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体感中国語140―日本語の切り取り、中国語の切り取り(1)

 この世で起こる森羅万象は始めがあり、真ん中があり、終りがあります。きっかけがあり、経過があり、結末があります。仮にこれを漢語で表記すると因相行相果相、簡単に言うとがあるということになります。

 ところで、ISS通訳センター顧問兼主任講師の王浩智さんは、そうしたこの世の現象を切り取って語として表現するとき、日本語はきっかけであるを、中国語は真ん中と終わりのの部分に光を当てて表す傾向があると指摘しています。(王浩智著『日本語から学ぶ中国語・中国語から学ぶ日本語』(東京図書)


それではその具体例を挙げておきます。

入院       中国語は「住院」。もう病衣姿で、病院生活中です。
採血       「験血」。血液を顕微鏡で覗く断片です。
ご臨終です   「過去了」。もう過去の人です。
ふりかけ     「拌飯菜末」。「ご飯に混ぜるおかずの粉末」と具体的です。
はさみ      「剪刀」。「はさんで、切って、分ける」刃物です。
お風呂に入る  「洗澡」。ゴシゴシ洗っています。「温泉に行く」「は「洗溫泉泡溫泉」です。
乳母車      「嬰兒車」。車の中には赤ん坊がいます。

 また、日本語の料理名についても「茶碗蒸し/土瓶蒸し/鉄板焼き/網焼き/赤飯/お浸し」など、中身はまったくみえないとのこと。中国名だと「蒸雞蛋糕/陶壺炖菜/用鐵板煎肉(魚,菜等)/用鐵絲網烤肉(魚,菜等)/紅小豆糯米飯/涼青菜」となり、食材と調理法も何となく推測できます。

 ですから、日本ではテレビで、料理を作ったことのない若い人をつかまえて、例えば「もみじおろし」(蘿卜辣椒泥)を作らせ、見事に失敗するのを面白がる、「噂の東京マガジン」という人気番組がありますが、中国だと成り立ちにくとか。

 あいさつ文の常套語、「近くにおいでの際は、ぜひお立ち寄りください」、コンビニなどに掲げている「警察官立ち寄り所」も因相だけで、には触れていません。これをそのまま中国語に直訳して「有空歡迎來我家」、「警察路過的地方」としたのではイメージ不足で、「違和感を通り越して怪しまれる」とか。「有空歡迎來我家作客」、「本店24小時受警方保護」と訳すべきなのだそうです。

 中国の民間新聞には出会いを求める「徵婚啟事」がよく載っていますが、日本語なら「趣味の合うかた、ぜひご連絡ください」とでもいうくらいのところを、「希望找同道合的男性(女性)為伴共度終身」などと書くそうです。まだあってもいない相手に「一生の伴侶として迎えたい」と最初から宣言しないといけないのなら、私なんかもう最初からもう尻ごみですね。そのせいか、日本の演歌は「」という語が多いけれども、台湾や大陸のホップスは「」と「」という語が圧倒的なのです。

 また、こんな例もありました。

 日本での缶コーヒーのコマーシャル、「できたて」、「いれたて」、という言い方に感心していたら、やがて「挽きたて」、「煎りたて」が現れ、ついには「手摘み豆ブレンド」というのまで売り出されて、王さんびっくりしたとのこと。

 どうやら日本語は因相を遡る方向に向かう傾向があるのに対して、中国語は行相果相の方向に向かう傾向があり、二つの言語のカーソルの方向、違っているところが多くあるのでしょう。

 中国語のダイエットの宣伝文句に以下のような例にがあると聞いて、思わず吹き出してしまいました。

(因)節食→(行)減食→(果)瘦身骨感美


(王さん、「靴下」という熟語を見て、「靴の下は地面じゃないか」と思ったそうです。)
by damao36 | 2009-02-11 14:35 | 中国語 | Comments(0)
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