中国語で平和を“和平”というのはどうしてなのだろうか。 《现汉》には“平和”も“和平”も載っている。“平和”は形容詞では“①(性情或言行)温和。②(药物)作用温和;不剧烈。③平静;安宁”、それに方言動詞として“(纷扰)停息”の意とある。“和平”のほうは名詞としては“指没有战争的状态”、形容詞としては“温和;不猛烈”の意とする。 “平和”の“平”は《现汉》語釈⑥の“安定”の意で、“和”は“平和;和缓”の意。いずれも付属形態素で、その組合せである“平和”は「安定していておだやか」という状況を表す形容詞とのこと。 “和平”のほうはというと、語頭の“和”は《现汉》語釈③の“结束战争或争执”意の動詞、“平”は語釈⑥の“安定”意の付属形態素である。“安定”の意の“平”は動詞性語、形容詞性の語にもとれるが、ここは「争いが終結して、その結果安定している」というVV構造の動動連語と解しておく。品詞は名詞になっている。 “平和”も“和平”も近代に入ってからの造語かと思ったが、漢和辞典には「平和」は「やわらかでおだやかなこと」の意とし、『左氏春秋』の「慆堙心耳、乃忘平和」(心耳ヲ慆堙シテ、乃チ平和ヲ忘ル)という例文を、「和平」は「戦争や騒乱がなくて、世の中のおだやかなこと」の意とし、『易経』から「聖人感人心而天下和平」(聖人人心ヲ感ゼシメテ天下和平ナリ。)という例文を示している。
古典も「和平」という語を「戦争や騒乱がなくて、世の中のおだやかなこと」の意として用いているので、中国語の“和平”の方が「平和」の意としては正当のように思えるのだが、それならばどうして日本では「和平」とはいわずに「平和」というようになったのか、これまた私にとっては新たな疑問である。 #
by damao36
| 2019-07-01 13:32
| 中国語
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