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体感中国語112―過去と完了の助動詞の減退

日本語は英語や中国語に比べると、なぜか助動詞や助詞の多い言語です。昔はどうだったのかと思って、古語辞典で助動詞を調べてみましたら、だいたい以下のような変遷でした。

<受身・尊敬・自発・可能>  (れる・られる) ←(る・らる
<使役>     (せる・させる・しめる) ←(す・さす・しむ)
<過去・完了> () ←(き・けり / つ・ぬ・たり・り)
<推量>     (う・よう・らしい・べし・まい・ようだ←(む・らし・べし・じ・まじ・めり・らむ・けむ)
<打消>     (ぬ・ない) ←(ず)
<希望>     (たい・たがる) ←(まほし・たし)
<断定>     () ←(なり・たり)
<伝聞・様態> (そうだ) ←(なり)
<比喩・例示> (ようだ・みたいだ) ←(ごとし)
<丁寧>     (ます・です


ここからわかる大きな変化はというと、一つは「」を示す語の簡略化、もう一つは丁寧の助動詞が表れているという点ではないでしょうか。


き・けり / つ・ぬ・たり・り」と6つもあった過去と完了の助動詞は「」1つになっています。推量・未来の表現も現在推量の「らむ」、過去推量の「けむ」に該当する現代助動詞は見当たりません。どうしてなのでしょうか。


そこで、漢文訓読法での助動詞の用例を調べてみました。結果は以下のとおりです。

<受身>  「」,「らる」( jiàn, bèi)
<使役>  「しむ」(使 shǐ)
<推量>  「」(×)  「べし」(kě,dāng,yīng,yì,hé)
<打消>  「」(bù)
<断定>  「なり」(yě)     
<比況>  「ごとし」(rú,ruò)
                 ( )内は該当漢字。×は該当漢字なし。

 
漢文訓読で使用されている助動詞は「受身、使役、推量、打消、断定、比況」の6項目の10種類だけで、古文で使用される助動詞26種類に比べると約3分の1でした。訓読で助動詞として、あるいは一部助動詞として読まれる代表的な漢字はは「 jiàn、 bèi、使 shǐ、kě、dāng、yīng、yì、hé、bù、yě、rú、ruò」の12文字だけでした。


以上のことからいったいなにがわかったというのでしょうか。

私の勝手な推測なのですが、現代日本語に過去や完了という「時」を表す助動詞が減退した原因は漢文訓読文体の影響からではないのか、ということです。

私たち日本人は日本の古典として、主として高校でですが、漢文というものを今も学習しております。そこで読む漢文訓読文体の文章は過去や完了を表わす助動詞を一つも使わずに、いいたいことを表現している文章です。

私たち日本人は漢字を男文字といい、仮名に対して真名と呼び、明治憲法をはじめとする戦前の公式文書は漢文訓読文体が主流だったのですから、その影響は大きかったのではないでしょうか。そうした漢文訓読文体の影響を受けて、現代日本語も過去と完了を表わす助動詞は減退し、たった1語の「」で済むようになった、そのように推測できるのではないでしょうか。


そこで質問です。

過去や完了をどうしても表したいとき、漢文はどう表現しているのでしょうか。現代中国語はどう表現するのでしょうか。
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by damao36 | 2008-10-31 15:10 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語111―”倍”と”2倍”は同じではないのか

「わが工場の生産量は去年の2倍になった。」を「我们工厂的产量比去年增加了两倍。」と訳したら、「增加了一倍。」と直されました。私の訳では3倍になったの意味になるのだそうです。

增加了」は「増えた」ですから、その後の数量補語は増えた分を指すので、これまでの分量と合わせると3倍になる、どうもそんな理屈でした。


少し古い中国の初級中学3年生用の教科書を見ていたら、こんな問題がでていました。

1“产量由每天一百吨变成两百吨”。如改为下列表达,你看哪个对,哪个错。  ( 「生産量が1日100トンから200トンになっつりました」。この文を言い換えても正しいのはどれですか。)
 A 原来每天产煤一百吨,技术革新后,产量达到一倍。
 B 原来每天产煤一百吨,技术革新后,产量增加了一倍。
 C 原来每天产煤一百吨,技术革新后,产量达到原来的两倍。
 D 原来每天产煤一百吨,技术革新后,产量翻了一番。

2 “价格由6元变为2元”。如改为下列表达,你看哪个对,哪个错。

   ( 「価格が6元から2元になりました」。この文を言い換えても正しいのはどれですか。)

 A 原来一条围巾卖6元,生产成本降低后,价钱降低了两倍。
 B 原来一条围巾卖6元,生产成本降低后,价钱降低到原来的2/3。
 C 原来一条围巾卖6元,生产成本降低后, 价钱降低到原来的1/3了。
 D 原来一条围巾卖6元,生产成本降低后,价钱缩小了两倍。


さて、みなさんはいくつ正解だったでしょうか。

正しいのは1はB,C,D、2はB,Cだそうです。


どうもよくわからないので、『现代汉语词典』で「」の字を引いてみました。以下のように説明されていました。

1 跟原数相等的数,某数的几倍就是用几乘某数;二的五~是十。
2 加倍;事成功~|勇气~增。


日本語ではどうかと思って、『広辞苑』を引くと、以下の説明でした。

①同じ数を二つに合わせること。「―にして返す」「倍加・倍増・倍旧」
②同じ数を何回か加えること。「倍率・倍数・三倍角」

ついでに漢和辞典まで引いてみました。

『漢和新辞典』(大修館) 「」の③
バイ。二ばい。また、ばいにする。「倍増」また、重ねる回数を表す。

『漢字源』(学研)の③
(バイニス)(動)二倍にする。ふやす。「雖倍賞累罰=賞ヲ倍ニシ罰ヲ累スト雖モ」(韓非)


さて、そこで私がいいたい結論です。

にして返す」という日本語、私もみなさんと同じで「100のものなら200にしてお返しをする」と理解しています。つまり「倍は2倍と同じこと」なのです。しかし、中国語は違うのですね。

中国語の「」は「跟原数相等的数」(元の数と同じ数)なのですね。そういう意識、この文字からは思い浮かびませんでした。ですから、中国語の「1倍」といういい方はしっくりこないのです。「」は「元の数と同じ数」だということを知らないから、間違ってしまうのです。


でもです。漢和辞典の説明から推測すると、現代中国語の「“とは元の数と同じ数のことである」というとらえ方は中国古代からのものではないのではないでしょうか。中国人の方がいつの間にかその意味を勝手に捻じ曲げてしまったのではないでしょうか。私たち日本人の方が「倍とは元の数の2倍のこと」という伝統的な正しい使い方をしているのではないでしょうか。 (間違いだといわれたので、悔し紛れに、腹いせに反論してみました。)
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by damao36 | 2008-10-27 18:03 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語110―比較文 述語・動詞の場合

比べるということは、ある人物または事物と別の人物または事物とを並べて、そのあり様の優劣をつけることです。ですから、述語は当然あり様の優劣を述べることのできる言葉で表現するということになります。そのような言葉とはどのような語句なのでしょうか。

まず物事の状態や性質を述べるはたらきをもつ語としては形容詞があります。「いい」とか「悪い」とか、「きれいだ」とか「きたない」とか、「高い」とか「低い」とかです。このような形容詞を述語とする比較文については前々回で述べました。

それでは人・物のあり様の優劣を述べる言葉は形容詞だけなのかというと、そうではありませんでした。以下のような動詞、動詞句も人・物のありようを述べることができるのでした。

Ⅰ 感情や心理活動、類似や能願
   爱     喜欢     讨厌     感动     伤心
   想     了解
   像
   会     能

Ⅱ 数の増減
   增加     减少     提高     降低

Ⅲ 程度やレベルを表すVO連語
   有钱     有学问
   没有能力  没礼貌
   解决问题  节省能源  浪费金钱

Ⅳ 「動詞+様態補語」
   吃得多    跑得快   说得流利   做得好
 

 
それではこのような動詞、動詞句を用いた動詞述語文となる比較文の例を挙げておきます。

 1 我比你更喜欢。 Wǒ bǐ nǐ gèng xǐhuán。
     I like it better than you do. (私はあなたよりもっと好きです。)
   2 妹妹比我像妈妈。 Mèimeibǐ wǒ xiàng māma。
     My sister resembles my mother than I. (妹は私より母さん似です。)
   3 我比他会开车。 Wǒ bǐ tā huì kāichē。
     I can drive better than he dose. (私は彼より運転は上手です。)


  4 我的体重比去年增多了。 Wǒ de tǐzhòng bǐ qùnián zhèngduō le。
     My weight has increased over the last year. (私の体重は去年よりも増えました。)


  5 他比我有钱。 Tā bǐ wǒ yǒuqián。
      He is richer than I am. (彼は私より金持ちです。)
   6 他日益恢复健康。 Tā de gōngzī méiyǒu wǒ gāo。
      He getting better day bay day. (彼は日ましに元気になっています。)
   7 他没有你那么有钱。 Tā de gōngzī méiyǒu wǒ gāo。
     He is not as rich as you are. (彼はあなたほど金持ちではありません。)


 8 她比我多拿一倍的光盘。 Tā de gōngzī méiyǒu wǒ gāo。
    She has twice as many CDes as I do. (彼女は私の2倍のCDをもっています。)
   9 你和他谁跑得快?  Nǐ hé tā shéi pǎo de kuài。
     Who can run fastest of you and he ? (あなたと彼とどっちが早く走れますか。)
  10 你说汉语比他说得好。  Nǐ hé tā shéi pǎo de kuài。
     You can speak Chinese better than he does. (中国語はあなたの方が彼よりも上手です。)


は「動詞+様態補語」の例ですが、中国語の補語って、英語の補語とは違いますね。英語の補語は主語とか目的語の補足ですが、中国語は述語の補足ですね。としたら、中国語の補語は大きく述部に含まれる、と考えてしまった方がいいのではないでしょうか。
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by damao36 | 2008-10-27 06:16 | Comments(0)

体感中国語109比較文 「比」は介詞なのか動詞なのか

中国語比較文の代表的な構造は以下のようになっています。

A   比 B  C
(主語)   (状     語)   (述語)

」のところに「」がくることがあり、そのときは「有B那么C」に、「」がくるときは「跟B一样C」という形式になります。否定するときは「」、「」の場合は「」または「」を、「」の場合は「」を、「」、「」、「」の直前につけます。


比B」、「有B那么」、「跟B一样」の部分、「比」と「」は介詞(前置詞)ととって介詞構文ととり、述語がある状況・条件下にあることを示す状語ととっていいのでしょう。したがってこの構文はαになります。

しかし、「」はどうなのでしょうか。

」にはどの字書を見ても介詞という用法はないので、動詞ととるしかなく、そうするといわゆる“有”構文の一種とみなすのでしょう。そうすると述語が2つある連動文、SVOV’の構文になります。(V’は述語が動詞だけでない形容詞もあるということを示す記号です。)


でも、考えてみると、もともと「」は「比べる」、「」は「後を付ける/接近している」という動詞なのですから、「A比BC」文は「Aは くらべた Bと (そしたら)Cである」、「A有B那么C」は「Aは ある B あのように Cである」になるのですから、結局は「A跟B一样C」の「Aは 接している Bに 限りなく近く Cである」という構造といずれも基本的には同じということになるのではないでしょうか。


あえて私なりの結論をいうと、いずれも中国語の特色の1つである“述語2つ文”(VV’構造)とみてもかまわないということです。


それにしても使役文の「叫、让、使、请」は動詞と認められているのに、受身文の「被、叫、让、给」は同じ構造の文に思われるのに、どうして介詞なのでしょうか。同じように、比較文の「」は介詞でいい気がなんとなくするのですが、「」は動詞でもいいのではないのか、そんな疑問が消えないのです。


中国語の介詞と動詞の区別、どうつけたらいいのでしょうか。


≪つぶやき≫
介詞のほとんどが動詞からの借用でしょう。この介詞構文、英語の前置詞構文と違って、中国語は全部が状語(日本語の連用修飾語、英語の副詞句・節)になるようですね。

同じ状語でも時間語・空間語の場合、副詞の場合とこの介詞構文の場合とで、それぞれ違いがあり、特に介詞構文は違いが大きいのではないでしょうか。例えば否定文のときに否定語「」などは介詞構文の前にきます。ということは、状語に数えるこの介詞構文は実は述語の一部とすべきなのではないのか、と思ったりします。

英語に前置詞というのがあるから、中国語にもあるということで介詞なる品詞をたてているだけで、助動詞が英語でも中国語でも動詞の一種になっているように、本当は介詞も動詞の介詞的用法に過ぎない、そう考えてはいけないでしょうか。つまり、介詞構文は状語ではなく、“述語2つ文”(VV’構造)の前半と見る、そうした見方の方がわかりやすい、思いつきですですが、ふとそんな気がしたりしています。
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by damao36 | 2008-10-25 11:52 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語108―比較文 述語が形容詞の場合

比較文とは、ある事物・人物Aを別のある事物・人物Bと比べてどういう状態・程度なのかを表す表現です。

その比較文を守屋宏則氏の『中国語文法の基礎』に3つにパターン化してありましたので、それをもとに整理してみました。

Ⅰ A>B     Ⅱ A<B     Ⅲ A≒B     


それぞれの型の表現形式を整理すると、以下のようになりました。

Ⅰ A>Bの表現
 ① AはBよりCだ。                ABC
 ② Aは最もCだ。                 A
 ③ Aは誰よりも最もCだ。            A比谁都


Ⅱ A<Bの表現
 ① AよりBの方がCだ。              A不如BC
 ② AはBほどCではない。            A没有BC
 × AはBにくらべてCであるわけではない。  A不比BC


Ⅲ A≒Bの表現
 ① AはBくらいCだ。                A那么
 ② AはBと同程度にCだ。             A一样
 × AはBにくらべてCであるわけではない。  A不比BC



A>B型のマーカー語は「」ですが、英語の最上級に当たる表現は「」(副詞)とか「比谁都」とかになります。その否定形であるA<B型は「不如」(動詞)と「没有」で表現します。また、「不比」というのもあります。

A≒B型は「有~那么」と「跟~一样」、「不比」はここにも入ります。


それだは、「彼の給料は私より高い」の比較文バージョンをあげておきます。

Ⅰ A>B
1 他的工资比我高。

  His salary is higher than mine. (彼の給料は私より高い。)
2 他的工资比我高一点儿。
  His salary is a little higher than mine. (彼の給料は私よりちょっと高い。)
3 他的工资比我高500元。
  His salary is five hundred RMB higher than mine.  (彼の給料は私よりより500元高い。)
4 他的工资比我高得多。
   His salary is much higher than mine.  (彼の給料は私よりずっと高い。)
5 他的工资比谁都高。
  His salary is the highest of everyone. (彼の給料はだれよりも高い。)
6 他的工资在我班里最高。
  His salary is the highest in our group. (彼の給料は私たちの中では一番高い。)
7 他的工资最高。
  His salary is the highest. (彼の給料は一番高い。)


がこの型の基本形です。まずはこの形式をしっかり頭にたたきこんでおきましょう。

は述語形容詞の後に程度補語、数量補語、状態補語のついた文で、その状態が具体的にはどの程度、回数、状態なのかを示します。よく形容詞には程度を示す副詞「」、「」、「非常」などがつきますが、これらの副詞は絶対的な程度を表す副詞なので、直接比較文の述語・形容詞につけると矛盾が生じるので、ここは補語表現で示すことになります。

でも、、「~」(more)とか「~」(yet)、「稍微」(a little)とか「略微」は相対的な程度を表す副詞なので、直接述語・形容詞につけられるそうです。

は英語の比較最高級の表現です。


Ⅱ A<Bの表現

8 他的工资没有我高。
  His salary is not as higher as mine. (彼の給料は私ほど高くない。)
9 他的工资不如我高。
  My salary is higher than herss. (彼の給料より私の方が高い。)
10 他的工资不比我高。
   His salary is not as high as mine. (彼の給料は私に比べて高いわけではない/同じくらいだ。)



比我高」の否定文です。このは「有我高」(有している 私の給料額と同じ額を)を「」(ゼロ)で否定しているので、「ゼロ×(有している 私の給料額と同じ額を)=ゼロ」という計算式が成り立ち、「私の給料額と同じ額を 有していない→私ほど高い額ではない→私の方が高い」、つまり全否定の意味になります。

9は古文の名残でしょうか。有名な格言に「百问不如一见(Seeing is beleving.)というのがあり、日本の漢文では「百聞は一見にしかず」と「不如」を「しかず」と訓じ、その意味は「及ばない」となりますが、それと同じで、ここは「私には及ばない→私の方が高い」の意味になります。(

10の文は同様比我高」の否定文です。の文に「」という否定の副詞がついたでけですので、形式上はよりもに近いといえます。しかし、意味はちょと複雑です。

この文は「」という副詞が「比我高」を否定しています。「(比べる 私の給料額と)」を「」といっています。つまり、「私の給料額と比べることはいけない/
比べられない/比べるほどのことはない」といた意味があり、聞き手が「彼の方が給料高いのでは」と思い込んでいるようなときに使うと、「どんぐりの背比べですよ」のいみになります。したがって、文脈によっては、「彼は私とほとんど同じ高さだ」という意味にもなり、また「彼は私よりも低い。」という意味にもなるので、注意が必要な文です。(Ⅲ A≒Bにも入れています。)



Ⅲ A≒B
11 他的工资跟我一样高。 

   His salary is as high as mine. (彼の給料は私と同じくらいだ。)  
12 他的工资有我那么高。    
   His salary is as high as mine. (彼の給料は私と同じくらいだ。) 
10 他的工资不比我高。
   His salary is as high as mine. (彼の給料は私に比べて高いわけではない/同じくらいだ。)
    
 
11の文は「~と同じくらい~」というのを「跟~一样~」という、ということを覚えておきましょう。「跟~」は「和~」としてもよいのですが、書きことばではなぜか「同~」を使っています。

12の文は所有の動詞「」を使った構文です。この文の特徴は代詞「那么」(あのように そのように)を使うことです。どうして述語・形容詞の前に代詞「那么」を使うのか、よくわかりませんが、発音上のバランスからなのでしょうか。はこの文の否定形ですが、否定文のときは「那么」はつけてもつけなくてもいいのだそうです。不思議ですね。また、「那么」の代わりに「这么」などを使うこともできます。


長くなりましたので、述語が動詞の場合など、次回で考えることにしました。
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by damao36 | 2008-10-23 18:28 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語107―存現文とは何か

中国語には存現文という私たちには聞きなれない文種があります。存在文といっている人もいるようですが、「ある人、またはある物の在が私たちの目の前に出したことを表す」という意味なのでしょう。

私もなかなか理解できなかったのですが、ある時、北京放送のコールサインで使われている「東方紅」という老革命歌の歌詞の一節、「中国出了个毛泽东」が存現文だと気づいて、それからはなんとなく理解できてきました。

东亚病夫」と揶揄されてきた黄色い大地に毛沢東という偉人が現れて中国の未来に光を与えてくれた、ある空間にある人物(時にはある物体)が忽然と現れる、その状況を表現するいい方がこの存現文なのです。

ですから、まず語り手、聞き手が気がかりな空間(時には時間)が広がっていて、そこにある人物(物体)が登場する、そういう順序でこの文は成り立っています。

    時間語/空間語 + 動詞 +人/物
     (状           語)     (述  語)  (主   語)


それではこの文種を存在出現消失と3分類して、それぞれの具体例を挙げておきます、
      
存在  
  桌子上有一本书。  Zhuōzi shàng yǒu yì běn shū。
  There is a book on the table.   (テーブルの上に本があります。)

  上午下了一阵大雨。  Shàngwǔ xià le yí zhèn dà yǔ。
  It rained heavily in the morning.   (午前中に大雨が降った。)


出現  
  千里走单骑。  Qiānlǐ zǒu dān qí。
  Riding along thousands of miles.  (単騎、千里を走る。)

  早上来了一个电话。  Zǎoshang lái le yí ge diànhuà。
  You had the telephone this morning.   (朝電話がありました。)


消失  
  我们班里走了一个朋友。   Wǒmen bānli zǒu le yí ge péngyou。
  It changed one's school from our one person classes.
  (私たちのクラスから1人転校した。)


さて,上の例文からどのようなことが確認できるかを整理しておきましょう。

1 文頭に必ず空間語か時間語がきます。

2 述語は動詞です。動詞の後には人か物を示す名詞がきます。「中国語は動詞の後ろの名詞
  は全部賓語だ」と前回はいいましたが、これは例外で主語だと考えます。したがって、1の時
  間語/空間語は状語です。

3 この主語には、“”や“一本”、“一阵”、“一个”というように数助詞がついています。目の
  前に現れた人・物は必ず具体的な数えられるものだからです。しかしこの人・物は語り手に
  とっても聞き手にとっても意図せずして出現した、当然新しい情報でなければなりません。
  英語の「There is~」構文と理屈は同じです。

4 存在を表す述語動詞はなんといっても“”が代表ですが、でも、たいていの動作動詞が
  出現消失を表すことは可能です。ただ、1語だけでは出現消失の意味を十分に表せ
  ないこともあり、“”以外の動詞はたいていその語の後ろに“~”、“~”という持続
  消失を表すアスペクト助詞をつけたり、“~”、“~进来”、“~过来”などの方向を示す
  補語を補ったりしています。


ところで、2で「動詞の後の人・物を示す名詞は主語である」というようなことをいいましたが、多くの文法書は目的語とし、しかしここは意味上の主体ですと持って回ったいい方をしています。「There is~」の英文法の説明もそのようなので、それでいいとも思いますが、「There is A」というのは「A is there」を強調した倒置表現だという説もありますので、それにならって、中国語的発想としてまずは話題の舞台である時間・空間語を先にしてしまった、一種の倒置表現だと、面倒くささもありますが、私はそのように割り切って理解することにしました。


なお、私たちが日常使っている漢字熟語(日本語の漢語)に存現文的熟語も結構あります。意味をとるときは、下の漢字が「~が」となって、日本語では迷うことなく主語ですね。

開花     降雨     積雪     発芽     停電     有人     無人     
有害     無害     出火     出血     満潮    立春  
   
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by damao36 | 2008-10-21 14:16 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語106―賓語イコール目的語ではない

英語の第1文型の例文を眺めていたら、こんな例文がありました。

    I live in Shanghai. (私は上海に住んでいます。)

私はこの文は第3文型SVOではないのかと思ったのでしたが、この文はSV型だそうで、「in Shanghai」はVである「live」を限定する副詞句なのだそうです。

in Shanghai」の部分、日本語だと「上海」になるので、「~に」とか「~を」とかあると、目的語と思ってしまうのですが、調べてみると日本語文法には目的語という用語は正式にはなく、この「~に」はニ格の格助詞で、その意味は「在りか受け手到達点変化の結果目的所有者行為の対象」と、日本語ネイティブの私もお手上げの多彩なはたらきがあるとのことです。


それでは中国語はどうなのでしょうか。まずは以下のように訳してみました。

    我 住在 上海。

」はもちろん主語。動詞は「住在」。この複合動詞は「住む」という意味の動詞「」と、直前の行為が存続しつづけているている意味の動詞「」がドッキングしたもので、これで「住んでいる」という意味になっています。なお、このように直前の行為のその後を示す用法を、中国語では補語と呼んでいます。

それでは動詞の後の名詞「上海」は文法成分の呼び名でいうとどうなるのでしょうか。

答えは「賓語」でしょう。日本で刊行されているほとんどの中国語文法書の用語に従うと目的語です。なぜ英語のように副詞句ではなく、賓語(目的語)なのかというと、中国語では動詞の後にくる名詞は、「動詞+名詞」の構造で後ろにある名詞は、全部賓語と呼ぶことにしているるからです。ですから、この中国語文は英語の第3文型に相当するSVOの構造なのです。


体感14でもふれたことなのですが、「私は日本人です。」という日本語の名詞述語文、英吾と中国語ではどうなのか、もう一度取り上げてみるととにします。

    I am a Japanese.
     S   V        C

    我 是 日本人。
     S   V     O

英語の「a Japanese」はS=Cが成り立つので、これは主語を補足している言葉だとして補語と呼んでいます。

ところで、中国語の場合は、「我住在上海」のところで説明したように、中国語の補語というのは、例えば「」という行為を「」で補っているように、ある行為・動作の結果などを示す語句を補語と呼んでいるのです。

ある行為・動作をしてすぐ後にその行為・動作の結果や程度などを別の動詞、動詞句、形容詞で表すという表現動詞を補足する述部表現、これもまた中国語の大きな特色なのです。そういた表現を中国語では補語と呼んでいるのです。

そこでもう補語という語は使えませんから、S=Cの関係にある英語の補語も、V→Oの関係になる目的語も、要するに「動詞+名詞」の構造の場合、動詞の後にある名詞(当然句・節も含む)を賓語と呼んでいるのです。 (きっとそうだと、私は推測しているのです。)
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by damao36 | 2008-10-20 10:43 | 中国語 | Comments(0)

体感80―テンスとアスペクト(时态和动态)

英文法の全体像について慶応大学の田中茂範先生は「コトの世界を扱う動詞の文法、モノの世界を扱う名詞の文法、出来事を取り巻く状況を扱う副詞の文法があり、それぞれ動詞チャンク、名詞チャンク、副詞チャンクを表現することができる。……英文法とはチャンクの作り方だ。」(『文法がわかれば英語は分かる!』NHK出版)と述べています。

中国語だってきっとそうで、「副詞+助動詞+動詞+目的語/補語+語尾」などが中国語の動詞チャンクで、主語や目的語のかたまりが名詞チャンク、日本語の連用修飾語の一部と重なる状語が副詞チャンクということになるのでしょう。

この3つのチャンクの中で一番むずかしいのは英語も中国語もやはり動詞チャンクだと思いますが、今日は英語の動詞チャンクと中国語のとではどこが一番違っているのだろうかということを考えて見ました。

その結果、それはテンス(時制 中国語では時態)とアスペクト(動態)の調整ではないのかと想定し、英語のテンス表現を中国語と並べてみることにしました。

一般動詞 
1 現在形         He works.                 他工作。
  現在完了        He has worked.             他工作。
  現在進行形      He is working.              他在工作。
  現在完了進行形    He has been working.        他一直在工作。  
  
2 過去形         He worked.                他工作过/了。
  過去完了形      He had worked.             他在工作过。
  過去進行形      He was working.            他以前工作过。
  過去完了進行形   He had been working.        他以前在工作。

3 未来形         He will work.                他去工作吧。
  未来完了形      He will have worked.          他在工作吧。
  未来進行形      He will be working.           他在工作吧。
  未来完了進行形   He wil have been working.     他以前工作了吧。
        

be動詞
1 現在形          I am a student.             我是学生。
  現在完了形       I have been a student.       我还是学生。
  現在進行形       I am being a student.         我正在做学生。

 
2 過去形          I was a student.             我以前是学生。
  過去完了形       I had been a student.         我以前是学生。
  過去進行形       I was being a student.        我以前做学生。


3 未来形          I will be a student.           我做学生吧。
  未来完了形       I will have been a student.     我做了学生吧。
  未来進行形       I will be being a student.       我做学生吧。




上記の表のテンスは「現在、過去、未来」と3つにわけてあります。しかし、英語には「未来」形はないというのが正しいのだそうです。なぜなら、動詞に現在形、過去形はあっても、未来形はないからです。仮に「will, shall」を未来形とすると、「be going to」(~するつもり)や「be about to」(~しようとしている)といった表現も未来形というべきで、英語の未来表現と見られていたものはあくまでも現時点からの願望、推測であるからだそうです。でも、一般には便宜的に3つのテンスとしているので、私もそれに従いました。


さて、この<英中テンス相対表>、中国語訳かなりあやしいのですが、中国語のテンス表現、時態表現について、なにかわかったことがあったでしょうか。
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by damao36 | 2008-10-19 18:04 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語84ー副詞とはなんぞや

中国語は「だれが/何が+いつ・どこで+~する+何を」の語順で、文法成分では「主語+状語+述語+賓語」ということになるということを、体感77で書きました。

今日は英語の動詞チャンク(chunk 大きな塊)は「助動詞+middle副詞+動詞」だという田中茂範さんの説(『文法がわかれば英語は分かる!』)に倣って、中国語の副詞チャンクと述語・動詞チャンクをまずは以下のように想定してみたのですが、行き詰っております。

<状語チャンク> 時間詞+場所詞+副詞+介詞構文
<動詞チャンク> 副詞+助動詞動詞動態助詞+補語+語気助詞


問題は状語の副詞のところなのです。副詞には否定の副詞「」、「)」、「」などをはじめ、程度範囲頻度時間様態語気といろいろな意味をもつ語があり、動詞を限定するのですから当然動詞チャンクに入れなければならないと思うのです。

しかし、介詞構文をもつ語の否定文は否定の副詞は介詞構文の前にくるということもあるので、副詞+介詞構文をも動詞チャンクに入れるべきではないのかと思われてきたのです。そうすると中国語の状語チャンクは時間詞+場所詞だけとなり、果たしてそれだけで中国語の状語(副詞)チャンクはいいものなのか、といま迷っているのです。


ところで、中国語の「今天」とか「明天」とかいう時間詞、日本語もそうなのですが、辞書には名詞とだけしか書いていません。

それなのに英語ではtodaytomorrowももちろん名詞の用法も有りますが、副詞としての用法もあると書かれています。例えば「It’ s nice today」(今日は天気がいい)という文が副詞の例文として挙げられています。


また、『Why?にこたえるはじめての 中国語の文法書』(相原茂 他著 同学社)を見てみたら、状語のところに一部の単音節性質形容詞の語例として「」と「」、二音節性質形容詞として「完全同意」と「清楚地写了」、状態形容詞として「热热闹闹(地)过日子」、「静悄悄(地)坐着」という例が出ており、中国語の形容詞は動詞も修飾限定するのかとびっくりしました。もしそうなら、上記のチャンク表に副詞と並べて形容詞も付記しないといけないことになります。(私としては下線部の語は副詞とした方がスッキリするのですが。)

そういえば日本語形容詞も連用形というのがあって、形容詞は動詞も修飾するみたいです。副詞は動詞しか修飾限定しないと思い込んでいたのは、英文法の影響なのでしょうか。

改めて「中国語や日本語の副詞とはなんぞや」、「形容詞と副詞の違いはいづこにありや」と問い直さなくてはならないみたいです。


≪追記≫
ホンコンで買った『牛津精選 英漢・漢英詞典』(商務印書館)という小辞書を愛用しているのですが、それを引いて見てみたら、「快」も「慢」も「完全」も副詞という項がありました。改めて日本の中国語辞書を引いてみたら、中型辞書にはたいてい副詞の項がありありました。「動詞を修飾・限定するのは副詞」という今までの考えていいのではないでしょうか。
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by damao36 | 2008-10-19 18:01 | 中国語 | Comments(0)

体感中国語105―形容詞述語文、名詞述語文、動詞述語文とは

日英中の基本文型を簡単に、しかもかなり正確にいうとしたら、以下のようになると前回書きました。

「基本文型を簡潔にいうと、日本語はSP、英語はSVO/CSVOO/C、中国語はSPSVO、それにSVOVOです。」
(中国語の補語は英語の補語とは違って動詞の補足語ですから述部Vに含めます。中国語のSVOVOの後ろのVは形容詞がくることもあります。また、Oは省略自由です。)


そこで今日は日本語と中国語にあるSP文型について考えてみることにしました。

まず日本語ですが、モントリオール大の金谷武洋さんの書かれた『日本語には主語はいらない』(講談社選書メチエ)の表紙には、タイトルの下に以下の文言が印刷されています。

愛らしい」「赤ん坊だ」「泣いた」―
日本語の基本文はこの3種で必要十分である。
英文法の安易な移植により生まれた日本語文法の
「主語」信仰を完璧に論破する。
すべての日本語話者、必携の書。


私はまだ「日本語には主語はいらない」とまではいいきれないでいるので、「基本文型を簡潔にいうと、日本語はSP」としましたが、このSPの具体的文例「愛らしい」、「赤ん坊だ」、「泣いた」の3つがどう違うかを、まずは説明しておきましょう。


1つ目の「愛らしい」は形容詞です。ですから、これは日本語文法でいわれる形容詞述語文です。2つ目の「赤ん坊だ」、「赤ん坊」は名詞ですから、これは名詞述語文です。3つ目の「泣いた」の「泣く」は動詞ですから、これは動詞述語文です。要するに日本語というのは形容詞述語文名詞述語文動詞述語文の3種類あるということです。

英語はどうなのかというと、ご存じのように動詞述語文だけです。中国語はというと、これは日本語と同じで、形容詞述語文名詞述語文動詞述語文の3種類になります。


それでは具体的に考えることににしましょう。

(形容詞述語文)  「愛らしい
           She is pretty.
           她很可爱。

(名詞述語文)   「赤ん坊だ
          There is a baby.
          是小娃娃。

(動詞述語文)   「泣いた
          She cried.
          她哭了。


まず1つ目の形容詞述語文からわかることは、英語の形容詞というものは日本語の形容詞の連用形と連体形のはたらきしかなく、終止形のはたらきはないということです。ですから、述語になるときはどうしても「~デアル」という意味のbe動詞が欠かせないということです。

中国語はというと、日本語のように連用形、連体形、終止形といった活用はしませんが、そのままの形で述語になる、つまり1つの形容詞の中に「~デアル」(~の状態である。~の性質である)という意味を含んでいるということになります。


2つ目の名詞述語文ですが、日本語の名詞述語文を英語に訳したらたいてい「be動詞+名詞」という形式になるということです。be動詞を必要としますから、当然動詞述語文で、第2文型のVC型です。

中国語に訳すときは、たいてい中国語のbe動詞「」を使って、「是小娃娃。」というように訳されます。「」は動詞ですから、これも動詞述語文で、しかし英語とは違って、なぜか第3文型のVO型になります。

それなら中国語の名詞述語文というのはどのような表現の文なのでしょうか。

「いま8時です。」(现在八点。)とか、「合計1000円です」(一共一千块钱。)とか、「今年で50歳です。」(今年五十岁。)とかいった、日時時間年齢物価などの数量天気出身地などを説明するときに使われるいい方です。また、この中国語の名詞述語文もなぜか日本語に似て、多くは主語が省かれてしまいます。


3つめの動詞述語文についてはよくある文種ですから、説明は省きます。


なお、中国語の形容詞述語文はSP型だけでなく、SVOVO型の変形バージョンSVVとかSVOVとかいう型にも表れます。表記が面倒なので、この「変形バージョンの最後のVが形容詞のこともある」ということを、別途認識しておくことにしましょう。
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by damao36 | 2008-10-19 11:12 | 中国語 | Comments(0)