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174 補語とは

 中国語の文法成分の一つ補語というのがありますが,英語で使われている補語とはそのはたらきが違っています。

 その違いについてはすでに触れていますが,再度説明します。

英語の補語の形式上の特徴は不完全自動詞であるbe動詞などの後にくる名詞または形容を指していいます。例えば以下の文です。
 A I am a Japanese. (我是日本人。  私は日本人だ。)
 B You can call me Xiao Wang.  (你叫我小王吧。 小王と呼んでくれ。)
 C You look happy.   (你好像很高兴。 あなたはうれしそうだ。)

 Aは主語の「I」を説明すると「a Japanese」ですから,「I=a Japanese」の関係になります。主語のことを補足説明しています。Bは「me= Xiao Wang」です。目的語の補足説明です。Cは形容詞「happy」が主語の状態を補足説明しています。

 このように英語の補語は主語や目的語がどういう性質・属性を有しているのか,主語または目的語がどのような状態にあるのか,そういうことを説明し補足する語句のことです。


 ところで、日本語文法でも補語という用語を使う人がいます。いわゆる学校文法では出てきませんが,最近の外国人向け日本語文法書を見ると,補語という用語を使っている書が多く見かけます。

 例えば『入門 日本語の文法』(村田水恵著 2007)では日本語の9つの格助詞「が」「に」「を」「へ」「で」「から」「まで」「と」「より」のついた名詞フレーズは全部補語としています。主語も日本語では必ずしも必要でないからでしょうか,主語はガ格補語または主格補語です。要するに補語とは文の基本要素としてはなくてもいい部分,どうもそういう意味で用いているようです。

 上記の英語の例A.B・Cを中国語に訳して,その文成分を考えると,すべて補語ではありません。英語のAはVC文でしたが,その中国語訳“我是日本人”はVO文です。この““日本人”は賓語(目的語)です。B文訳の“你叫我小王吧“の”小王“も賓語(直接目的語)です。C文訳は形容詞述語文です。


 それなら中国語の補語とはどのような成分をいうのでしょうか。

 例えば「食べる」という行為があります。中国語では「吃」です。もしあなたが「ご飯を食べ終わった」といいたかったら,「吃完了」(A)といいます。「食べてしまう」とその動作の進行に主眼を置いていいたかったら,「吃下去」(B)です。「食べきれる」といいたかったら,「吃得了」(C)、「食べきれない」といいたかったら,「吃不得」(D)です。「一度食べたことがある」とその回数をいいたかったら,「吃过一次」(E)です。「食べすぎちゃった」といいいたかったら,「吃得多了」(F)です。「食欲はある」といいたかったら,「吃饭也很香」(G)です。

 このように基本的な動作である「吃」の意味を拡充して言い表すときに,基本的動作・状態語の後ろに追加する語句を,中国語では補語と呼んでいます。英語の補語が主語・目的語の補足語,日本語の補語が文の基本要素ではないものとしたら,中国語の補語は述語の補足語で,重要な述部の意味決定をします。したがって,中国語の補語は述語とは切り離せない述部の一部になります。

 「基本的動作・状態語の後ろに追加する述部の一部」,それを中国語の補語というのですが,その意味上のはたらきから,A結果補語・B方向補語・C可能補語・D数量補語・E程度補語・F状態補語・と以下の六つに分類できます。

 分  類             構造                  例 語(訳)
A 結果補語         V+V/A+(賓語)          “吃完了”。(ご飯を食べ終わった)
                 V+介詞連語             “生于1985年。”(1985年生まれ)   これは疑問あり

B 方向補語         V+V(方向動詞)+(賓語)     “吃下去。”(食べ物を呑み込む)
                 V+(賓語)+V(方向動詞)

C 可能補語         V+得/不+V+(賓語)        “吃得上。”(食べきれる)
                                       “吃不得。”(食べきれない)

D 数量補語         V+数量詞/連語+(賓語)      “吃过一次”(一度食べた)
                 V+(賓語)+数量詞/連語

E 程度補語         V++A                 “吃饭也很香”(食欲がある)

F 状態補語         V+(得)+A            “吃得多”(たくさん食べる)
           
     注1  Vは動詞,Aは形容詞です。
     注2  程度補語と状態補語(様態補語)は区別しにくいこともあって,どちらかにまとめている書もあ
        ります。また,方向補語は単純方向補語と複合方向補語に,数量補語は動作量補語と時間量補
        語,比較数量補語に分ける説もあります。
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by damao36 | 2010-12-20 20:32 | 中国語文法 | Comments(0)

173  補語(2)―方向動詞と方向補語

 中国語動詞の中にはどういう方向に動くかを1音節または2音節で示す語群があり,これを方向動詞と呼んでいます。

 この方向動詞というのは,どの方向に移動するかを表すもので,移動動詞とも呼ばれています。中国語では“趋向动词 qùxiàngdòngcí”と呼んでいます。

 この方向動詞には1字からなるものと2字からなるものがあります。1字からなる語は“来”と“去”の2語で,物事の方向・移動の基本だと考えます。この2語を単純方向を示すA類の方向動詞と名づけます。
   単純方向動詞・A類  来(←)
                  去(→)

 また,この2語を語尾とした第二段階の方向動詞群があります。これは “上”“下”“进”“出”“回”“过”“开”“起”の8語で,これはB類の単純方向動詞です。
   単純方向動詞・B類  上(↑)上への移動
      下(↓) 下への移動
      进( ↙) 中への移動
      出( ↗) 外への移動
      回(⊃) 再びもとの所への移動
      过(―) 通り過ぎる移動
      起(∠) 立ち上がる移動

 したがって,単純方向動詞は上記のA類・B類を併せた9語とになります。

 この9語の単純方向動詞は,[B類7語×A類“来”・“去”]の組み合わせを作ります。これを複合方向動詞とかBA類方向動詞とかといいます。その組み合わせは以下の13種類です。
  複合方向動詞(BA類方向動詞)
      上来〔↑ ←〕 上へ移動しながら近づく    上去〔↑ →〕上へ移動しながら遠のく
      下来〔↓ ←〕 下へ移動しながら近づく    下去〔↓ →〕下へ移動しながら遠のく
      进来〔 ↙ ←〕 中へ移動しながら遠のく    进去〔 ↙ →〕中へ移動しながら近づく
      出来〔↗ ←〕 外へ移動しながら近づく    出去〔↗ →〕外へ移動しながら遠のく
      回来〔⊃ ←〕 もとへ移動しつつ近づく    回去〔⊃ →〕もとへ移動しつつ遠のく
      过来〔― ←〕 こちらに近づく          过去〔― →〕通り過ぎて遠のいて行く
      起来〔∠ ←〕 立ち上がながら近づく

 ※1 このAとBの関係はAのあとにBがきて複合語をつくるということです。したがって,A×B=14の複合語
   ができるはずですが,実際は“起”は“来”との結合しかないので,複合方向補語は全部で13になりま
   す。
 ※2 方向補語として“开“も認める立場もありますが,少数意見なので認めないことにしました。


 このA類、B類、BA類の方向動詞はもちろん本動詞としても大いに用いられます。その例文も挙げておきます。

 本動詞となる方向動詞
1 我去吧。
  I will go there. (私が行こう。)
2 你来了。
Welcome. (いらっしゃい。)
3 雨下了一个星期。
  It has rained a week. (雨が一週間降っていた。)
4 的士来了,你先上去吧。
  Here comes the taxi. Let’s get on before me. (タクシーが来ました。お先にお乗りください。)
5 他还没上来。
  He hasn’t come upstairs yet. (彼はまだきていません。)
6 你可以进来。
  You may come in. (入っていいですよ。)
7 我们进去看一下吧。
  Let’s enter the shore. (私たち中に入って見てみましょう。)
8 你从房间里出来。
  You come out of the room. (君部屋から出て来なさい。)
9 妈妈出去买东西。
  Mother has gone out to do some shopping. (ママは買い物に出かけてます。)
10 我马上回来吧。
   I’ll go(be) bach soon.(すぐもどります。)
11 你回去吧。家里有人找你。
   Someone is waiting for you at home. You’d better go back right now.
    (もうお帰り。家の人が探してましたよ。)
12 快过来!
   Come over here, quick! (早くおいで。)
13 我过去看一看。
   I’ll go over and take a look. (私が行って見てみましょう。)
14 快起来, 你这个懒蛋。
   Get up! You lazybones. (早くおきなさい。怠け者が。)
15 他进办公室来了。
    He go in his office. (彼は事務室に入ってきた。)
16 他出房间去了。
    He go out the room. (彼は部屋を出て行った。)
    
 ※1 1~3(4の“来”も)は1字の単純方向動詞です。他の語もそれぞれ多くの例がありますが,省きます。
   4以下は2字の単純方向動詞です。
 ※2 2字の単純方向動詞の4~14までの発音は最初の文字は声調どおりに発音し,2字目の“来”“去”は
   軽声になります。ただし,15~16は2字目の“来”“去”も本来の声調どおりです。理由は分離しているか
   らです。
 ※3 B類の方向動詞を本動詞とした場合,その二つの文字の関係は[本動詞+補語]の関係にはなりませ
   ん。複合動詞になります。
 ※4 上記の文の述語のもつ意味からまずは大きく三つに分けると,①これから先のこと,②すでに実現した
   こと,③どちらでもないことになります。
    ①は1、4(後)、6,7、8、10、11、12、13,②は2、3、4(前)、5、9、15、16,③は5(否定形)になり
   ます。
    さらに①と②を下位分類すると以下のとおりです。
       ① a意志 1、4(前)、10、13
          b許可 6、12
          d勧誘 4(後)、11
          e命令 8、12
       ②  実現 2、3、4(前)、5、9、15、16
 ※5 できるだけ簡略な例を挙げたので,1、2、3、4、5、6、8、10、11、12、14はSV文です。9、15、16
   はSVO文,13はSVV文です。このSVO文で注意すべきことは,9は方向動詞が分離されてなく,15、
   16は分離され,文末に“了”という事態の変化の語気助詞があるということです。9の“买东西”は一般名
   詞ですが,15、16の賓語は場所を表す名詞になっています。つまり,場所詞がBA方向動詞の賓語の
   ときは,“来”“去”が分離されて場所詞の後になるということです。
 ※6 5の“他还没上来。”は「上ってくる」という方向・移動の行為の否定で,つまり「上ってこないということで
   すから,実現していないことの否定ですから,“没”になります。方向・移動の否定は“不”ではなく,すべ
   て“没”です。(後記複合方向補語※4参照)


 上記の13の方向動詞を本動詞として用いるときは,特に方向動詞だという意識をする必要はありません。この13語が他の動詞の後に付着したとき,この13語ははじめて本動詞の方向を示す補語としてのはたらきをすることになりなります。

 それでは方向補語(本動詞+13方向動詞)をもつ例文を挙げておきます。

補語となる方向動詞 
 A 単純方向補語
1 过来!
  Come over here! (こっちに来い。)
2 把这个给他捎去。
  Take this and give it to him. (これを彼に持っていきなさい。)
3 你把门关上。
   You close the door. (ドアを閉めて。)
4 快坐下。
  Sit down, quick! (早く座りなさい。)
5 他走进屋里了。
  He walkd in the room. (彼は部屋に入った。)
6 我国派出代表团参加会议。
  Our naition send a delegation to attend a conference. (わが国は代表団を派遣して会議に参加した。)
7 钱已经付过了。
  The bill has been paid. (おカネはすでに払いました。)
8 她也抽起烟了。
  She too has started smoking! (彼女もタバコを吸い始めた。)
9 拿两瓶啤酒来。
  Please, two bottle of beer. (ビール2本お願いします。)

 ※1 方向動詞は軽声で発音します。
 ※2 1、4、7はSVC文,2、3はS把OVC文(“把”構文),5、8、9はSVCO文、6はSVCOVO文(連動文)
   です。
 ※3 5、8、9はSVCO文を見ると,5は賓語が“屋里”と場所詞ですが,方向動詞が“来”“去”ではないの
   で,分離しません。9は5の理由以外に“烟”は場所詞でもありませんから,当然ぶんりしません。ところ
   で9はどうなのでしょうか。
 ※4 9の述語“拿来”は“来”という方向動詞が付いていますから,場所詞の場合は“拿~来”と分離すること
   になります。その理屈からいくと,ここの“两瓶啤酒”は場所詞なんだということになります。この“拿”を介
   詞ととる説もあります。なお,分離された方向動詞“来”はもとの声調にもどって発音します。


  B 複合方向補語
1 把我的午饭送上来。
  Will you send my lunch. (ランチもって来てね。)
2 这个问题你一定答上来。 ×可能補語 
 You can of course answer this question. (この問題きっと解けます。)
3 请把衣服脱下来。
  Please take your clothes offl. (服を脱いでください。)
4 看来天气还会冷下来。
  It’s seems it will get even colder. (天気はまだ冷え込むようだ。)
5 他们一个一个地走出去。
  One by one they got out. (彼らは一人また一人と出て行った。)
6 他跑回来拿雨伞。
  He ran back for an unbrella. (彼は駆けもどって雨傘を持っていった。)
7 把车头掉过来。
  You trun the car round. (車をユータンさせなさい。)
8 他从屋子里走出来了。
  He has come out of the room. (彼は部屋から出て来た。)
9 他哼着小调走进来。
   She came in humming a tune. (彼は鼻歌しながら入ってきた。)
10 他跑过来了。
   I will go. (彼は走ってやって来た。)
11 一只燕子飞过去了。
   A swallow flew past. (一羽のツバメが飛んで行った。)
12 他昏过去了。
   He’s fainted. (彼は気を失った。)
13  孩子突然哭起来了。
    . (子どもが突然泣き出した。)
14 你听起来觉得怎么样?
What did you think when you heard that? (聴いてみてどう感じましたか。)
15 我已经吃不上来。
   I’ve already had enough! (もう食べられない。)
16 我喘不上气来。
   I’m breathing with difficalty. (彼は息ができなくなった。)
17 我已经吃不下去了。
   I’ve already had enough. (もう食べられない。)
18 我觉得你穿起来很合适。
   I think that jacket would go well on you.  (よくお似合いだと思います。)
19 我一眼就认出他来了。
   I recognized him the moment I saw him. (一目で彼だとわかった。)

 ※1 一般動詞に付いた複合方向動詞も2字とも軽声で発音します。
 ※2 SVC文は5、8、10、11、12、13、15、16、17,S把OVC文は1、2、3、7,SVOVC文は9、18,S
   VOAC文は4,SVCVO文は14です。
 ※3 SVC文の5、8、10、11、12、13の中の5はいわば現況報告で,他の7つはすでに実現・変化してし
   まったことです。S把OVC文は1、2、3、7の中の2には“把”という介詞はありませんが,もともとは賓語
   で,ここはその賓語を主題として文頭にもってきたといえます。SVOVC文は連動文形です。9は[一般
   動詞+方向動詞]の方向補語ですが,、18は[一般動詞+方向動詞+形容詞]で,(身につけた結果
   が“很合适”と解されますから,単なる報告補語ではなく,結果補語です。SVOAC文の4は[形容詞+
   方向動詞]の方向補語です。SVCVC文の14の“听起来”は方向補語で,“觉得怎么样”は程度・状態
   補語です。
 ※4 なお,15、16、17は[一般動詞+否定の方向動詞]のついた構造でです。前記方向動詞※6では「方
   向・移動の否定は“不”ではなく,すべて“没”です」と述べており,一見矛盾しているようですが,そうでは
   ありません。
    例えば16の“喘不上气来”だと,この文で問題にしている基本動作は“喘气”(息をする)で,その動作
   が否定されて「息が思うようにできない」という不可能な状態になっているということです。そうした状態は
   眼前に存在しているのですから,存在しないを意味する“没”ではありませんし,この述部は方向補語で
   はなく,可能補語です。“没”を使うなら“喘不上气来”の前になります。


 なお,[一般動詞(V)+方向動詞(V)]の述語を,例えば上記の6 “~跑回来” の例なら「走って(Vして)もどってきた(Vした)」と,方向動詞の本来の意味で訳せますが,13の例“~哭起来了。”を「泣いて(Vして)立ち上がった(Vした)」とは訳せません。この場合の方向動詞“起来”は「~しはじめる」という意味になります。

 このように方向動詞が方向補語になっているとき,本義で訳せる述部と本義から転じた派生義で訳さなくてはいけないところがあります。中国語文に慣れてくると,前後の文脈から自然に推定できることではありますが,いちおう気をつけてください。
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by damao36 | 2010-12-10 22:50 | 中国語文法 | Comments(0)

172 述語(1)―その範疇

 日本語の述語は動詞と形容詞とが核になります。この動詞または形容詞を核とする述語の構造はどういう品詞の語からなっているのかというと,それは[動詞/形容詞+助動詞/助詞]の塊からです。

 この塊を,最近の日本語を外国語として教える日本語文法では,これまでの学校文法とは違って,以下のように名づけてまとめて,教えています。(『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』フリーエーネットワーク)

   否定形:未然形+助動詞ナイ
   意向形:未然形+助動詞ウ/ヨウ
   受身形:未然形+助動詞レル/ラレル
   使役形:未然形+助動詞ウセル/サセル
   マ ス形:連用形+助動詞マス
   テ  形:連用形+接続助詞テ
   タ  形:連用形+助動詞タ
   タリ・タラ形:連用形+助動詞タリとタラ
   辞書形:終止形・連体形(動詞の場合)
   バ形:仮定形+接続助詞バ
   可能形:可能動詞・未然形+助動詞ラレル
   命令形:命令形

 否定形、意向形、受身形、使役形、マス形、テ形、タ形、タリ・タラ形、辞書形、バ形、可能形、命令形と,日本語の述語は12種類にわけ,SV型の日本語を身につけるには,この12種類の述語の型をマスターすることになるのでしょう。


 それでは,英語の述部はどうなのでしょうか。

 まず英語が日本語と違うところは,英語の述語の核は動詞だけだということです。だからでしょうか。英文法では述語という用語は使わず,動詞(verd=)という品詞名をそのまま述語の位置にすえて説明しています。

 そうなっている理由は英語述語の核が動詞であということ以外に,以下のような理由があると考えられます。

 一つはSVO/SVC型である英語述部の核である動詞には主語の単数・複数とか,文全体のテンスを明示する独自の役割があるということです。

 もう一つは動詞の前に助動詞や副詞が,その後ろにはbe動詞+形容詞とかbe動詞+動詞過去分詞とか,前置詞などが来るということがあります。

 ですから,日本語の場合は[動詞/形容詞+付属語(助動詞・助詞)]の一文節を述語と定義してすっきりするのですが,文節という概念のない英語では述語という塊でとらえるとかえって複雑になる,だから述語という概念は採用せず,述語の核である動詞(V)で文構造を捉えることにしているのでしょう。


 それでは述語という文法用語を使っている中国語のはどうなるのでしょうか。

 まず中国語の述語となる語の品詞は日本語と同じで,動詞だけでなく,形容詞や名詞も単独で述語になることができます。

 しかし,日本語と違って英語に似ているところもあり,助動詞や否定の副詞が動詞の前に来ます。また,述語の核となる動詞や形容詞の意味を補う補語という文法成分が述語の核である動詞/形容詞を後ろから限定します。に直接つながります。例えば以下のようにです。

[助動詞/副詞+動詞/形容詞]の例
1 我想吃蛋糕。Wǒ chībuliǎo le
  I’d like the cake.(ケーキが食べたい。)
2 我不吃早饭。Wǒ bù chī le。
  I don’t eat breakfast.(朝ごはんは食べない。)
3 我不能吃生鱼片。Wǒ
  I can not like to eat Sasimi.(私は刺身は食べられない。)
4 你别快吃。Nǐ bié kuài chī。
  Don’t eat fast!(急いで食べるな。)
5 你不要把这些巧克力全吃掉。Nǐ bié kuài chī。
  Don’t eat up all those dchocolates.(このチョコレート,全部食べてはだめよ。)
6 这很/真/特别好吃。Wǒ bù chī le。
  This is very delicious!(とってもおいしい。)
7 这太不好吃了。Wǒ bù chī le。
  This is no delicious!(あまりにもまずい。)
8 这不太好吃。Nǐ bú yào chī le。
  This is’nt too delicios.w(あまりおいしくない。)

・1は[助動詞+動詞],2は[否定の副詞+動詞]の例です。日本語の感覚からは述語でしょう。
・3は「否定の副詞+助動詞+動詞」,4は[禁止の副詞+程度の副詞+動詞]です。3は述語として違和感は
 ありませんが,4は“快”が入っているので,違和感があります。
・4は[否定の副詞+状態副詞+動詞]で1字程度の状態副詞なら述語としていいように思われます。
・5は[S+否定の副詞+助動詞+“把”介詞連語+副詞+動詞]の構造です。2~3の否定の副詞は述語とし
 たので,ここも“不”と“吃”の間の“把这些巧克力・全”も述語に含めるとなると余りにも長すぎます。中国語
 は“把”介詞連語の文を否定形にするときは,否定語をその前にもってくる構造です。もし否定語は述語とい
 う考えに立つなら,ここは述語が分断された例と考えるしかありません。
・6、7、8の“好吃”は形容詞とされています。6の“好吃”の修飾語”很/真/特别”は述語に入れるべきでしょ
 うか。”真/特别”の二語は状語とすべきですが, ”很”が迷います。この”很”,しばしば実質的な意味を持た
 ず,“お飾りの很”なんていわれていますから,その場合は述語の一部とすべきなのでしょう。
・7と8の“好吃”は形容詞とされています。いずれも[副詞+副詞+形容詞]です。否定の副詞の位置が違っ
 ており,7は全否定,8は部分否定です。7は程度の副詞”太“を除いて“不好吃”とした方が日本人としては
 納得できます。8は“不好吃”の中に”太“があるので,違和感がありまが,中国語の述語は一字語程度なら
 述語に混ざってもいい,そのように考えておきます。


[動詞+補語]の例
9 我吃饱了。Wǒ chī。
  I’m full.(腹いっぱいです。)
10 我吃完饭。 Nǐ yǐjīng chīwánle wùfàn ma?
   I alredy had my lunch. (ご飯は食べ終わりました。)
11 我吃不惯。Wǒ chī。
   I don’t like flavor.(私は食べつけていない。)
12 我吃不了了。Wǒ chībuliǎo le
  I’ve had enough.(もう食べられません。)
13 这菜吃得很香。Wǒ chībuliǎo le
   This food is very appetizing.(この料理,実にうまいなあ。)

・9と10は中心語は[動詞+動詞]で,後ろの動詞が前の動詞の動作の結果を表す補語になります。この9と
 10の文型を9はSVC,10はSVCOとしていいものか,迷います。
・11,12,13は連語となっている補語です。この場合は11,12, 13ともSVCの文型だとして迷いはありま
 せん。しかし,よくよく考えると,核となる動詞/形容詞と補語を切り離すことは述語のないように何か違った
 化学反応を引き起こすようで,はたして妥当なのか疑問です。



 上記の例文解説で述べたように,中国語は英語同様,述語の範疇を問題点なく設定することは,意外と難しいようです。

 ならば,英語と同じく述語という用語は用いなければよさそうですが,述語の核になる語が英語のように動詞に限られてはいませんので,そこで日本語と同じように述語(中国語では”谓语wèiyǔ”)という用語を用いている,私はそのように感じられるのです。
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by damao36 | 2010-12-04 15:37 | 中国語文法 | Comments(0)