・4)は主として<時間的持続>に関係し,Ⅲ(5・6・7・8)は<時間的変化>にかかわります。Ⅳ(9)・Ⅴ(10・11・12)は時間とは無関係です。 それでは1~8の動詞具体例を,中国・国家対外漢語教学領導小組弁公室が定めた《詞彙等級大綱》の最重要語2000語,重要語1000語計3000語の中に含まれる一字語の動詞を抜き出し,分類しておきます(約400語/ 393語)。 Ⅰ 動作動詞 1.動作動詞(何かをするときの全身または手足の動きを示す動詞) a 瞬間動作動詞 (一瞬で動作が決まる動作動詞。) 按 拔 包 采 踩 拆 刺 打 倒 滴 跌 翻 放 砍 跨 切 取 扔 掏 踢 投 团 脱 推 压 咽 咬 折 转 撞 b 動作結果動詞 (動作後の結果が持続する動作動詞) 挨 抱 捕 插 朝 带 戴 吊 得 端 蹲 扛 跪 合 夹 靠 捆 立 留 趴 爬 排 骑 起 入 躺 仰 遇 站 住 坐 c 継続性動作動詞 (同じ動作を繰り返すことのできる動作動詞。) (身体動作) 编 擦 吹 穿 钓 登 渡 堆 滑 划 飞 挥 割 搁 拣 剪 进 卷 刻 拉 捞 捧 敲 冒 摸 磨 拿 扭 拍 扑 牵 撒 抬 弹 跳 挑 退 挖 吐 挖 玩 摇 演 走 止 (発声動作) 哼 哭 嚷 笑 (五感動作) 吃 抽 喝 见 看 瞧 听 闻 2.心理・感覚活動動詞 (何かに対する心の動きや感じたことを表す動詞) a 心理活動動詞 (何かに対する判断や認識・感想といった人の心の活動を示す動詞。) 爱 比 顾 记 考 怕 认 忍 忘 望 吓 想 向 像 许 准 b 感覚感知動詞 (五感や直感である状態や物事から受ける感じを示す動詞。) 尝 懂 好 急 Ⅱ 作用¬動詞(他のものに力を及ぼして影響を与える「行い」を示す動詞) 3.行動動詞 (実際に体を動かして何かを行うことを示す動詞) a(行動作用) 避 别 补 藏 冲 出 除 闯 呆 当 到 等 丢 对 发 费 逢 干 赶 搞 跟 隔 给 逛 还 回 拐 接 进 举 连 列 临 领 买 卖 迈 弄 去 扫 射 送 逃 替 弯 往 围 握 吸 向 移 用 找 争 织 至 指 种 抓 装 组 追 捉 b(対他作用) 摆 搬 搭 披 分 付 盖 供 挂 刮 寄 建 交 解 烤 扣 量 略 埋 破 洒 晒 伤 烧 热 省 收 受 甩 碎 撕 贴 填 涂 为 洗 摇 印 运 造 张 钻 照 煮 作 做 c(外物動作) 滚 碰 透 d(天然作用) 生 掀 4.行為動詞 (はっきりした意思・目的をもって何かに力を及ぼして影響を与える動詞) a(対他行為)帮 猜 查 催 订 定 逗 断 犯 防 扶 奖 较 教 借 检 陪 赔 骗 请 求 劝 杀 试 顺 喂 献 赛 使 随 选 探 添 抢 偷 托 拖 养 约 b(自助行為)尽 练 修 学 c(言語行為)报 唱 抄 吵 称 传 答 道 读 告 喊 呼 叫 讲 聊 录 骂 念 说 数 算 谈 问 写 祝 Ⅲ 状態動詞(人や物事の,ある時点でのありようを示す動詞) 5.状態動詞 (始まりはあるが終わりはない動詞) 败 保 闭 变 差 超 成 动 冻 堵 够 关 管 化 慌 混 加 减 降 开 空 困 烂 亮 了 流 漏 露 没 灭 喷 飘 平 铺 齐 欠 惹 闪 少 生 胜 剩 输 死 缩 烫 完 响 赢 在 载 粘 占 长 涨 着 治 6. 生理現象動詞 (始まりはあるが終わりはない動詞) 病 累 松 睡 疼 醒 歇 要 醉 7.心情動詞 愁 恨 气 爱 恨 饿 困 怕 想 要 羡慕 讨厌 喜欢 生气 同情 体贴 … 8. 方向動詞 (ある事物がどの方向に移動するかを示す動詞) a(単純方向動詞・A類) 来 去 b(単純方向動詞・B類) 上 下 进 出 回 过 开 起 c(複合方向動詞・AB類)上来 上去 下来 下去 进来 进去 出来 出去 回来 回去 过来 过去 开来 开去 起来 落? 升? Ⅳ 存在動詞(人や物事が現にそこにあることを示す動詞。始まりはあるが終わりはない。) 9.存在動詞 存 有 在 存在 无 增加 缩小 … Ⅴ 文関係動詞(具象的な物事を表す語と語の関係を示す動詞) 10. 属性動詞 (主語と賓語の関係を規制する動詞) (一致) 是 叫 姓 … (類似) 如 像 好像 如同 似乎 仿佛 (認定) 第 该 算 算是 … (同一) 等于 … (比較) 比 ?? 经 为 11.使役・受動動詞(主語と述語の関係を規制する動詞) (使役) 叫 让 使 令 派 请 命令 … (受動) 被 叫 让 给 … 12.能願動詞(助動詞)(話者の心的態度を述語に与える動詞) 当 得 会 该 敢 肯 可以 能 想 要 应该 应当 愿意 (可能 必须 值得 ) 以上中国語の動詞一字語約400語を中心に動詞の分類をしてきました。ところで,この最重要語・重要語計3000語の中で,二字語以上の動詞が1000余語あります。三字語はごく少数で,“对不起”“开玩笑”“看不起”“来不及”“来得及”“用不着”といったフレーズともとれるわずか6語でした。 さて,その二字語動詞ですが,一字語動詞同様の分類が可能ですが,それ以外の特色として,日本語漢語なら名詞としてもよく用いられるる語も必ずしも名詞ではありません。(これらの語は日本語では「~する」という語尾を付けるとサ変動詞になります。)例えば,日本語漢字語では名詞としてもよく使われる二字語の例語をA・B・Cの3項から,挙げておきまが,この例語の中で,名詞との兼類語は“报道”“保证”“把握”“变化”“表示”“表现”“毕业”“创作”“存在”だけです。 爱护(愛護) 安心(安心) 保持(保持) 保存(保存) 报道(報道) 包含(包含) 包括(包括) 保护(保護) 保留(保留) 保证(保証) 把握(把握) 变化(変化) 表明(表明) 表示表示) 表现(表現) 比较(比較) 毕业(卒業) 补习(補習) 布置(布置) 参观(参観) 参加(参加) 参考(参考) 成立(成立) 承认(承認) 成熟(成熟) 称赞(称讃) 成长(成長) 重复(重複) 充满(充満) 传播(伝播) 创造(創造) 创作(創作) 出版(出版) 出生(出生) 出席(出席) 出现(出現) 促进(促進) 存在(存在) ※ 例えば“保持”“保存”は常に「保持する」「保存する」と動詞の意味で用いられる。しかし,“保证”の場 合は「保証する」という動作行為(動詞)と“保証書”という物名(名詞)とを指している。したがって,動詞 と名詞の兼類語になる。“安心”“成熟”は動詞と形容詞,“比较”は動詞と副詞との兼類語である。 動詞と言うものはもともと述部の位置にあるべき語です。しかし,単音節語の一字語動詞が主語や賓語の位置にあることは例外に近くのですが,上記のような二字語はしばしば述語の位置以外に,つまり主語や賓語の位置でもよく見かける語で,日本語感覚では名詞と認めてもいい語群です。このように名詞との二字語の兼類語は中国語動詞の中では3割から4割に達すると言われています。最重要語・重要語計3000語の中で,動詞は約1000語,そのうち1音節の一字語は4割,残りの6割は2音節語の二字語で,その大多数はこのような名詞との兼類語です。まだ確認はしていませんが,最重要語・重要語動詞に限ると,ゆうに4割になりそうな感じです。日本語の場合は上記の語はすべて名詞,「~する」という語尾を付けて動詞とします。中国語はそういう活用語尾がつけられませんから,同形で動詞と名詞などの兼類語が多数派生します。その割合があまりにも高いと混乱するので,動詞にも解釈できる場合はあえて名詞とはしない,どうもそういう理屈です。 (上記の動詞分類は目下検討中のものです。特に状態動詞なるものの確定に逡巡しています。)
by damao36
| 2012-01-19 17:26
| 中国語文法
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