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214 授与文―二重賓語文

 日本語の目的格である「ニ格/ヲ格」は修飾成分の連用修飾語の一部ですから,日本語の基本文成分にはO(目的語)という成分はありません。英語はSV文やbe動詞のSVC文にはO成分はありませんが,Oという成分をもつ文型は一般動詞文のSVO文やSVOO文・SVOC文の3文型があります。

 中国語はというと,私案ではありますが,代表文型はSVO文ですが,O(賓語)をもつ文型はみんなで7つです

 その中でOを複数もつ文型は,英語は第4文型のSVOO文だけですが,中国語は授与文(SVOO文)と連動文(SVOVO文)とがあります。しかし,連動分は二つの動詞に二つのOなので,一つの動詞に二つのOとすると,授与文だけとなります。

 ただし、この授与文はSVOO文がもともとの文型ですが,その一つのOを介詞“把”“给”“跟”“向”などを用いて述語動詞の前に移動させて介詞連語の処置文というのがあります。その文型は<S+介詞O+V+O>で,下線部<介詞O>(SO’VO文と表記する)は形式上は状語ですが,実質上はやはり賓語です。ですから,中国語の二重賓語文にはこの文型をも入れておくべきでしょう。
  ※ 介詞連語の処置文には<SO’V>文型と<SO’VO>文型とがある。後者のVに位置する動詞は賓語
    を二つ必要とする授与型動詞。したがって,授与文というのはSVOO文とSO’VO文の2型になる。

 私たちの言語表現で,一つの動詞で2つの賓語を必要とする表現とはどのようなものなのかを考えてみると,それは他動詞の中の,「誰かに何かを与える」「誰かから何かを受け取る」「誰かに何かを述べる」という表現をするときに用いる動詞になります。上記の意味をまとめて授与型動詞とし,その動詞を用いた文が授与文になります。主な授与型動詞を挙げておきます。
≪授与型動詞群≫
A 「与える」という意味をもつもの。(O2は動作の結果O1に移動するので,→印。)
    罚fá(罰する)    付fù (支払う)      给gěi(与える)        还huán(返還する)
    交jiāo(手渡す)     教jiào(教える)      借给jiègei(貸す)     卖mài (売る)
    求qiú(求める)     送sòng(送る)      投tóu(投げる)     找zhǎo(おつりを探す)
    租zū(賃借する)

B 「取得する」という意味をもつもの。(O2は動作の結果Sに加わるので,←印。)
    夺duō(奪う)        借jiè(借りる)        奖jiǎng(買う)       买mǎi(買う)
    拿ná(手にもつ)     骗piàn(だます)      收shōu(受け取る)     偷tōu(盗む)
    租zū(賃借りする)     赢yíng(勝ち取る)

C 「述べる」という意味をもつもの。(O2は言語動作の内容だから,→印。)
     报告bàogào(報告する)  称chéng(称する)   告诉gàosu(教える)      回答huídá(回答する)
    叫jiào(呼ぶ)          骂mà(ののしる)   请教qǐngjiào(教えてもらう)  说shuō(責める)
    通知tōngzhī(通知する)  问wèn(尋ねる)     写xiě (写す)            祝 zhù(願う)

  ※ 上記授与型動詞の中には介詞連語の処置文<SO’VO>文型のみでしか用いられないものもある。

A 
1 我给你 这个。 Wǒ gěi nǐ zhèige.
  I give me that. (これ、差し上げます)
2 我还你 这本书。 Wǒ huán nǐ zhè běn shū.
   I give this book back to you. (この本をお返しします)
3 我送你 生日礼物。Wǒ sòng nǐ shēngrì lǐwù.
   I will send you a present for your birthday. (誕生プレゼントを送ります)
4 我教你 日文。Wǒ jiào nǐ Rìwén.
   I teach you Japanise.(日本語、教えますよ)
5 我想求您 一点儿事。 Wǒ xiǎng jiù nín yìdiǎnr shì/
   Can I ask you a favor? (一つお願い事があります)
6 谁借给你 这么多的钱? Shéi jiègèi nǐ zhème duō de qián.
   Who lent you so much money?. (誰がそんなにお金を貸してくれたのかい)
7 妈妈买给我 一本词典。Māma mǎigei wǒ yì běn cídiǎn.
  Mother bought me a dictionary the other day.(母が私に辞書を買ってくれた)
    ※ Aの第一賓語と第二賓語の関係は「受け取る」(have)の意味をもつ。例えば1なら,<“你” 
      have “这个”>の意味が成り立つということ。
    ※ 6・7の<動詞+“给”>の“给”,《现代》では介詞としているが,「動詞転用の語の場合は動詞と
      する」により,私は補語動詞とする。つまり、「貸して与える」「買って与える」の「与える」。
    ※ 述語が<動詞+“给”>型の動詞には“给”がなくても同じ意味をもつものとないと文が成り立た
      ないものとがある。6はなくても同じで,7はないと意味不明の例。
    ※ 中国語は英語とは違って,述語のあとが長くなるのを好まない。したがって,SVOO文は意外と少
      ない。上記の授与文も介詞“把”“给”“跟”“向”などを用いて第一賓語をVの前に持ってくることが
      多い。例えば7を下例のように表現する。この場合の“给”を動詞としたら連動文になるが,ふつう
      介詞にとり形式上は修飾成分の状語である。(“给我”がなくても文は成立するから。)
          例 妈妈给我买一本词典。Māma gě iwǒ mǎi yì běn cídiǎn.


B 
8 我借你 一百块钱。 Wǒ jiè nǐ yìbǎi kuài qiáni.
   I borrow one hundred yuan off you. (100円お借りします)
9 他骗我 两百美元。 Tā piàn wǒ liáng bǎi měiyuán.
   He swindled me of 200 dollars. (彼から200ドルだまし取られた)
10 打麻将,我赢了他 三次。Dǎ májiàng, wǒ yíngle tā sān cì.
   I have won him to ply mahjong three times.(マージャンで彼に3回勝った)
11 我买了新车 二百万日元的。 Wǒ mǎile xīnchē Èérbǎi wàn Rìyuǎn de.
   I bought a new car two million Japanese yan. (200万円で新車を買った)
      ※ Bの第一賓語と第二賓語の関係は「与える」(give)の意味をもつ。例えば7なら,<“你”
        give “一百块钱”>の意味が成り立つということ。
      ※ 7・8で用いているの“借”日本語ではもっぱら「借りる」という意味で使われているしかし、中国
        語では「借りる」と「貸す」の両義をもつ。単用の場合は日本語と同じ「借りる」の意味になること
        が多い。7は「貸す」意味であるが,「貸す」意味の場合は“借给”という動・動連語で覚えておい
        た方が間違いが少ない。
      ※ もし<述語動詞+数量詞>であれば,この数量詞は数量補語になる。しかし,8~11の文はそ
        の中間に第1賓語があるので,この数量詞は第2賓語である。8~11の英文の数量詞は副詞句
        VOC文である。


C
12 我问你 一个问题。 Wǒ wèn nǐ yí ge wèntǐ.
   I ask me a question. (ひとつ質問があります)
13 祝你 早日恢复健康。Zhù nǐ zǎorì huīfù jiànkāng.
   I hope you’ll be well soon. (一日も早く回復しますように)
14 我告诉你 好消息。Wǒ gàosu nǐ hǎo xiāoxi.
   I tell me the good news. (いい知らせがあります)
15 请告诉我 最受欢迎的观光景点。 Qǐng gàosu wǒ zuì shòu huányíng de guānguang jīngdiǎn.
   Can you tell me the popular tourist spots? (人気の観光スポットを教えてくださいた)
16 他骂我 傻瓜。Tā mà wǒ shǎguā.
    He called me a champion idiot. (バカと彼にいわれた)
17 你可以叫我 小龙。Nǐ kěyǐ jiào wǒ Xiǎo Lóng.
    You can call me Xiao Long. (私をショウローンと呼んでください)
18 我们都称他“铁牛”。Wǒmen dōu chnég tā “Tiěniú”.
   We all call him Iron Ox. (私たちは彼をアイロン・オックスと言っている)
19 上级评他 优秀员工。Shàngjí píng tā yōuxiàu yuǎngōng.
    His boss judged him a model worker. (上司は彼を優秀な職員だと認めた)
      ※ Cの12~15の第一賓語と第二賓語の関係は「受け取る」(have)の意味をもつ。例えば10な
        ら,<“你”have “一百块钱”>の意味が成り立つということ。16~19の第一賓語と第二賓語
        の関係の「である」(be)の意味をもつ。例えば16なら,<“他”is “傻瓜”>の意味が成り立つと
        いうこと。
      ※ 英文は12~15はSVOO文で,16~19はSVOC文である。

20 你问他 能不能明天来。Nǐwèn tā néng bù néng míngtiān lái.
    Will you ask him if he can come tomorrow? (明日これるかどうか彼に聞いてください。)
21 我回答你 不可做这个。Wǒ huídá nǐ bùkě zhòzhèige.
    l answer you not to do it. (これをしたらダメだと回答します。)
22 我期待他 更一步的前进。 Wǒ qīdài tā gèng yíbù de qiánjìn.
   I’m looking fouward to his further success.(彼がさらに向上することを期待しています。)
  ※ ここはいわゆる私の名づける”心中文”。述語あとの代詞が第一賓語で,そのあとは第2賓語。  

 二重賓語文でSVOO文を取る文は,中国語の場合はあまり多くはありません。その理由は,上記の注でも既述しましたが,中国語は英語とは違って,文のコアであるSVが英語のようには密着してないこと,中間には英語なら最後に付けたす文成分である状語がはさまっていることが多く,その後に出てくるVとOが長いと理解しにくいというその文構造にあります。したがって,二重賓語文は単純なものが多く,介詞“把”“给”“跟”“向”などを用いて第一または第二の賓語をVの前に持ってくる例文のの方が多くみられます。中には,第一賓語や第2賓語を主題としてしまっているものもあります。

 それでは以下にSVOO文型ではなく,SO’VO文型の授与文例を挙げておきます。
22 我向她说实话。Wǒ xiàng tā shuō shíhuà.
   I’ll tall her a truth. (彼女に本当のことを話す)
23 请把办公地址的更改通知他们。Qǐng bǎ bàngōng dìzhǐ de gènggǎitōngzhī tāmen.
    Please notify them of the change of the office’s address.(事務所の住所変更を彼らに知らせなさい)
24 今天的报纸 给我拿来。Jīntiān de bàozhǐ gěi wǒ nálai.
    Please bring me today’s paper. (今日の新聞を持ってきてくれ)
25 他所知道的事情全部告诉我了。Tā suǒ zhīào de shìqing quánbù gàosu wǒ le.
    He told me all he knew about it. (彼は知っていることはみな教えてくれた)
      ※ 24・25は介詞省略とも考えられるし,主題だとも考えられる。
      ※ SVOO文型に書き換えると,“我说她实话” “请通知他们办公地址的更改”“拿来给我今天的
        报纸”“全部告诉我了他所知道的事情”となる。しかし,7を書き換えると「彼女についての本
        当の話をしよう」とも解釈できる。23は“办公地址的更改”を言い忘れて付け足したニュアンス。
        24は“拿来”とまず命じて,“给我今天的报纸”といった感じ。25はも“了”を入れてそこまでが
        一区切り,あとは追加という感じで発音すれば,自然に聞こえる。
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by damao36 | 2012-06-27 17:09 | 中国語文法 | Comments(0)

213 賓語――日語・英語と比べて学ぶ

 中国語の述語動詞後の名詞または名詞性連語は賓語という文成分と考えて間違いありません。この賓語は日本語の連用修飾語の中の目的格(ヲ格・ニ格),英語の目的語にほぼ同じです。ですから,わが国中国語文法書の多くは英文法で用いる目的語という用語を用いています。しかし,私は中国で使われている賓語(宾语bīnyǔ)という用語を用いることにします。
  ※ 賓語の“宾”は“客人(跟“主”相对)”の意。“客语”(客語)ともいう。一番奥座敷にいるからか。

 なぜ目的語と言う用語は使わずに,私たちにはなじみのうすい賓語という用語を用いるのか,それは中国語の賓語は英語の目的語とは大きくは一致するが,イコールではないからです。

 例えば「私は日本人です」という文です。
 1 (日本語)   私は   日本人です。      <名詞+助詞+名詞+助動詞>   ……名詞述語文
            (主語)   (述語)                                      (SN文)
   (英 語)   I   am   a Japanese.    <代名詞+動詞+冠詞+名詞>   ……動詞述語文
            S   V     C                                     (SVC文)
   (中国語)  我   是   日本人。 Wǒ shì Rìběnrén. <代詞+動詞+名詞> ……動詞述語文
           (主語)(述語)  (賓語)                                   (SVO文)

 日本語文には動詞は用いられていません。述部のコアは名詞ですから,これは名詞述語文です。

 英語は不完全自動詞be動詞が用いられています。この語は「AはBである」という意味で,Aの属性(固有の性質)や状態がBであると説明する語です。動作などを示す一般動詞とは大きく異なります。「主語の“I”(A)は一体何者なのか。それは“a Japanese”(B)なのだ」,この文はそう説明しています。つまり,このbe動詞は“I=a Japanese”という等式関係を示す語で,“a Japanese”は主語の属性を補足説明している語です。補足説明ですから,この“a Japanese”は補語の成分と称するのです。
  ※ “I am a Japanese”は英語の第2文型のSVC文。この文型のCには名詞か形容詞が来る。上記の
    例文は名詞だが,形容詞が来てもS=Cの等式は成り立つ。形容詞の場合は主語の性質・状態を補足
    説明する。この文型のVは不完全自動詞のbe動詞がほとんどである。
  ※ 英語にはもう一つ補語を持つ文型がある。第5文型のSVOC文である。この文型の場合はS=Cでは
    なく,O=Cの等式になる。後で出てくる例文5“They elected him chairman.”がこの文型。この文
    型のVは不完全他動詞になる。第2文型が主語説明文なら,第5文型は目的語説明文である。


 さて,中国語はどうでしょうか。英語と比較すると,冠詞はありませんが,品詞の配列は<名詞―動詞―名詞>と英語・中語ともに同じです。しかし,英語は第2文型SVC文ですが,中国語は第3文型SVO文なのです。“是”という動詞のあとの名詞は補語ではなく,賓語(ほぼ英語の目的語)なのですから。

 なぜ補語とはせずに賓語としているのか。その大きな理由は中国語には動詞をあとから補足説明する中国語独特の語法があり,その語法を中国語では補語と称しているからです。
  ※ <動作動詞+名詞>なら,その名詞は動詞の動作・作用の及ぶ対象ターゲットであるから,目的語と
    称してよい。しかし,中国語の“是”は英語のbe動詞と同じく動作動詞ではなく,物事の関係を説明・判
    断する関係説明の動詞である。この中国語文もまた“我=日本人という等式は成立している。
  ※ しかし,この“是”には「これは」という指示語の意味があり,「AはBである」というbe動詞とは少し異な
    り,「A,それはBである」というニュアンスがある。単用することもあり,会話応答の中で是”と答えると,
    「そのとおりだ」(“对duì”に同じ)という意味になる。be動詞のような不完全自動詞とは言えない。
  ※ “是”は“叫・姓・像・等于・・・”などと共に関係動詞と言われ,“是”は同一関係を示す動詞である。

 “是”には上記のとおりbe動詞とは異なるところがありますが,述語の前にある名詞の補足説明というはたらきはbe動詞と同じです。なのにどうして補語とは言わないのか,その理由は述語をあとから補足説明する語法の方が中国語としては重要で,そちらを優先させて補語と命名しているたからです(私の推論)。

 そのため中国語の賓語は動詞のターゲット語と,それとは異質である主語・目的語の説明語とがあわさって“目的語”とされているのです。<英語の目的語=中国語の目的語>ではない,そういうことを自覚するために,あえて賓語という本場で用いられている用語を使うことにしました。
  ※ 無用な混乱を避けるために,中国語の“目的語”は“補充語”としたらという説もあったようだ。


 英語の中には,私たちから見たら一見目的語と思うのに,そうでない以下のような文例があります。
  2 I go to school.  (学校に行きます)         ※この「に」は動作の帰着点
  3 He live in Shanghai. (彼は上海に住んでいます)  ※この「に」は場所
  
 日本語文の「学校に」「上海に」の部分はいずれも連用修飾語の目的格で,日本語文はSV文です。ところで,英語文は日語・中語の感覚から私はSVO文だろうと考えたのでしたが,違っていました。この文の“go”“live”は自動詞なのです。“I=to school”“He=in Shanghai”の等式も成立しませんから,SVC文でもありません。“to school” は帰着点,“in Shanghai”は場所を示す副詞句で,付け足しのその他の要素です。この英語文もまたSV文でした。

上記の例文,中国語ではどうでしょうか。
  2’ 我去学校。Wǒ qù xuéxiào.
  3’ 他住在上海。Tā zhùzài Shànghǎi.

 中国語でも自動詞・他動詞の区別をすることはありますが,あまり意識されません。名詞を付け加えないと文が完結しないと思われるなら,そこで用いる動詞は他動詞なのです。ですから,上記の例文は第3文型のSVO文です。“学校”“上海”はいずれもりっぱな賓語なのです。
  ※ 3’の述語“住在”は動補連語。前の動詞“住”を後ろの補語動詞“在”が補足説明し,「住んで・そこにい
    る」という意味を形成する。こういう語法が中国語の補語である。補語を基本構造の骨格となす文成分
    と考えると,この文はSVCO文になる。しかし,補語は述部の一部とみなすと,この文はSVO文である。
  ※ 3’のように“住在上海”とあるときの“在上海”を<介詞“在”+場所詞“上海”>ととらえて,「上海に」と
    いう意味の介詞連語とする説もある。もしも介詞連語なら,修飾成分の副詞句だから,この文はSV文
    になる。しかし,“在”もそうであるが,中国語の介詞は動詞転用組が多い。そういう語の場合が述語動
    詞のあとに来た場合は介詞とはせずに,動賓連語と見ることにする。つまり,<“住”+介詞“在”+場
    所詞“上海”>ではなく,<本動詞“住”+補語動詞“在”+場所詞“上海”>とする。
  ※ 動詞転用組の介詞連語構造が述語のあとに来たときは,その介詞は動詞とするとすれば,ほとんど
    の介詞連語は述語の前の状語としてのはたらきのみとなり,すっきりする。しかし,下記例のように動
    詞性のない介詞もある。この“于”“自”の場合は,介詞連語が述語の後に来て,後ろから述語を説明す
    る補語句と説明せざるを得ない。
       我在一九九○年生于澳门。Wǒ zài yī jiǔ jiǔ líng nián shēngyú Àomén.
       I was born in Makao on 1990. (私はマカオで1990年に生まれた)
       我们当中有些人来自北京。 Wǒmen dāngzhōng yǒuxie rén láizì Běijīng.
     Some of us are from Beijing. (私たちの中には北京から来た人もいます)
  ※ “生于澳门”の“于”は古語として用いられていた語であるが,その使用例は今も以外に多い。“生
    于”以外に<動詞+“于”>としては“出于”“处于”“对于”“关于”“属于”“在于”“至于”など,<形容詞
    +“于”>としては“大于”“难于”“善于”などがある。

 さて,上記2・3の中国語の賓語に当たる部分の日本語訳は「学校に」「上海に」と,いずれも格助詞「に」が付着していました。この格助詞「に」を正確に説明することはむずかしく,99.9%の日本語ネイティブもきっとお手上げです。1も2も場所に関係のある「に」ということはわかりますが。


 ところで,以下の文例の「に」はどうなのでしょうか。
  4 She wrote me a long letter.  (彼女は私に長い手紙をくれました)
  5 They elected him chairman.  (彼らは彼を議長に選びました)
 
 4は第4文型の授与型SVOO文です。「~に」,「~を」の部分はいずれも英語は目的語です。“me”は間接目的語で,“a long letter”は直接目的語です。5はどうかというと,これは第5文型のSVOC文です。“him”は目的語ですが,“chairman”は目的語ではなく,目的語の補語です。なぜなら,“him =chairman”,つまりO=Cの等式が成り立つからです。

 日本語はというと,4も5もSV文です。4は「誰かが 誰かに 何かを Vします」という文例で,5は「誰かが 誰かを 何かに Vします」という文例です。テニヲハ貼付語である日本語は「誰かに 何かを」と「誰かを 何かに」は語順が入れ替わっただけで,いずれも文法成分は連用修飾語です。
  ※ 日本語文は4・5の「に」は動作・作用が行われるその対象,4の「を」も動作の対象。しかし,5の「を」
    は動作・作用が行われたその結果を表すという違いはある。


 では,中国語はどうなのでしょうか。
  4’ 她给我一封很长的信。  Tā gěi wǒ yì fēng hěn cháng de xìn.
  5’ 他们推选他会议主持人。 Tāmen tuīxuǎn tā huìyì zhǔchírén.

 4’・ 5’の述語動詞“给”“推选”のあとにつづく2つの名詞はいずれも賓語(目的語)です。動詞とそのターゲット語との関係を→印で示すと,4’は“给―→我”“给―→一封很长的信”ですが,5’は“推选―→他”はいいのですが,“他”と“会议主持人”の関係は→印ではなく,“他=会议主持人”です。“会议主持人”は同じ賓語“他”の補足説明です。でも,中国語は両文とも同じ二重賓語文SVOO文です。
  ※ 5’の述語“推选”は「推して選ぶ」という動補連語。

 要するに中国語の賓語は英語の目的語よりも幅が広いということです。動詞の動作の対象となる語を指すとともに,主語や賓語の補足説明をする語句をも賓語には含まれるということです。



 以上の説明で,中国語の賓語というのは<主語+述語>のあとにつづく名詞または名詞性語句を指すということがお分かりになったと思います。ならば,述語のあとの名詞は一律に賓語と見ていいのかというと,そう断言するのにためらう問題が一つあります。それは英語でも問題になる“there is”構文・中国語版です。
  6 桌子上有一本书。Zhuōzi shàng yǒu yì běn shū.
    There is a book on the table.(テーブルの上に本がある)
      ※ この文型は <場所詞・時間詞+動詞+(不特定の)人/物>となる。この文型の文を中国語では
        存在文・出現文・消失文に分け,この3文をまとめて存現文という。

 この“there is”構文,英文法の説明も歯切れが悪く,文頭の“there”は副詞で「形式上の主語」, be動詞の後ろの名詞が「実質的な主語」である,あるいは“there”を代名詞としたら主語でよく,そうすると第2文型SVC文になるなどと説明されています。前者の説明が一般的なので,それに従うことにしますが,英語の述語動詞はbe動詞ですから,文型はやっぱりSVC文なのでしょう。

 6の中国語文の動詞は“有”です。“有”には所有と存在の意味があります。所有の“有”はそのあとにつづく名詞は賓語として問題ありません。しかし,この文例のように存在の“有”の場合は,日本語文でもわかるように,後ろの名詞“一本书”は「本が」と主語に訳されています。この存在文(存現文の一種)構造は<場所詞/時間詞+述語+(不特定の)人/物(名詞)>で,文頭の場所詞/時間詞が「形式上の主語」で,後ろの名詞が「実質的な主語」になります。英語の“there is”構文は第2文型SVC文でしたが,中国語の場合は英語のCもOに含まれるので,この文型は第3文型SVO文で,“一本书”は「実質的な主語」ではありますが,形式上は賓語になります。

  7 上午下了一阵大雨。 Shàngwǔ xià le yí zhèn dà yǔ.
    It rained heavily in the morning.(午前中大雨が降った)         
  8 多一个人就多一分力量。Duō yí gè rén jiù duō yí fèn lìliang.
  If we get one more person, we will become stronger.(数は力だ)
   ※ この文種は人・物・事の存在・出現・消失にかかわる。自然現象も存在・出現・消失にかかわる
        ので,この文種には7のような自然現象にかかわる表現が多い。8の“多”は形容詞でなく,動詞。

 この文種は最初にある空間(舞台)が用意されています。そこにこれまでは気づかなかった存在にはじめて気づく,6はそういう文例です。7は話者が目にしている空間に“下雨”という自然現象が出現したという文例です。8は抽象的な内容で,用意されている空間はなにか,省略されていますが,ある集団と想定し,そうした集団もまた多くのものを許容できるのですから,空間だと考えられます。消失文例は省略していますが,おなじことです。


 以上は英語5文型を基準に中国語の賓語を考えてきました。英語の補語文型である第2と第5文型も中国語では賓語をもつ文型になりましたが,それ以外にもあと5つほど賓語を持つ文型が中国語にはあるようです。以下に賓語をとる他の文型例を挙げておきます。
  9 我帮你拿行李吧。Lǎè.
    Can I take your luggage?. (お荷物お持ちしましょう)
 10 我想最好还是拒绝。Lǎ.
    I think it best to refuse. (やっぱり拒否するしかないと思う)
 11 不要躺在过去的成绩上睡大觉。Bú yào tangzài guòqù de chéngjì shang shuì dà jiào.
    Don’t rest content with past achievements.(過去の成績にいい気になって怠けてはダメです)
 12 请你把他叫来。Lǎè.
    Please call him over. (お金は銀行に入れよう)
      ※ 9の“你”は前の動詞“帮”の賓語で,後の動詞“拿”の主語。<S+V+O/S+V>形式のい
        わゆる兼語文である。
      ※ 10は心中文。心理活動動詞である“想”のあとの文“最好还是拒绝”は主語の心中におけ
        る“つぶやき”。この“つぶやき”全体が“想”の賓語である。
      ※ <S+V+O+V+O>形式のいわゆる連動文。英語では一方が不定詞構文になることが多い。
      ※ 12は“你把他叫来”という<S+V+O/S+V+O>文型の文頭に“请”という「お願いします」
         (英語の“please”)という動詞が加わった動詞が3つも連なる3重連動文。全体の主語は省略
         され ているが“我”。“你”はもともと主語であったが、“请”がきたので,“请”の賓語と以下
         の文“把 他叫来”の主語を兼ねる。つまり,こういうO/Sをもつ文型を兼語文という。
      ※ ところで,“你”を主語とした“你把他叫来”という文,中国語の基本構造だと“你叫他来”がふつ
        う。この文の賓語である“他”を特に指定してそれにある動作を加えることをはっきり表現するた
        めに介詞の“把”で強制的に動詞“叫”の前に移動させた文型。この構文を処置文または“把”構
        文という。“把他”は意味的には賓語であるが,文形式上は状語えある。
      ※ 中国語の基本構造順の“你叫他来”をさらに考えてみると、この文型は<“叫”+“他”+“来”>
        で,直訳すると「彼を呼んで,その結果彼が来るようにする」という使役文でもある。中国語の使
        役文はやはり兼語文の一種で,この文の“他”は“O/S”マークになる。
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by damao36 | 2012-06-17 16:05 | 中国語文法 | Comments(0)

212 主語――日・英・中語の比較

 中国語の基本構造を6つの文成分だけで示すと以下の順序で並びます。主語を含む主部は日・英語と同じで,文の先頭です。
    (主    部)        (述                部)
   〈定語〉+ 主語  + 〈状語〉+ 述語+補語 + 〈定語〉+ 賓語
        ※ 文の骨格は主語と述語+補語,賓語の4成分。補語は述部の一部とみなすこともでき,そう
          すると3成分になる。
        ※ 定語と状語は修飾成分。

 この主語を構成する品詞は,1語としては名詞か代詞で,まれに動詞や形容詞,数量詞も主語になることがあります。2語以上の連語の主部は<定語+(“的”)+主語>の形式の語句です。このつなぎの構造助詞“的”のないものもよくありますが,この“的”が定語を見つけるマーカーです。また,主部がSVOなど主述連語の場合もあります。(主部の成分構成は賓語にも該当します。)
1 是公司职员。Tā shì gōngsī zhīuán.
  He is an office worker.(彼は会社員です。)
2 写完报告的人可以回去了。Xiěwán bàogào de rén kěyǐ huíqù le。
  Please who have finished writing their report may go home.(レポートを書き終えた人は帰ってもよろしい。)
3 考试不及格的人必须再考一次。Kǎoshì bù jígé de rén bìxū zài kǎo yícì.
  Anyone who fails the exam must take it again.(試験に不合格の人はもう一度受けなさい。)
4 因事故而停驶的电车终于开动了。Yīn shìgù ér tīngshǐ de diànchē zhōngyú kāidòng le.
  The train that stopped due to an accident finally began to move.(事故で停車していた電車
  がやっと動き出した。)
5 身体好很重要。Shēntǐ hǎo hěn zhòngyào.
  It is important to be in good health.(体が丈夫なことは大事なことだ。)
6 抽烟对身体不好。Chōyān duì shēntǐ bù hǎo.
  Smoking cigarettes is not good for your health. (たばこは体に悪い。)
    ※ 1は1語の主語。1語で主語になれる語は名詞と代詞が両“横綱”。会話では人称代詞が多い。
    ※ 2~4は<定語+的”+主語>。“的”が定語のマーカー。
    ※ 5は<S(名詞)+V(形容詞)>で,形容詞述語文の主部。6は<V(動詞)+O(名詞)>で動賓連
      語が主部。このように主部にはいろんな語句が来る。

 ところで,これまで日・英・中語ともに主語は文頭と述べましたが,これは文の基本構造のことで,実際に出てくる文は主語が文頭にない,あるいは主語そのものがない文でいっぱいです。そうした文をⅠ 主語の省略・Ⅱ 主語の後退 とにわけて説明しておきます。


Ⅰ 主語の省略
 英語も命令文では主語は話相手に決まっていますから,省略されます。会話の中ではしばしば主語のない文も使われます。でも,フォーマルな平叙文は必ず主語が必要です。ダミー主語と呼ばれる“it”というのもあります。
    ※ 英語の主語は単数・複数とか,一人称・ニ人称・三人称とか(いわゆる「3単現のS」)で,述語の動
      詞に影響を与える権限があ。しかし,日・中語にはそういう力はない。
    ※ 主語を英語では“subject”という。この「sub~」は地下鉄のことを「sub-way」というように,語源
      的には「下」「従」の意味。それが今は“subject”が決まらなくては動詞も決まらない絶対的権力を
      もつている。

 しかし,中国語は日本語と同じで,文脈から主語が推測される場合には主語が省かれることがしばしばです。主語が特定しにくい文もあります。英語とは違って主語がなくても文は成立します。特に会話では主語のない文,多くは人称代詞の省略ですが,そうした文があまた出現します。その例をあいさつ言葉から挙げておきます。
7 好久没见了。Hǒjiǔ bú jiàn le.
  We haven’t seen each other for a long time. / It’s been a long time since I saw you last.
  (お久しぶりです。)
8 初次见面。请多关照。Chūcì jiànmiàn. Qǐng duō guanzhào.
  How do you do?  I'm pleased to meet you. (はじめまして。どうぞよろしく。)
9 请多多指教。Qǐng duōduo zhǐjiào.
  Kingly give us your advice. (ご指導よろしくお願いします。)      yě hěn gāoxìng.
10 认识你我很高兴。――认识你我也很高兴。 Rènshi nǐ wǒ hěn gāoxìng.-- Rènshi nǐ wǒ
   Nice to meet you!―― Nice to meet you, too! (お知り合いになれてよかったです。―私もです。)
    ※ 8は日本人が頻繁に用いる「はじめまして。どうぞよろしく」の訳。日本人向けのあいさつ言葉。中国
      人同士,あるいは他の外国人には用いない。(§体感随筆30「『よろしく』が口癖の日本人」参照)

 文脈から主語があきらかな場合は,中国語は遠慮なく主語を省略することになります。主語となる品詞の“横綱”である人称代名詞,特に“你•我”はよく省略されます。ただし,日本語とは省略するときの意識に違いがあります。日本語の場合は話相手によってどのような人称代名詞を用いたらいいかを忖度する必要があります。なんとなく気軽に発音できない感があります。しかし,中国語は単数の人称代名詞は“普通话”(共通語)では“你・我・他”と敬称の“您”だけです。しかもすべて単音節です。日本語のように人称使用にためらいをで感じることもありません。省いても通じる会話で,わざわざ人称代名詞をつけて話すと,むしろ相手に対する丁寧な,ときには慇懃なもの言いにさえなります。
    ※ 実際の会話で,「あなたは」とか「君は」とかを使うときに私はなんとなく躊躇する。英語の“she”や
      中国語の“她”を「彼女」と言い換えることに,今もいささか違和感がある。
    ※ 昭和10年代の文法学者三上章氏は日本語無主語説を唱えた。その考えに共鳴して,カナダで日
      本語教師をしている金谷武洋氏は『日本語に主語はいらない』『英語に主語はなかった』(講談社選
      書)などの著書を表している。
    ※ 日本語の主語は不可欠の要素ではない。語順も融通無碍である。敬語表現を除いて動詞に人称
      変化を起こさせる力もない。「に」「の」「で」などの格助詞のつく語が主語のこともあり,「主語は主格
      で表れる」とはとても言えない。日本語には主語というのはなく,あるのは格助詞「を」「に」「と」「で」
      などと同レベルの主格補語「が」(ガ格)にすぎない。金谷氏はそう主張している。
    ※ 日本語を外国語として教えるための日本語文法書『初級を教える人のための日本語文法ハンドブ
      ック』(フリーエーネットワーク 2000年)を見ると,これまでの学校文法とは違って,主語という用語
      は見当らない。金谷氏の説とは関係なさそうだが,この書は主格という語を用いている。


Ⅱ 主語の後退
 テニヲハ貼付語である日本語は「~が/は」という助詞が付いていると,その文節がどの位置にあっても主語を表します。しかし,配置の言葉であり,テニヲハのような主格を示すマーカーを持たない英・中語は,主語はあくまでも述語の前に位置します。ときに主語成分が文頭にない場合がありますが,そのとき先頭に来ているのは修飾成分の状語(M)か賓語(O)です。基本構造の<S+V>という結びつきは不変です。

 なぜ状語や賓語が先頭に移動してきたのか,その理由は一つはその部分の強調のためで,もう一つは発音上のバランスのためです。以下にA 状語が文頭に来た例とB賓語が文頭に来た例とに分けて,その例を挙げて説明します。

A 状語が文頭に来た例
11 明天去。Míngtiān wǒ qù.
   I want to go tomorrow. (明日は行きます。)
12 已经决定中村下月要搬去上海了。Yǐjīng juédìng Zhōngcūn xiàyuè yào bānqù Shànghǎi le.
   It’s turned out that Mr.Nakamura will move to Shanghai next month.
   (中村さんは来月上海に引っ越すことがすでに決まっている。)                    zǎofàn.
13 在中国许多人在上班的路上吃早饭。Zài Zhōngguó xǔduō rén zài shàngban de lùshang chī
   Meny people eat breakfast on thire way to work.
   (中国では多くの人が出勤途中で朝ご飯を食べています。)
    ※ 11は“我明天去”の状語“明天”を強調して文頭に持ってきた例。この文はさらに主語“我”を省い
      て“明天去”ということも可。この場合は時間詞の“明天”が主語になる。
    ※ 12は“决定”と“搬去”が動詞のいわゆる連動文。主語“中村”が定位置だと述語動詞ばかりが重な
      るので,バランス上主語を中間に持ってきたと考えられる。
    ※ 13は“在中国”“在上班的路上”が状語。この文も主語を定位置にすると,こんどは状語が長くなる
      ので,理解しやすいように主語“许多人”を中間に持ってきたと考えられる。

B 賓語が文頭に来た例
14 这东西还要呢。Zhè dōngxi tā hái yào ne..
   She still wants to keep this thing.(これは彼女は要るそうですよ。)
15 明天的会不要迟到。Míngtiān de huì nǐ bú yào chídào.
   Try not to be late for tomorrow’s meeting.(明日の会には遅刻しないでください。)
16 冷和热都喜欢。Lěng hé rè wǒ dōu xǐhuán.
   I like it both cold and hot. (冷たいのも熱いのも僕は好きだ。)
17 那件上衣,觉得你穿起来很合适。Nà jian shàngyī, wǒ juéde nǐ chuāqǐlái hěn héshì.
   I think that jachet would go well on you.(あの上着はよく似合っています。)
    ※ 14・15は“她还要这东西呢”“你不要迟到明天的会”の賓語“这东西”“明天的会”が文頭に来て
      それが強調された文。なお,主語の“她”“你”を省いて“这东西还要” “明天的会不要迟到”とい      うことも可。その場合は“这东西”“明天的会”を主語にとする。
    ※ 16もSVOだと“我都喜欢冷和热”で,“冷和热”が文頭に来た例。“热”と“冷”は形容詞の名詞
      用法。
    ※ 17はいわゆる「心中文」。この文は“我/觉得”(私は/感じている)が文の外枠。内枠の何を感じて
      いるのかという中身は,“那件衣服你穿起来很合适”。これ全体が“我/觉得”の賓語になる。また
      この賓語全文をSVOに直すと,“你穿起来/那件衣服/很合适”だ。するとこの文は賓語の“那件衣
      服”は“很合适”の主語でもある兼語文だ。この例のように兼語の部分“那件衣服”が比較的長いと
      文頭に持ってくるのがふつう。これは内枠の文頭“那件衣服”をさらに外枠にまで持ってきた例。(こ
      の文の直訳は「あなたがその上着を着てみる,そうするとその上着はあなたに似合っている」である。)

 状語が文頭に来た例には12・13のように発音上のバランスからというものがありました。この場合の話者は意味上の変化を期待して表現したのではなく,あくまでも発音上の問題からの言い回しのはずです。もう一つの部分の強調とはどういうことでしょうか。
 
 例えば11の“明天我去”は基本構造だと“我明天去”です。状語の“明天”を前に出すことで,基本的な意味に違いはありませんが,話者の重点の置き方,ニュアンスに微妙な違いがあり,文脈によってはこの文を「(今日はダメだが)明日なら行く」と訳すことになります。
    ※ この例文の“明天”は時間詞。中国語は,日本語もそうであるが,時間をなによりも優先させる傾向
      がある。単にそういう意識で発せられたとも解釈できる。

 14の“这东西她还要呢”も“她还要这东西呢”と比べると,話者の意識は“这东西”にありますから,「(他の物はいらないが)これはまだ要る」とか「(どうみてもガラクタなのに)彼女はまだ要るそうだ」とかの意味が表出されてくるということです。


 ところで,このように文頭に引き出された状語や賓語は文成分としては何になるかという問題があります。

 上記11~17の文例を主語を明確にして日本語直訳で考えると,状語例の11は「明日は私は」,賓語例の14~17は「これは彼女は」「明日の会には(あなたは)」「冷たいのも熱いのも(私は)」「あの上着は,私は」となり,14・15・17は主語のマーカーとみられている「は」が二つも並んでしまいました。どうやら日本語文法でもこの「は」の説明はなかなかやっかいです。
    ※ 日本語の問題としてしばしば「は」と「が」はどう違うのかということが問題となる。井上やすしの『日
      本語教室』(新潮新書)には,この問題を取り上げ,国語学者大野晋氏の説として「大野説を一言で
      いえば,既知の旧情報には『は』を,未知の新情報を受ける場合は『が』を使うということです」
      (P174)と述べ,その傍証として「象は鼻が長い」という文も取り上げ,この「象」はみんなが知ってい
      る既知情報,「鼻が長い」は未知情報で,主語が二つあるわけではないとも述べている。井上氏の
      他の書にも「ガとㇵの戦い」という項目があり,そこには大野説への反論も紹介されている。
    ※ 日本語の「は」は判断や取立て,強調といった陳述に一定の影響を及ぼす係助詞で,「が」は主とし
      て主語を表わす格助詞。係助詞「は」は述語に係るが,ときに節や文をも越えて叙述にかかわること
      もある。であるから,金谷氏はこの「は」を「スーパー助詞」と名づけ,日本語テキストの例文冒頭の
      「は」のつく名詞節は,その後にまずは読点(、)を打たせる指導をしているという。読点を打つこと
      で,「~、それについては~」という感じがわかるから。
    ※ 金谷氏に限らず,日本語教師は「が」と「は」の違いをどう説明するかに苦慮しているのであろう。ネ
      ット「日本語教師のページ」にその違いをどう教えるかが書かれていた。例えば「私は学生です」とい
      うのは「私に関しては学生です」ということ。「私はその本を買いました」は<主題=主語+述語>の
      構造。話者は「私は」という言葉を意味的には主語と認識していても,文法的には主題として使って
      いる,そんなふうにに説明している。

 このように状語や賓語であるべき語句を本来の主語の前に持ってくるということは,話者がこれから語ろうとする文の題目(テーマ)やポイントを提示することで,これを主題と称すればいいいいという説があります。主題という語が文法用語として正式に認めれれていない点に何か不都合がありそうですが,私はいまはそれに従うことにします。
    ※ 「が」は接続助詞の用法もあるが,あとは<名詞+「が」>の場合だけで,これは主格を表す格助
      詞である。「は」も<名詞+「は」>の場合は主格を表すが,例えば「~には/へは/とは/では/から
      は/よりは」とその他の格助詞にも付き,目的格や連用格を示す。また,例えば「~までは/などは/
      だけは/ばかりは/くらいは/ほどは」と副助詞にも付き,ときに副詞にも付く。したがって,「は」は判
      断や取立て,強調といった陳述に一定の影響を及ぼす係助詞だと分類されている。要するに「は」
      は「が」が単に主格を示すのとは違って,特に何か一つのものを取り立てて提示するのが本来の用
      法であると考えられている。
    ※ 会話の中では“明天去”とか“这个还要”とか言うことはよくある。この場合の“明天”とか“这个”と
      かは主語では間違いで主題なのだと考えるとややこしくなるので,特に区別をする必要のある場合
      は除き,ふつうは主語として考える。必要があれば平叙文の主体や客体,あるいは状語のいずれ
      が強調されて先頭に立たされたのかを考えればいい。

 例文17は主題となる“那件上衣”が長いので,“逗号”が最初から付けらえています。他の文の冒頭“明天”“这东西”“明天的会”“冷和热”にも逗号”が付いているものと受け取って,中国語も「~に関しては/~については」ということだと理解するとわかりがいいでしょう。
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by damao36 | 2012-06-14 07:22 | 中国語文法 | Comments(0)