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197―単語(複合語)と連語

 中国語の音節総数は<21子音×36母音×4声>による組み合わせで,総数約1340音節もあります。その音節を表記する漢字は原則として一字・一音節・有字義です。ただし,現代中国語ではすべての漢字が単語となるわけではなく,単なる付加的要素の文字も多数です。

 音節総数約1340というのは日本語の13倍もの音節数ということになりますが,だからと言って,この世の森羅万象を1音節だけで述べつくすことはやっぱりとっても不可能です。中国語も時代と共に音節の組み合わせによるいろいろな単語が生みつづけられてきました。中国語学者の上野恵司氏の説によると,この約1,300ほどある中国語の音節,その音節を2つ並べた2音節の組み合わせというのは, 理論的には100万組にも上るのだそうで,だからでしょうか,2音節語,2字漢字語が中国語は多く存在します。名詞・動詞・形容詞は2字語が圧倒的多数を占めています。

 ところで,現代中国語の発音や字義・語義などの規範となる《现代汉语词典》の“前言”を読むと,そこには“词典中所收条目,包括字、词、词组、熟语、成语等,共约六万五千余条。”と書かれています。この前言中にある“字、词、词组、熟语、成语”という5語,まずは以下のように解して,「字典の中には親文字・単語・連語・慣用句・成語など,全部で六万五千項目余りを収める。」と訳しました。

≪“字、词、词组、熟语、成语”の定義≫
親文字(字):いわゆる字書の見出しの漢字。親字とも言う。中国語の“字典”類は古くは
       日本の漢和辞典のように部首順であったが,いまはABC順に並び,その親字
       の下に“词、词组、熟语、成语”が同じくABC順に配列されている。現代中
       国語の漢字はすべてが単語ではなく,単語の一要素である形態素,つまり付
       加的要素の漢字が多数存在する。
       
単語(词) :「文法上の意味・職能を有する,言語の最小単位。」(広辞苑)である。単に
       語とも言う。「文法上の意味・職能」とは文の中である役割をする最小の
       音形,形態素を有すること。
 A <音節数による分類> ①単音節語
                   ②複音節語
 B <形態素による分類> ①単純語
                   ②合成語  a重ね合成語
                            b付加合成語
                             c複合合成語=複合語
 C <詞と辞による分類> ①自立語(实词)(単独で用いられ,意味を有する最小単位。)
                  ②付属語(虚词)(単独では用いられないが,意味を有する最小単位。)
 ※詞は自立語(実詞),辞は付属語(虚詞)。付加的要素の漢字は当然そのどちらでもない。

連語(词组):単独で用いられる,意味を有する単語と単語の組み合わせ。ふつう句,フレ
       ーズを使うが,句,フレーズの定義はあいまいなので,連語を使うことにする。

慣用句(熟语):いわゆるイディオム,成句のこと。

成語(成语):;成句;ことわざ;故事成語。

※ 単語(词)の<詞と辞による分類>によると,まずは単純語と合成語に大きく分かれる。
 単純語は形態素(中国語は“语素”)が1つだけの語である。1文字漢字語の多くは単純
 語であるが,以下の例のように,複数漢字語の単純語もある。
 1.付加的要素漢字の組み合わせ 葡萄(ぶどう)  徘徊(うろつく) 朦胧(うつらうつら)
 2.区別詞            男  女  父  母  春  夏  金  銀
                   短期  長期  公人  私人  国立  私立
                  急性  慢性  天然  人為
 3.音訳の外来語        咖啡(コーヒー) 马拉松(マラソン)
 4.擬声語・擬態語       丁当(カチャン) 汪汪(ワンワン)
 5.感嘆詞            哎呀(アレー)  哈哈(アハハ)
 6.人名・地名・物名
※ 上記1の“葡”“萄”“徘”“徊”“朦”“胧”といった文字は,現代中国語では単用例
 がない。したがって,辞書の親文字に品詞の明示ができない。辞書によっては付加的要素
 の文字という意味で付という記号を付けている。現代中国語ではこのような付加的要素の
 漢字は意外と多い。
※ 上記2の漢字群は古典語または日本語としてはふつうに使われている。しかし,現代中国
 語では単独での用例はない。例えば“男”の場合は“男子”“男厕”,“母”の場合は
 “母亲”“母鸡”,“春”の場合は“春天”,“金”の場合は“金子”などと,後ろに別
 の文字(名詞)を付けて使用する。後ろの語を修飾する関係になるので,形容詞の仲間に
 数える。「区別詞」という独立品詞とする説もある。
※ 上記3の“咖”“啡”も付加的要素の文字。音のみで,字義をもたない字。“丁”“当”
 も同じ付加的要素の文字ではあるが,字義はある。ただし,字義とは無関係に漢字音のみ
 を利用した例。5も同じ。

※ 合成語とは「意味をもった最小の音形」である語素(わが国ではふつう形態素を用いる
 が,私には「語素」の方が理解しやすい)の組み合わせによる単語のこと。その合成語は
 以下のようにa重ね合成語 b 付加合成語 c複合合成語の3つに分けられる。
例:a 妈妈 奶奶 星星 娃娃 常常 个个 ( 看看 高高)
   b 第一 老虎 小王 大海  我们 椅子 花儿 现代化 出生率
   c 学校 电脑 运动 结婚 高兴 已经 提高 驾驶员 社会主义
※ 合成語のaタイプは同一字の重ね型で,重ね型動詞/形容詞/副詞である。bタイプは接頭
 辞または接尾辞をもつ語。接頭辞または接尾辞は意味をもってはいるが独立して運用でき
 ない付加的要素語の語である。単語の中ではcタイプの複合語がもっとも多く,もっとも
 ポピュラーな中国語の造語法になる。

※ 単語は大きく「単独で用いることができる」語(実詞)と「単独では用いることのでき
 ない」語とに分かれる。前者を中国語では“实词” (実詞),日本語文法では自立語ま
 たは詞,後者は中国語では“虚词” (虚詞),日本語では付属語,または辞と言う。
※ 《现代汉语词典》の分類では実詞は名詞・動詞(助動詞)・形容詞・量詞・数詞・代詞
 の6品詞,虚詞は副詞・介詞・連詞・助詞・感動詞・擬声語の6品詞である。(なぜかこ
 の《词典》には助動詞という品詞はない。能願動詞と見ているのであろう。副詞は単用す
 る例もあるので,実詞とする説もある。)

※ “词组”とは単語(词)と単語の自由な組み合わせ。ふつう句とかフレーズ(phrase)と
 か語句とか呼ばれている。時には節も含む。句・フレーズ・節というのは定義がわかりに
 くいので,また中国語の「詞組」という表記も私たちには理解しにくからであろうか,わ
 が国中国語学会では「連語」という呼称が最近は多く用いられてきている。
※ 単語の複合語と連語との違いは語と語の組み合わせが固定化されたものか,自由な結合
 かの違いである。語と語の結びつきの強度の違いである。複合語(単語)と連語の構造,
 つまり文字の文字の組み合わせはいずれも中国語法に基づき同じである。
※ 単語と単語の自由な組み合わせである連語には2字漢字語も多い。この場合は特に単語
 の複合語である2字の漢字語と混同しがちで,判断のわかれる語もある。例えば“結婚”
 “散歩”などの離合詞。今の辞書では1単語ととして出ているが,本来は<動詞+名詞
 (賓語)>の動賓連語である。“结过一次婚”(結婚歴が一回ある)と中間に他の語を挟
 んだり,「公園を散歩する。」を“散步公园”と後ろに賓語として“公园”を置くのこと
 はできず,“去公园散步”(公園を散歩する)と言わなくてはならないなど,一般の動詞
 とはあきらかに違う。単語の複合語とも連語とも言える。

※ “熟语”は日本語の「熟語」に比べると意味が限定されている。日本語の熟語はここで
 述べた単語の中の合成語,特に複合語の意味で用いることが多い。日中ともに「熟語」の
 定義はあいまいである。

※ “成语”の多くは四字熟語である。成語を日本語では故事成語ととらえて,今では陳腐
 な物言いになっている。しかし,中国語の感覚では物事を短い言葉で的確に表現する教養
 の高さを示すものとして,多用されている。
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by damao36 | 2011-09-22 08:05 | 中国語文法 | Comments(0)
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