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199―日英中基本文の文型比べ

 『日本語に主語はいらない』(講談社選書2002)の著者金谷武洋氏の挙げた,日本語の5つの基本文,「あの子は(が)中学生だ。」(SN文)「あの子は(が)かわいい。」(SA文)「赤ちゃんは(が)泣いた。」(SV文)「あの女の子は歌を歌う。」(SV文)「あの男の子は背が高い。」(SSA)を英語と中国語ではどういうのか,まずは訳してみました。 
1 The boy is a student at junior high school. (SVC文)
2 The girl is pretty. (SVC文)
3 The baby cried. / The baby is crying. SV文)
4 The girl sings a song. (SVO文)
5 The boy is tall. (SVC文)
1 他是个中学生。Tā shìge zhōngxuéshēng. (SV文)
2 那女孩很可爱。 Nà nǚhái hěn kěài. (SA文)
3 小娃娃哭了。Xiǎowāwā kū le. (SV文)
4 那女孩唱歌。Nà nǚhái chàng gē.(SVO文)
5 那男孩个子很高。 Nà nánhái gēzi hěn gāo. (SSA文)

 ご覧のとおり,英語の場合は必ず動詞(ゴチ体)が用いられています。つまり,英語はすべて動詞述語文です。中国語は1・3・4が動詞述語文で,2・5が形容詞述語文です。○○述語文という分け方をすると,中国語が日本語と違うのは1だけです。日本語は名詞述語文でしたが,中国語は動詞“是”があるので動詞述語文です。英語5文型に倣った分け方をすると,日本語・中国語ともに動詞述語文である1・3・4の4が日本語とは違います。日本語はすべてSV文でしたが,中国語の4はSVO文です。これは英語の4と同型で,英語第3文型です。英語の目的語,中国語の賓語に当たるC,日本語は連用修飾語という修飾成分の一部ですから,文の基本的な構成要素(文法成分)からは外れてしまいます。
 
 ところで、英語の1・2・5は日本語はもちろん中国語にも見かけないSVC文という文型です。このCは補語といい,文構成の骨格の一つとなる文法成分で,このSVC文型は英語第2文型です。この補語は1のように<be動詞+名詞>と2・5のように<be動詞+形容詞>の2形あります。<be動詞+名詞>のこの名詞は主語の属性を示します。<be動詞+形容詞>の形容詞は主語の性質・状態を示します。つまり,be動詞の前にある名詞(主語)の属性や性質・状態を補足説明する成分です。
S=Cの関係です。

 さて,日本語の5つの基本文,英語5文型の中の第4文型SVOO文と第5文型SVOC文が見当たりません。英語のSVOO文とSVOC文,日本語,そして中国語ではどうなるのか,その用例を挙げてみました。
6 He teaches us Chainese. (彼は私たちに中国語を教えている。)
7 We belive him to be honest. (私たちは彼を正直だと信じています。)

 日本語は目的語Oに該当する部分は既述したように連用修飾語の一部になります。つまり,日本語文の下線部は述部を修飾する修飾成分なのです。ですから,Oは消えて,結局SV文になるのです。

 中国語はどうなのでしょうか。
6 他教我们汉语。Tā jiào wǒmen Hùnyǔ.
7 我们相信他很老实。Wǒmen xiāngxìn tā hěn lǎoshí.

 6は英語と同じSVOOの二重賓語文です。(“向我们教汉语”とすることもできます。この場合は“向我们”が日本語の連用修飾語に当たる状語になり,修飾部分ですから基本構造からは外れて,単なるSVO文です。)

 7の中国語文は単なるSVO文です。このO,つまり中国語文では“他很老实”の部分で,ここの構造は<“他”(主語)+“很老实”(述語)>の,複文構造の私が勝手に名づけた心中文(SVO(SV)文)です。英語なら、関係詞構文です。(We belive him that he is honest.)

 なお,英語例1・2・5はSVC文で,このCはS=Cという関係だと説明しました。しかし,SVOC文である7のCはO=Cの関係です。<him =be honest>という目的語の補足説明語です。

 さてさて,もう一つ疑問があります。日本語文の1は名詞述語文で,この文は中国語では動詞述語文でした。ならば,中国語には名詞述語文はないのかという疑問です。

 調べてみると,中国語にも名詞述語文はたくさんありました。しかも日本語の場合は名詞述語文とはいっても「~である」という補助用言の助けが必要ですが,中国語の名詞述語文は以下の例のように正真正銘の名詞ばかりで構成された文です。
8 他三十八岁。 Tā snāshíbā suì. (SN文)
9 今天星期五。 Jīntiān xīngqī wǔ. (SN文)
8 He is thirty(yeas) old. (SVC文)
9 Today is Friday. (SVC文)
8 私は38歳だ。 (SN文)
9 今日は金曜日です。 (SN文)

 どうやら中国語の名詞述語文は日本語でも名詞述語文になります。しかし,日本語の名詞述語文がすべて中国語の名詞述語文になるとは限りません。年齢とか時間,数量,天気,出身地などを他人から聞かれた時の答え,これらは基本的にワン・ワードで済むことです。そのような場合に中国語は名詞述語文になる,どうもそのようなことです。(もちろん動詞を使って“他是三十八岁。”“今天是星期五。”と言ってもいいでしょう。)

 ところで,「私は38歳ではない。」「今日は金曜日ではない。」と否定表現にしたらどうなるのでしょうか。日本語の「ない」は形容詞ですから,形容詞述語文になります。中国語は“不”だけでは不自然で,正しくは“不是”と“是”を使わざるを得なくなり,名詞述語文では表現できません。

 あ,もう一つ大事な事を落としていました。それは中国語には英語や日本語の文法成分にはないがあるということです。中国語の補語という成分です。英語の補語はS=C,O=Cでしたが,中国語の補語は述語動詞・形容詞の補充成分です。<V/A+C>で,私は述部の構成要素と考えています。中国語にしかない成分ですから,もっとも中国語らしい表現でしょう。長くなりましたから,補語については別途考えることにしましょう。
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by damao36 | 2011-10-12 10:25 | 中国語文法 | Comments(0)
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