<   2011年 12月 ( 5 )   > この月の画像一覧

中国語の基本語彙は3000三千字、それがマスターできれば辞書はいらない?

 漢字というものは音韻体系のまったく違う中国から伝来したものです。ですから,その用法に違いが現れるのは自然なことです。

 日本語ネイテイブが漢字を用いる際の中国語ネイテイブとの違いの一つは、日本語ネイテイブは漢字一字一字の発音に中国語ネイテイブほど敏感ではないということにある,そんな気がしています。

 中国語の漢字語は必ず一字一音節です。その一字一音節の漢字語が中国語の基本語彙です。

 それに比べて日本語というのは一音語はきわめてまれです。「蚊」とか「木」とか「毛」とか少数で,大多数の語は多音節語です。無意味な音の集合です。「文法」という語も中国語ネイテイブは基本的には「wen(文)・fa(法)」と,一字・一音・有義で理解します。日本語ネイテイブの「bun pou(文法)」はあくまでもひとかたまりで「文法」なのです。最近やたらとカタカナ・外来語が多用されるのも,日本語ネイテイブにとっての単語というのは所詮は無意味な音の塊りだと思っているから,気にはならないのです。


 ところで,大正年間に中国語を勉強し始めた中国文学者の吉川幸次郎氏は,その当時は中日典など皆無に近かったということもあって,「私は専門とする中国語の書物を読むについては,あまり字引を引かない男である。」と書いています(「私と辞典」)。

 なぜそれが可能なのか。それは,中国語と言うものの基本語彙は単字で,大学者の吉川氏は6000字から7000字の間ぐらいを身につけていたそうです。

 中国語の熟語というのはほとんどが<単字+単字>の二字語です。<A+B+α>の構造です。もちろん<A+B>が限りなくゼロになって,<ゼロ+α>という語もあります。例えば“thing”の意味の“东西”などです。しかし,そういう語は少数です。

 単字の組み合わせである中国語の熟語は,自分がマスターしている単字の組み合わせなら,それぞれの意味を組み合わせて,さらに前後の文脈から類推すれば,自ずと正しい解に到達できる,そんな言語だと,昭和の碩学吉川幸次郎氏は述べています。

 普通の人の普通の生活なら,日本の常用漢字数程度で十分,あるいはそれを上回る3000字くらいなら,もう上等の部類でしょう。(ただし,会話となると,話はちょっと違うでしょうか。)
[PR]
by damao36 | 2011-12-16 20:10 | Comments(0)

日中言葉の勘違い――日本語の「文法」,中国語の“语法”(語法)

 英語の“grammar”をわが国では「文法」といい,中国では“语法”(語法)といいます。

 その中国語の“语法”を初めて目にした日本語ネイテイブは,「単語の用法」と思うかもしれません。「文法」という語を目にした中国語ネイテイブは「文章の書き方」と思う可能性が高い,そんな気がします。

 「文」という語を日本語辞書で引くと,「①文章 ②文 ③学問 ④あや」と出ていました。「語」を引くと、「①単語 ②口に出して言う言葉 ③ことわざ・成句」でした。

 中国語辞書で“文”を引くと,《现代汉语词典》は“①文 ②文字 ③文章 ④文言……”とありました。“语”は“①话(言葉・言語) ②说(言う・話す) ③谚语:成语(ことわざ・成句) ④代替语言表示意思的动作或方式(言葉の代わりに用いる意思伝達手段)”でした。

 “语法”の“语”を①の意味にとると,「言葉の法則」になり,『広辞苑』の文法説明を縮約したものととれそうです。
  ※ 一言語の構成要素を形態と機能との上で支配する通則。また、それを分析・記述す
    る研究。(『広辞苑』)

 でも,日本語の「文」と「法」の組み合わせからは「文の法則」という縮約にはなっても,「言葉の法則」になるのでしょうか。中国語ネイテイブがせめて「文の法則」ととってくれればいいのですが,《现代词典》の“文”①の意味,果たして英語の“sentence”なのか怪しいのです。

 《汉英双解•中华字典》を引いてみると,①から⑧まで語釈があるのに,上記《现代》の説明に近いのは③の“文字,记录语言的符号”だけです。《汉英大辞典》を引くと,“①字 ②文字 ③文章 ④文言……”と出ておりましたが,英語の“sentence”に該当する語釈は見当たりません。

 そういえば,“sentence”を意味する中国語は“文”ではなく,“句”です。ついでに「単語」は“词”です。ですから,中国語ネイテイブが「文法」という語をみて,「文章の書き方」と思うのは無理からぬ勘違いですが,日本語ネイテイブが“语法”という語を見て,「単語の用法」と思うのは,かなりの勘違いです。


 お互いに相手を知らない日中双方の人たち,ひょっとしてこんな勘違いをしょっちゅうしているのではないでしょうか。
[PR]
by damao36 | 2011-12-13 21:55 | 中国語文法 | Comments(0)

205 完成態―完成・実現の“了”,変化・出現の“了”(1)

 物事には始まりがあり,その物事の持続・進行があり,やがてその物事の完成・実現,あるいは新しい変化や新しい事態の出現があります。この物事の持続・進行の段階を<持続態>として前回考えてみました。こ回は物事の完成・実現(しばし<完成>とのみ記す)と変化・出現の事態の段階を<完成態>と呼んで,それがどういう語句によってどのように表現されるのかを考えてみました。
 ※ 日本語の文法用語の一つに<完了>という言葉がある。その語をここでいう<完成>
   の意味で使うことも多い。<完了>という語を言語界では「動作・状態がすでに終了
   していること,また,その結果が現在まで実現している状態にあることなどを表す言
   い方」(『大辞泉』)として用いている。しかし,一般用法は「物事が完全に終わる
   こと。また,完全に終えること」(『大辞泉』)であり,文法用語としてもそのよう
   な意味だと誤解を与えるおそれがある。また,中国語の<完了>は熟語化してはおら
   ず,「終わった/ダメになってしまった」の意味で,漢字の用法からするとこの理解が
   正しい。日本語文法でなじみがあるということでわが国中国語界でも<完了>が多用
   されているのであろうが,<完成>の方が「終結・実現」(“完了””成了”)の両
   意をよりよく統括していると考え,この語を用いる。

 その<完成態>を表す典型的な語は“le”で,漢字では”了”です。
 ※ この“了”という漢字は「物がもつれてぶらさがるさま,また,ぶらさがった物をか
   らげるさまを描いた象形文字」(藤堂明保『学研漢和大字典』)。「長く続いたもの
   をからげて,けりをつける」意に用いる。したがって,“了”の基本義は「けりをつ
   ける/けりがつく」ということである。

 ところで,この<完成態>を表す語“了”の説明,日本語ネイティブ向け中国語辞書などでは詳しく書かれています。ということは,私たちにとってはこの語は意外に手ごわいということでしょう。

 中国語ネイティブ向け辞書を見ると,その説明はわりと簡単なので,まずはそちらから見てみることにします。中国では小学生も常用する《新华字典》の説明と例文を抜き出します。(引用するのはシンガポール分館版《英汉双解 新华字典》。例文訳と“了”の下線,※は引用者。)
[了]le
1 放在动词或形容词后, 表示动作或变化已经完成
  买了一本书。Mǎile yī běn shū.
  have bought a book. (本を一冊買った。)
  水位低了两尺。Shuǐwèi dīle liáng chǐ.
  The waterlevel is two “chǐ” lower. (水位が二尺下がった。/下がっている。)
 ※ 1の“了”は「動詞あるいは形容詞の後に置かれて、動作や変化がすでに完成したこ
   とを表す」例文。
 ※ 述語の“买”は一回の動作で終了する瞬間・変動の動態動詞,“低”は状態を表す形
   容詞。
 ※ “买一本书”なら「本を1冊買う」で,テンスを超えた表現。“买了一本书”なら
「本を1冊買った」という日本語訳は単純な過去ともとれるが,英訳は現在完了形。
※ “低两尺”は「二尺低い」ということ。“低了两尺”は「二尺低くなっている」とい
うこと。ある状態からある状態に変化/実現した現状を述べる。数量詞“两尺”は
   補語。ただし,この“低”を「下がる/下げる」と解釈すると,「水位が二尺下が
   った」と過去/終結の意になる。この場合の“低”は変動の結果が残存する静態動詞。
   数量詞“两尺”は賓語になる。ここは形容詞の例で挙げられている。

2. 用在句子末尾或句中停顿的地方, 表示变化或出现新的情况
 1  指明已经出现或将要出现某种情况
   下雨了。Xià yǔ le.
   It’s raining. (雨だ。/雨が降ってきた。)
   明天就是星期日了。Míngtiān jiùshì xīngqī rì le.
   It will be Sunday tomorrow.(明日は日曜日だ。)
 ※ 2の1~4は語気助詞の。1は「ある状況が明らかに出現している,あるいは出現しよ
   うとしている」例。
 ※ 1の動詞“下”は動態動詞。“下雨”は「(雨は降ってなかったのに)雨が降ってきた。
   (そして今もつづいている)」という目前の状態の変化を述べる。英訳は現在進行形。
   次の“是”は関係動詞。この語は時とは無冠家だが,状語に“明天”とあるから,「明
   日は確実に日曜日になる」という未来の事態変化の予測。

 2  认识、想法、主张、行动等有变化
   我现在明白他的意思了。Wǒ xiànzài míngbai tā de yìsī le.
   I now understand( or know ) what he meant. (今は彼の気持ちがわかる。)
   他今年暑假不回家了。Tā jīnnián shǔjià bù huíjiā le.
   He is not going home this summer vacation. (彼は今年の夏休みには帰省しない。)
   我本来没打算去, 后来还是去了。 Wǒ běnlái méi dǎsuàn qù, hòulái háishì qù le.
   I didn’t intend to go there at first, but later I went there anyway. (私はもともと行く
   つもりではなかったが,後からやはり行くことにした。)
 ※ 2は「認識や思考,主張,行動の変化」を表す。
 ※ 最初の例の“明白”は「はっきりしている」の意なら形容詞だが,「わかる/理解する」
   の意であるから,心的態度を表す静態動詞。次の動詞“回”は変動の動態動詞。
   “回”の前に意志を示す否定の副詞“不”があるので,この文は主体者の意志決定後
   の現在の心境を表す。最後の“打算去”も話者の「行くつもり」という心的態度を
   表す。前に否定の副詞“没”があるので,ここは過去の心境の叙述。

 3  随假设的条件转移
   你早来一天就见着他了。Nǐ zǎolái yī tiān jiù jiànzhe tā le•
   You could have seen him if you had come here a day earlier. (一日早く来たら,彼
   に会うことができます。)
 ※ 3は「仮定の条件による(状況の)転移」を表す例。
 ※ 述部“见着”は「会うことがしばらくつづく」という動作の持続。“~就~了”の構
   文が「ある条件や状況下では自ずと~という状態が出現したであろう」という未来予
   測を表す。英語の“could” は過去形ではあるが,現在完了形とともに用いて,現在時
の推量を表す。
 
 4 催促或劝止
   走了, 走了, 不能再等了。Zǒu,zǒu,bù néng zài děng le.
   Let’s go. We can’t wait any longer. (行こう,行こう。もう待っていられない。)
   算了, 不要老说这些事了! Suàn le,bú yào lǎo shuō zhèxie shì!
   That’s enough! Let it go at that.( or Forget it!)(もういい。こんな事ばかり言うな。)
 ※ 4は「催促あるいは制止」の例。
 ※ “走”は継続動作の動態動詞。“了”は終結。繰り返すことで,催促の意になる。
   “等”は結果残留の静態動詞。“不能~等”で「待つという状態を出現することは
    不能」の意になる。
 ※ 次の“算了”は「やめにする」という慣用語。心中活動動詞。後半は“不要~了”で,
   「~するのはやめなさい」の意。


 上記の例文から中国語の“了”は<完成・実現>(動態助詞)と<変化・出現>(語気助詞)の二つの意味をもっていることがわかります。日本語の<過去><完了>の「た」とは単純なイコールではありません。この“了”は文脈によっては,過去・現在・未来のいずれにも用いられます。
[PR]
by damao36 | 2011-12-10 15:34 | 中国語文法 | Comments(0)

203 持続態―持続の“着”,進行の“在” ,継続の“呢”(後日修正)

 中国語の時にかかわる動態(アスペクト)はA 始動態・B持続態・C 完成態・D 経験態・E 将然態の5つでした。Bの持続態は「~している/~しつつある」という意味を表わす動作態で,それを表す語は動態助詞の“着”と副詞の“正”“在”,その合体の“正在”です。動態助詞の“着”は<持続>を,副詞の“在”(“正”“正在”の代表を“在”とする)は<進行>の意味になります。さらに,この持続態には保持する意味は希薄で<継続>だけの意味をもつ語気助詞の“呢”,や方向補語の“~下去”(~しつづける)なども加えることにします。

 なお,<持続>を表す“着”と<進行>を表す“在”はいずれも動詞の中の動作動詞に付着して持続という動作態を表します。しかし,中国語動詞の中にはもともと状態の持続を表す語が多数あります。例えば“知道”zhīdàoです。辞書には必ず「知る/知っている」と訳されています。日本語の「知る」は1語動詞ですが,「知っている」は<動詞+補助用言>で,複合動詞です。このような状態持続の意味をもともともつ動詞のことを非動作動詞の中の状態動詞などといっています。詳しくは動詞の項で説明するとして,ここではこういう持続の意味をもつ語もあるという指摘だけにしておきます。

 要するに,中国語の持続態には<持続><進行><継続>という3つの意味をもつ語群があるということです。この3つの区分は日本語だといずれも「~している」ですますことができ,いい加減に理解することになります。そうしたことにならないよう,3つのの区分を理解することにしましょう。


それではまず動態助詞“着”の辞書説明とその例文を挙げ,その用法を補足します(《汉英大辞典》《新华字典》《现在汉语词典》を参考)。
 [着] zhe(動態助詞) 1.表示动作的持续
               2.表示状态的持续
               3.用在动词或表示程度的形容词后面, 加强命令或嘱咐的语气
               4.加在某些动词后面, 使变成介词

※ 繁体字では“著”とも書く。もともと付着・到着などの「つく」という意味。また,古
  くは“執着”“愛着”など心理的な動作にもよく用いられた。唐五代になるとほぼ現代
  の用法になったという。(太田辰夫『中国語歴史文法』)
※ 《汉英大辞典》と《现代汉语词典》の説明は“表示”があるかないかの違いだけで同じ。
  《新华字典》は1を“表示动作正在进行”(動作が正に進行していることを表す),
  2を“表示存在的方式”(存在のあり方を示す)としている。この書では1を<動作の持
  続>,2を<状態の持続>とし,時にさらに省略して動態助詞“着”の意味は<持続>
  とする。
※ 1の<動作の持続>と2の<状態の持続>の違いは,“着”の付着する動詞の性質の違い
  による。つまり,1は<動態動詞+“着”>,2は<静態動詞+“着”>である。この動
  態動詞と静態動詞は動作動詞の下位の分類である。“着”は動作動詞に付着するが,動
  作動詞に対する非動作動詞には付着しない。

1 她很开心地说着。Tā hěn kāixīn de shuōzhe.
  She seems to be enjoying talking. (彼女は楽しそうに話しています。)
  他打着电话呢。Tā dǎzhe diànhuà ne.
  He is making a phone call.(彼は電話中です。)
  我拉着肚子(呢)。Wǒ lāzhe dùzi.
  I’ve got diarrhoea. (私は下痢をしています。)
  一出去, 发现外面刮着大风。Yì chūqu, fāxiàn wàimiàn guāzhe dàfēng.
  When I went outside there was a strong wind blowing.(外に出ると強い風が吹いていました。)
  开着会呢。Kāizhe huì ne.
  (They are) having a meeting.(会議中です。)
※ この文例は<動作の持続>の例。動詞“打”“拉”“刮は「ある動きを一定の時間継続
  することのできる」動詞で,これは動作動詞の下位分類の動態動詞である。ただし,動
  態動詞には静態動詞の用法を持つ語も多い。
※ この<動作の持続>の文は文末に語気助詞“呢”を伴うことも多い。“賓語や状語があ
  るときやはつけない方がよい場合が多い。“呢”がつくと,語気がやわらぐなどニュア
  ンスは多少異なる。
※ “着”は<ある出来事の背景を描写することこそ“着”の本質>(荒川清秀『一歩進ん
  だ中国語』)といわれている。したがって,この1も<動作の持続>ではあるが,そう
  いう動きを背景にして,そこから醸し出されるさらにもう一つ奥の意味を伝えることが
  できる。つまり,この文型の表の情報は「ある動きがつづいていますよ」と言うことで
  あるが,単にそれだけではないということ。「そういう動きがあるから,~なのです。」
  と,もう一つ奥の意味を含むということ。例えば「たのしそうに話している」「電話中
  ですという表現には「ですから今は呼び出せません」「心配していたが安心した」
  など,前後の文脈による含意があるということ。このことは状態の持続にも当てはまる。

2 a 桌子上放着一台收音机。Zhuōzi shang fàngzhe yì tái shōuyīnjī.
  There is a radio on the table.(テーブルの上にラジオが1台置いてあります。)
  教室里贴着世界地图。Jiàoshì lǐ tiēzhe shìjiè tìtú.
  There are a map of the world on the classroom wall.(教室には世界地図が張ってあります。)
  在墙上写着“停车!”。Zài qiáng shàng xiězhe “tíng chē”.
  It says “Stop” on the wall.(壁には「車ストップ!」と書かれています。)
  山上覆盖着厚厚的积雪。Shān shàng fùgàizhe hòuhòu de xuě.
  The mountains are covered with thick snow.(山頂は厚い雪に覆われています。)
※ 2にはa~dと4つの文型がある。この文型の動詞はすべて1とは違う静態動詞。静態動詞
  とは「動作は瞬間的に完了し,その後ある状態(姿勢や結果)が残存する」動詞のことである。
※ 例えば2aの動詞の中で“放”“贴”“写”“盖”の叙述をイメージしてみると,1とは
  違っていずれも場面に動きは感じられない。「最初にある動作があったとしても,その
  後はその動作の姿勢のまま,あるいは変動した後の結果が残存している」,そういうイ
  メージを表す動詞を特に静態動詞と言う。
※ この2a例文文型はいずれも<場所詞+V着+O>形式。主語が場所詞で,賓語が不特定
  の物。こうした文型を存現文と呼ぶ。(存現文とは「ある空間にある存在がパッと現れ
  たことを認識する文」。) 
     存現文で“着”付着文の形式=<場所詞+V着+O(不特定の物>  
※ この文型の賓語は必ず不特定の物でなければならない。例えば最初の例の賓語“一台收
  音机”を“我的收音机”と特定の物にして,“桌子上放着我的收音机”と言うと,とて
  も不自然になる。「私のラジオはテーブルの上にある」とどうしても言いたいときは,
  <特定の物+V在+場所詞>という形式にし,“我的收音机放在桌子上”と言わなくて
  はいけない。この“在”は<場所補語>(~に~ている)の動詞で,この“在”を用い
  た文型を,存現文とは区別して,存在文と呼ぶ。
※ なぜ上例が成り立たないのかと言うと,中国語というものは既知情報(特定の事物もそ
  の一つ)が先で,未知情報は後という原則があるからである。既知情報が一つあると,
  その情報は優先的に主語の位置につく。話題に特定の物が重なった場合は,主語の位置
  を獲得する優先順位があり,人・物,そして場所の順である。
※ 場所詞が主語の位置に来るときは原則として介詞は特に必要ではない。しかし,3番目
  の例には“在墙上”と介詞“在”を用いている。それは話者が場所を特に意識したから
  などの理由であろう。

b 窗户开着。Chuānghu kāizhe.
  The window is open.(窓が開いている。)
  门锁着呢。Mén suǒzhe ne.
  The door’s locked, isn’t it?(カギがかかってますね。)
  她穿着迷你裙(呢)。Tā chuānzhe mínǐqún (ne)。
  She is wearing a miniskkirt. / She has a miniskirt on.( 彼女はミニスカートをはいているよ。)
  我一直惦记着这件事。Wǒ yìzhí diànjìzhe zhè jiàn shì.
  I’ve been thinking about that all the time.(私はずっとこのことが気にかかっています。)
  我将在8点左右等着你。Wǒ jiāng zài bā diǎn zuǒyòu děngzhe nǐ.
  I shall await you at 8 o’clok or thereabouts.(8時前後にお待ちしています。)
  我没带着隐形眼镜。Wǒ méi dàizhe yǐngxìng yǎnjìng。
  I didn’t wear contact lenses. (私はコンタクトレンズをつけていません。)
※ 最初の“窗户”,2番目の “门”は場所詞。しかし,場所自体の状態叙述で,その空
  間での出来事ではない。後の文は主語が人。「Sは/が~している」という状態叙述。
  存現文ではない。
    存現文以外の“着”付着文の形式=<S+V着>または<S+V着+O>
※ 最後の例は状態持続文の否定形。この文の肯定形は状態持続の“我带着隐形眼镜”であ
  るが,これに“不”を用いて“我不带隐形眼镜”(I have not to wear contact lenses. )
  ということもできる(この場合は“着”は不要)。なぜなら,“不”で否定すると,
  「私はコンタクトレンズをつけません」という意志態になり,持続態とは言えなくなる
  から。したがって,持続態の否定はあくまでも“没”。
※ “她穿着迷你裙呢”の例文をイメージしてみると,当然ミニスカートをはいた若い女性が
  想像できる(含意は「Oh, sexy!」か)。これは<状態の持続>。この文を“她在穿迷
  你裙呢”とか,“她在穿着迷你裙呢”とかすると,どんなイメージが浮かぶか。「彼女
  がミニスカートをはきつつある」”(含意は”ゴックン!?”),まさに進行形の画像に
  なる。だから,“在”は<動作の進行>を表す語である。この<動作の進行>を英語で
  はおそらく“He is jast putting on a miniskirt.”であろう。日本語と中国語は動詞は換え
  ずに,日本語は付属語で,中国語は虚詞で対応するが,英語は動詞で対応している。

c 你挨着我坐吧。Nǐ āizhe wǒ zuò ba.
  Please sit next to me. (私の隣りにお座りなさい。)
  我抱着孩子去医院。Wǒ bāozhe háizi qù yīyuàn.
  I hold my baby in my arms going to hospital.(子供を抱いて病院に行く。)
  我打算带着孩子去旅游。Wǒ dǎsuàn dàizhe háizi qù lǚyóu.
I want to take my children with me on the trip.(子供を連れて旅行に行くつもりです。)
  来, 你跟着我再念一遍。Lái, nǐ gēnzhe wǒ zài niàn yí biàn.
  Come on. Read it once over after me. (それでは,私の後を付けてもう一度読みましょう。)
  这个问题你看着处理吧。Zhè ge wèntǐ nǐ kànzhe chùlǐ ba..
  Handle this problem as you see fit.(この問題はあんたが見て適当に処理しなさい。)
  不能穿着鞋进日本房间。Bù néng chuānzhe xiě jìn Rìběn fāngjiān.
  You don’t go into the room with your shoes on.(土足のままでこの部屋に入ってはいけません。)
※ この例は<V着OVO>形式の連動文。最初の動詞が後の動詞の付帯条件を示す。「あ
  る動作を持続しながら,別のある動作をする」と,二つの動詞の同時進行を表す。
    付帯条件付き連動文の形式=<S+V着+O+V+O>
※ 最後の否定文は“不”になっている。“穿着鞋”の部分は状態継続に違いないが,文全
  体としては持続態と言うよりも可能態である。

d 说着容易, 做着难。Shuōzhe róngyì, zuòzhenán.
  It’s easier said than done.(言うは易く, 行うは難し。“说起来容易, 做起来难”とも。)
※ この動詞“说”“做”は静態動詞ではないが,その後に状態の程度を表す形容詞
  “容易”“难”を補語として伴っているので,全体としては状態の持続を表す。「ある
  動作を持続するのは~である」の意。
    補語をとる“着”付着文の形式=<S+V着+C(程度・形容詞)
※ 要するに,“着”の付く文型は大きく1と2に分かれ,1が動作の持続,2が状態の持続
  になる。さらに2の<状態持続>の“着”には少なくともa存現文の“着”付着文・b 状
  態叙述の“着”付着文・c付帯条件連動文・d補語を持つ“着”付着文の4つの形式がある。


 辞書で<持続>と説明されていたのが1と2であったが,3・4の“着”も部分的には<動作の持続>なので,例文を挙げて説明しておきます。
3  你听着。Nǐ tīngzhe.
  You just listen. (聞きなさい。)
  快着点儿。Kuàizhe diǎnr.
  Be quick. (もっとはやくしなさい。)
  最近我们正忙着考试。Zuìjìn wǒmen zhèng mángzhe kǎoshì.
  We’ve been busy with our exams lately.(最近私たちはちょうど試験で忙しいところです。)
  这照片我急着用,今晚能取吗? Zhè zhàopiàn wǒ jízhe yòng, jīnwǎn néng qǔ ma?
  This photo, I’m in a hurry. Will be ready tonight?(この写真急ぎます。今晩取りに来ていいですか。)
※ 3は「動詞あるいは程度を示す形容詞の後に用いて、命令または言い聞かせる語気を加
  える」用法。文全体を名づけるとすれは“祈使態”か。
※ “快”は程度の形容詞。「早くする動作をつづけよ・もう少し」の意。“忙”“急”は
  形容詞の動詞化で,「あわただしくする」「急いでする」の意。部分的ではあるが,あ
  る状態の持続を表している。

4  水顺着这渠道流进田地里。Shuǐ shùnzhe zhè qúdào liújìn tiándì lǐ.
  Water runs along the channel to the fiels. (水は用水路を通って田畑に流れこんでいる。)
※ 「もともと動詞である語の後に付着して,その動詞を介詞化する」用法。“按着”
  “对着”“向着”“依着”“照着”などの用例がある。
※ “着”には上記1と2のa~d以外にも“好着呢”(とてもいい)と程度の深さを表し
  たり,“笑着,笑着,她的声音变了哭声”(笑い転げているうちに,彼女の声は泣き声
  になってしまった)というように動作を続けているうちに変化が起こった表現,語気を
  和らげるために付け加える用例もある。


 持続態のもう一つの代表語は“在”zàiです。この“在”は“正”zhèngまたは“正在”zhèngzaìとほぼ同義です。歴史的には“正”の使用例が古く,古代にまでさかのぼるそうです。その後に“正在”が用いられ,やがて“正”の省かれた“在”の使用が口語では多くなります。

 “正”には「ちょうど」と「ちょうど~しているところだ」との両義がありますが,“正在”と“在”は「ちょうど~しているところだ」という意味だけで,フォーマルなのはやはり“正在”です。《现在汉语词典》の“正在”の説明は以下のとおりです。
  [正在] zhèng zaì(副詞)表示动作在进行或状态在持续中(動作が進行しているあるいは状態が持続中を表す)

  我正在看报。Wǒ zhèngzài zài kàn bào.
  I am reding a newspaper.(私は新聞を読んでいるところです。)
  她正在听音乐。Tā zhèngzài tīng yīnyuè.
  She is listening to music.(彼女はちょうど音楽を聴いているとことです。。)
  会议正在进行。Huìyì zhèngzài jìnxíng.
  The meeting is going on.(会議は進行中です。)
  她正在起草一个决议。Tā zhèngzài qǐ cǎo yí ge juéyì.
  She is drafting a reolution.(彼女はある決議文を書いているところです。)
  一切都正在变。Yíqiè dōu zhèngzài biàn.
  All are changing.(すべてが正に変わりつつあります。)
  情况正在变好。Qíngkuàng zhèngzaì biànhǎo.
  The situation is getting better.(状況はまさに好転しつつあります。)
  我正在出门, 他来了。Wǒ zhèng zaì chū mén, tā lái le.
  I was just going out when he arrived.(私がちょうど家を出ようとしたところに,彼が来ました。)
  他正在吃饭, 过一会儿就来。Tā zhèngzài chīfàn, guò yíhuìr jiù lái.
  He’s having dinner now. He will be coming in a moment.(彼は食事中です。しばらくしたら来ます。)
※ 上記の例文はすべて“正在”となっているが,発音上のバランス問題など微妙なところ
  があるが,基本的には“正”でも“正在”でも“在”でも通じる。そのニュアンスの違
  いは,「ちょうどそのとき」という時間と「~している」という叙述のどちらに重点を
  置くかにある。“正”は「ちょうど~(している)」,“正在”は「ちょうど~して
  いる」,“在”は「(ちょうど)~している」と,それぞれ下線部に力点がある。
※ 上記の動詞は“进行”を除き,<持続>の“着”をつけることができる。<持続>と<
  進行>は<進行>が上位概念。また,発音のバランス問題もあるが,基本的には“呢”
  をつけることができる。
※ “进行”という語は日本語では名詞。「~する」をつけてサ変動詞化できる。ところが
  中国語は日本語では名詞の2字熟語のほとんどが動詞。動詞が主で,ときに名詞化する
  いわゆる“兼類語”。こうした2字熟語は他に“安心、表现、代表、发展、通知、消费、
  研究、整理、……”など多数にのぼり,中国語動詞の3割にも及ぶとか。また,こうし
  た2字熟語には“着”はつきにくい。
※ なお,“起草”“变好”に“着”をつけるなら,“起着草”“变着好”になる。この
  “起草”は離合詞。すでに賓語はあるのだから,“一个决议”という賓語をつけるのは
  不可のはず。しかし,離合詞を1語動詞と見た違反例も最近は目につく。

  从刚才开始电话就一直在响。Cóng gāngcái kāishǐ diànhuà jiù yìzhí zài xiǎng。
  The phone has continued to ring since a while ago.(先ほどから電話のベルが鳴っています。)
※ この例の場合は“正”はつかない。なぜなら,“从刚才开始”という修飾語や“一直”
  という副詞があるから。

  电话正在占线呢。Diànhuà zhèngzài zhàn xiàn ne.
  The line is busy.(電話中です。)
※ この例の動詞“占”は同じ動作を繰り返すのではなく,最初の動作後はその動作で起こ
  った状況変化の状態が続いている静態動詞である。したがって,この文例は<進行>で
  はなく,<持続>を表している。

 中国語で持続態を表す語は,一つは動詞の後に付着する動態助詞の“着”で,その意味には動態動詞のときの<動作の持続>(~している)と静態動詞の<状態の持続>(~している)でした。もう一つは動詞を前から限定する副詞の“在”で,その意味は<動作の進行>(~しているところだ/しつづけている)でした。それに<継続>を表す語気助詞の“呢”などが加わります。


 それではもう一つ持続態の<継続>を表す語気助詞の“呢”について整理しておきます。それは“呢”の用法の3で,「陳述文の文末に用い,動作や状態の継続を表す」というはたらきです。
  [呢] ne (語気助詞) 1.用在疑问句的末尾, 表示疑问的语气
                 2.用在陈述句的末尾, 表示确认事实
                 3.用在陈述句的末尾, 表示动作或情况正在继续
                 4.用在句中表示停顿

3  正在下着雨呢。Tiān xiàzhe yǔ ne.
  It’s raining now.(雨が降っています。)
  他正在吃着饭呢。Tā zhèngzài chīzhe fàn ne.
  He is having dinner.(彼はちょうど食事中です。)
  他(在)睡觉呢。Tā (zài) shuìjiào ne.
  He is still sleping.(彼は寝ています。)
※ 1は疑問の“呢”,2は事実の確認の“呢”,3が「陳述文の文末に用い,動作や状態が
  まさに継続続していることを示す」“呢”である。<~V着~>や<~正/正在/在V~>
  といっしょに用いられることが多い。
※ ところで,この説明には<持続>という語は使わず,<継続>という用語がつかわれて
  いる。<持続>というのは,持続の“着”“在”の用例でわかるように,“着”“在”
  と述語動詞の関係は密接である。つまり,<持続>というのは「述語動詞の動作/状態
  を維持しながら継続する」という意味。“呢”が<継続>だというのは,“呢”が述語
  動詞に直接はたらきかける力はなく,単に「述部状態が継続している」と付記する語感
  だから。


 持続態には<持続><進行>以外に<継続>というのも含めるとしたら,“呢”以外に複合方向動詞の“下来”“下去”も当然加えることになるので,その例を挙げておきます。
  [下来] xiàlái 1.用在动词后, 表示从过去继续到现在或从开始继续到最后
         2.用在形容词后, 表示程度继续增加

1  这个故事一代代流传下来。Zhè ge gùshì yí dàidài liúchuǎn xiàlái.
  This legend has ben handed down from generation to generation.(この話は代々受け
  継がれてきたものだ。)
2  天渐渐地黑下来了。Tiān jiànjiàn de hēi xiàlái le.
  It was getting drk.(空がだんだん暗くなってきた。)

  [下去] 1. 表示继续
    2.用在形容词后, 表示程度继续增加

1  请讲下去。Qǐng jiǎngxiàqù.
  Please go on.(どうぞお話しされてください。)
  你这样下去会进监狱的。Nǐ zhèyang xiàqu huì jìn jiānyù de.
  If you go on like this you wll be put into prison.(君はこんなことをしていたら,そのうち監獄行きだ。)
2  病人的情况在一天天坏下去。Bìngrén de qíngkuàng zài yí tiāntian huàixiàqù.
  The patient is getting worse and worse.(病人の病状は日に日に悪くなって行く。)
※ “下来”“下去”は「高みから下りて来る/下りて行く」の複合方向動詞。それがある
  動作や状態が過去から現在へ,あるいは現在から未来へと移動していく時間の幅の表現
  となった用法。
[PR]
by damao36 | 2011-12-04 20:12 | 中国語文法 | Comments(0)

204 形容詞―性質形容詞・状態形容詞・区別詞

 形容詞とは主として人や事物がどういう性質・属性を有しているのか,どういう状況・状態であるのかを叙述する語です。英語では必ずbe動詞などの不完全自動詞(be動詞以外に get became look feelなどもあるが)の後に続いてはじめてその叙述を完成しますが,日本語と中国語の形容詞はすでに英語の不完全自動詞の意味(「~である・~ている」)まで備えているので,動詞同様単独で述語のコアになることができます。

 日本語と中国語の形容詞は動詞同様単独で述語を構成できるという点で共通ですが,中国語の形容詞は語形変化はなく,また日本語形容詞は形態上の特徴が明確ですが,そのような特徴はありません。

 日本語というのは動詞の場合はその終止形末の音が必ずウ段音で,形容詞ならその終止形末の音節は「~い」,または「~だ」(この「だ」で終わるのを学校文法では形容動詞という)で終わりるという特徴があります。しかし,中国語の場合は動詞もですが,形容詞はそうした形態上から識別する手がかりは特にないということです。その文法上のはたらきから形容詞だと判断することになります。

 それでは中国語の形容詞の文法上のはたらきをまとめておきます。

≪形容詞の文法上のはたらき≫
1 単音節の形容詞はすべて性質形容詞である。多音節形容詞は性質形容詞と状態形容詞と
 がある。性質形容詞には述語にはなれない非述語性形容詞もあり,それを「区別詞」という。 
2 形容詞は述語となる叙述方法と,定語や状語,補語という前後の文を修飾・限定する限
 定用法とがある。したがって,主語・述語・賓語・定語・状語・補語すべての文法成分に
 形容詞は用いられる。
3 形容詞の多くはそのままの形で述語になれる。(例外として述語にはなれない非述語性
 形容詞を「区別詞」という。)
4 形容詞はそのままの形で主語や目的語になることもある。
5 形容詞は述部のコアとして結果・方向・可能・数量・状態補語すべての補語構文をもつ
 ことができる。また,方向・数量補語のコアにはなれならないが,結果・可能・状態補語
 のコアになる。
6 <形容詞+名詞>の形で定語になる。この場合形容詞と名詞の組み合わせには大きな制
 限がある。この場合つなぎ語として“的”を必要とするときと,必要としないときとがある。
7 <形容詞+動詞/形容詞>の形で状語になる。この場合つなぎ語として“地”を必要と
 するときと,必要としないときとがある。
8 <述語・動詞/形容詞+補語・形容詞>の形で補語成分になる。この場合は後ろから前
 の述語の意味を限定補足する。
9 動詞との大きな違いは程度の副詞“很”などの修飾を受けることと賓語を持てないこと
 である。

 それではこの≪形容詞の文法上のはたらき≫の1「単音節の形容詞はすべて性質形容詞である。多音節形容詞は性質形容詞と状態形容詞とがある。性質形容詞には述語にはなれない非述語性形容詞もあり,それを「区別詞」という」について説明します。

 形容詞は大きく二分すると,性質形容詞と状態形容詞とになります。性質形容詞をⅠ,状態形容詞をⅡとしておきます。さらに,実際は性質形容詞の下位分類に属しますが,「述語にも定語や状語になれる」一般の性質形容詞と違って,「述語や状語にはなれず,定語にのみなる」語群があります。これを非述語性形容詞とか属性形容詞とか区別詞とか呼ばれています。ここではⅢとして「区別詞」と称することにします。
 Ⅰ 性質形容詞  述語になれる。
          定語や状語になれる。
 Ⅱ 状態形容詞  述語になれる。
          定語や状語になれる。
 Ⅲ 区分詞    述語になれない。
          定語になれるが,状語にはなれない。
         (したがって「非述語形容詞」とも言う。)

 ところで,上記では形容詞の種類を3区分してその特徴を並べてみたのですが,ⅠとⅡはまったく同じです。ⅠとⅡは結局どう違うのか,まずは実例を挙げて理解することにしましょう。

 それでは,中国の国家対外漢語教学領導小組弁公室が定めた《词彙等級大綱》の最重要語2000語,重要語1000語計3000語の中に含まれている形容詞約370語に,私の判断で追加した約390語を,Ⅰ~Ⅲに分類して掲載します。

Ⅰ 性質形容詞  人や事物の性質、属性を表す。単音節と多音節型とがある。
(1) 単音節語   
a 矮
b 白 薄 饱 笨 扁 便 遍
c 差 长 臭 粗 (错)
d 大 呆 淡 低 短 (对) (多)
e 饿
f 肥 富
g 干 高 够 光 古 怪 光 贵
h 好 黑 红 厚 滑 黄 坏 活
j 挤 假 尖  紧 近 静 旧
k 渴 空 苦 快 宽 困
l 辣 老 累 冷 凉 亮 另 绿
m 满 慢 忙 美 密 妙
n (难) 闹 浓 暖
p 胖 平
q 齐 浅 强 巧 青 轻 清 晴 穷 全
r 热 软 弱
s 傻 (少) 深  生 湿 瘦 熟 松 酸
t 同 甜 团
w 歪 稳
x 细 鲜 闲 香 小 新 (行) 雄
y 阴 硬 圆 远
z 杂 脏 早 窄 长 真 重 正 准 紫
※ 単音節形容詞はすべて性質形容詞である。性質形容詞は程度副詞“很”などのの修飾を
  受けることができる。“很”などの程度の副詞をもった語は状態形容詞と同じはたらきをする。
※ しかし, “多”“少”“行”“对”“错”“难”“容易といった語は,その意味を考
  えると,正確には事物の有する属性を表すものでも,状態を表すものでもない。
※ “多”と“少”は数量の多寡についての語なので,この二つを数量形容詞として別類と
  する説もある。 多音節形容詞の“大量 多数 好些・・・”も同じ。
※ “行” は“能干”(能力がある)“可以”(よろしい),“对”は“相合”“适合”
  “正确”の意味を表す語で,いずれも動詞・助動詞の“可以”に近い。これは物事の
  判断・評価をする語で,勝手にネーミングすると判断形容詞ともいうべき語群である。
  他に“错”“难”“容易”などがある。数量形容詞とこうした判断形容詞は,その特徴
  から定語や状語にはなりえない。形容詞のはたらきの中のる限定用法(非述語形容詞)
  はなく,叙述用法のみの語群である。「非述語性形容詞」を「区別詞」としたのである
  から,これらの「唯述語性形容詞」も別項を立てるべきだが,区別詞ほどは多くない
  ので,広い意味で性質形容詞に含められている。

(2) 多音節形容詞
  (A/A’:形容詞  V:動詞  N:名詞  F:副詞 a:助動詞  代:代詞  
   -:付属要素  C:補語)
AA’ 安静 安全 诚恳 崇高 聪明 高大 广大 广泛 广阔 古老
   寒冷 黑暗 积极 简单 坚定 坚强 艰难 尖锐 激烈 急忙
   健康 巨大 绝对 厉害 良好 凉快 灵活 困难 美好 美丽
   密切 明亮 明白  明确 明显 疲劳 暖和k 确实 热烈 热闹
   痛苦 便宜 平安 平等 平静 朴素 强大 强烈 奇怪 亲爱
   清楚 轻松 亲切 深厚 完全 伟大 危险 稳定  温暖 详细
   显著 辛苦 新鲜 雄伟 迅速 严重 异常 英勇 悠久 勇敢
   优良 优美 优秀 愉快 糟糕 正常 整齐 正确 重大 庄严
   准确 仔细
AN  大胆 大概 大量 单调 单独 精彩 乐观 全面 热情 热心
   同样 细心 虚心 整个 重点 重要 专门 专心 主观 主要
   准时 自费
AV  复杂 高兴 公开 好吃 好看 好说 好听 好玩儿 坚决  难看
   难受 普通 深刻 完整 周到 正式
Aー 好些 显然

VV  抱歉 沉默 充足 发达 反动 繁荣 丰富 封建 愤怒 干脆
   干净 干燥 合适 活泼 活跃 糊涂 骄傲 结实 努力 确定
   耐用 生动 适当 舒服 舒适 熟练 讨厌 系统 兴奋 有用
VA  巩固  刻苦 经常 漂亮 迫切 认真 容易 随便 顺利 照常
   着急
VN  充分 抽象 倒霉 动人 合理 及时 具体 落后 开朗 卫生
  满意 耐心 意外 有力 有利 有名 有趣 有效 有意思  著名
VC  了不起

NN  地道 马虎 矛盾 片面 幸福 形象
NA  天真
NV  年轻(青) 先进

FV   实用 实在 真实 真正 没用
FA  不错  不平  不少  不同  不行  不幸  不朽  老实 没错 日常  许多
F-   差不多 不得了
   必要 当然 偶然
  没意思 特别 特殊 无数 无限
  相当 相反 相互 相似 相同

aV   可爱 可靠 可怜 可能 可怕 可以 能干
--  另外 一切 一样 一致 一定 所谓 所有
 ※ 例挙した性質形容詞の多音節語は, “不得了”“差不多”有意思”“没意思”を除
   いて,2音節語である。
 ※ 2音節の組み合わせは例示したように14通りほどもある多彩なものである。
 ※ 辞書の親字としての漢字欄には品詞の特定しにくい文字が多い。例えば “诚”
   “崇”“充”“级”“巩”“复”“繁” などの語は現代中国語では1字だけでは用
   いられない語群である。多くの辞書はこれらの語の品詞は明示しないか,付属形態素
   と呼んだりしている。ただし,幸い《英汉大辞典》は品詞を特定しているので,それ
   を参考にして区分した。しかし,形容詞にするか名詞にするか迷うものも多いので,
   上記の分類は一つのメドだと理解してほしい。


Ⅱ 状態形容詞  すべて多音節形容詞で,単音節形容詞の組み合わせからできていてる。
 人や事物の状態を表す。それぞれの単音節形容詞の本来の性質が現に存在している状態を
 表す。性質形容詞の組み合わせなので,形は複雑。
(3) 単音節形容詞の重ね型(AA型)
   高高  大大  轻轻  纷纷  好好儿  慢慢儿 小小儿

(4) 2音節形容詞の重ね型 (AAaa型)
   干干净净  高高大大 高高兴兴  干干净净  慢慢腾腾 慢(慢)悠悠
   忙忙碌碌 清清楚楚 凉凉快快  地地道道
  ※ (3)~(5)は重ね型バージョン。(7)は接尾辞型, (8)は比喩型, (9)は複雑型。
  ※ 重ね型には“很”などの程度の副詞はつかない。
  ※ 重ね型にはいずれも「状況・状態ををよりクッキリと鮮やかにする」意味をもつ。
     例:大大的眼睛。big eays(君の言いたいことはわかります。)
请你多多帮助。Please give me all the help you can.(ご援助どうかよろしくお願いします。)
  ※ 単音動詞の重ね型 は後ろが軽声になるが,形容詞は単音節形容詞,2音節形容詞
    ともにその重ね型は軽声にならない。本来の声調でしっかり発音する。ただし“好
    好儿”のように単音節形容詞の“儿”化の場合は後の音が1声になる。また(5)の
    場合も,後の2文字を「クッキリ」させるために1声に発音したりする。
 

(5) 比喩型 (「CのようにAだ」という内部構造をもつ。)
   宝贵 笔直  冰凉  飞快  光明  滚热 活泼 客气 流利
   漆黑 煞白 通红  痛快 雪白  

(6) 比喩繰り返し型 (2音節形容詞の重ね型②)
   冰凉冰凉  滚圆滚圆   痛快痛快   雪白雪白
  ※ 比喩型形容詞はふつうの形容詞と違って前に程度の副詞“很”“真”“非常”など
    がつかない。最初の文字が程度を表す比喩表現であるから。
  ※ 比喩型はさらに「クッキリ、鮮やかに」表現したいときは,(5)のように前語と後
    語を重ねて言うのではなく,(7)のように単語全体を繰り返す。発音も明確に。

(8) 接尾辞型 (擬声語・擬態語を接尾辞として持つ。接尾辞型。)
   白净净 白茫茫 干巴巴  亮晶晶 蓝晶晶 蓝盈盈(莹莹)
   绿葱葱 绿茸茸 绿茵茵 绿油油  红扑扑 红通通(彤彤) 红艳艳
   黑漆漆  黑沉沉 黑洞洞 黑亮亮 黑糊糊 黑茫茫 黑乌乌
   黑油油 黑压压 黄灿灿 暖洋洋  胖乎乎 清悠悠 热乎乎  
   水汪汪 甜丝丝 甜滋滋  香喷喷  笑嘻嘻 硬梆梆
※ 視覚や嗅覚,味覚,触覚などの感覚表現。後の2文字の接尾辞は一種のオノマトペである。

(9) 特殊型  ( A-Aa型)(異なる2つの音節からなり,<形容詞一部+“里/不/了”+
              形容詞>になる。)
   糊里糊涂(愚かだ めちゃめちゃだ)   傻里傻气(間が抜けている)  
   黑不溜秋(黒ずんでいる どす黒いる)  脏了咕叽(汚らしい)
   马里马虎(ひどくいい加減である)
 ※  この型はマイナスイメージ(嫌悪や軽蔑の気持ち)を表現している。


Ⅲ 区別詞  
  非述(語)形容詞とか属性形容詞ともいい,分類や区別を表す。形容詞は叙述用法・修
 飾限定用法・補語用法とがあるが,この区別詞は形容詞の限定用法だけに使う。常に名詞
 を修飾して定語となるだけ。日本語では名詞。ペアになるものと,単独なものとがある。
(ペア) 単-双 父-母 横-竪  金-銀  正-副  男-女  雄-雌 
     短期-长期 公人-私人 个别-共同 国立-私立   急性-慢性
     间接-直接 旧生-新生 民用-軍用  天然-人為 无关-有关
     新式-旧式  大型-中型-小型 初级-中级-(高级)
(単独) 别  粉  私
     本来  大批 初步 非常 国产 固有 公共 快速  彩色 所有
     袖珍 正式 业余
 ※ 例えば中国語の“男nán”や“女nǚ”は日本語では名詞だが,中国語では形容詞になる。
   その理由は“男”や“女”という語1字だけでは現代中国語では名詞として独立して
   は使われないから。日本語の「男」や「女」は“男人nánrén”とか“女人nǔrén”とか,
   必ず<区別詞+名詞>という形式で,修飾用法でしか使われないからである。“形容
   詞のような名詞のような”語である。
 ※ 中国語では代表的な金属を“五金”(金、銀、銅、铁、锡)と言う。しかし,
   “金”と“銀”のみが区別詞。なぜなら,他の語はそのまま名詞として主語や賓語に
   使えるが,“金”“銀”は名詞として使うときは,必ず “金子”と“銀子”と言うから。
 ※ “初级-中级-(高级)”の“高级”をカッコでくくっているのは,この語だけは叙述用
   法が可能だからである。 例:这家饭店真高级! This hotel is realy first-class.
  
 なお,上記の形容詞として挙げた語は,文中の位置や用法によっては動詞や副詞,名詞,介詞,連詞,量詞,代詞,数詞になったりします。こういう語を兼類語と言います。

1 動詞も兼ねる形容詞
   差 呆 倒霉 对 饿 方便 丰富 高兴 公开 够 好hào  厚 滑
   坏 活跃 困 累 凉快 可怜 客气 空kòng 苦 困 累 亮 凉快
   明白  明确 密切 暖 暖和nuǎnhuò 平 齐 清 清楚 确定 热
   热闹 少 松 所有 讨厌 团 稳定 温暖 辛苦 圆 长 准
 ※ 形容詞と動詞の違いは≪形容詞の文法上のはたらき≫8で「(多くの形容詞は)程度
   の副詞“很”などの修飾を受けることと賓語を持てないこと」と述べた。例えば以下
   の2例,後半は賓語であるから,いずれも形容詞とはいえず、動詞である。“明白”
   は「はっきりしている」ではなく,「わかる」。“高兴”は「うれしい」ではなく,
   本当は「~するのを喜ぶ」の意。しかし,この2文の述語は“很”で受けることがで
   きる。つまり,動詞の中にも心中語は“很”で受けることができるし,自動詞なら当
   然賓語をとることはできない。
     例:我明白你的意思。 I see what you mean.(君の言いたいことはわかります。)
       很高兴你设么说。It’s nice of you to say so. (君がこう言ってくれるのはうれしい。)

2 副詞も兼ねる形容詞
   白 (大大) 大概 当然 多 纷纷 够 怪 光 好 及时 可能 空
   快 老 偶然 全 确实 实在 特别 同 完全 异常 一定 早 真
   正 直
 ※ 例えば“多”“光“好”“”“快”“”……などが状語として動詞の前にあるとき,
   形容詞のときと副詞のときがある。
    例:A 少花钱, 多办事。 Get more dne on less money .(お金は使わないで多くの事をする。)
       你多大了? How old are you? (いくつなの。)
       看她多精神! Look how energetic shi is(なんとまあ彼女は元気のいいことよ。)
B 这个问题好回答。 This question is easy to answer. (この問題は回答しやすい。)
      这件事情好办。 This is easy to do. (これはやりやすい。)
她买了好多东西。 She bought quiete a few things . (彼女はたくさん買い込んだ。)
C 孩子们快进来, 下雨啦! Hurry in, children. It’s raining!. (雨ですよ。早くお入り。)
      他快回来了。 He’ll be back soon. (彼はもうじきもどってきます。)
     D 早起早睡身体好。Early to rise and early to bed makes a man healthy.(早寝早起きは健康によい。)
      他早走了。 He left long ago. (彼はとっくに行きましたよ。)    
     例文A~Dの最初の例文が形容詞。その後のⅠ,または2文が副詞の例。でも,
     その識別は微妙なところがある。Cの“快进来”

3 名词も兼ねる形容詞
   错 光 可能 矛盾 耐心 便宜 疲劳 热 热情 痛苦 团 卫生
   行 形象 意外 早

4 介詞も兼ねる形容詞
   对 同 同样

5 连词も兼ねる形容詞
   便 非常 好 同

6 量词も兼ねる形容詞
   遍 对

7 代词も兼ねる形容詞
   一切

8 数词も兼ねる形容詞
   多
[PR]
by damao36 | 2011-12-02 22:03 | 中国語文法 | Comments(0)