日本語の述語は動詞と形容詞とが核になります。この動詞または形容詞を核とする述語の構造はどういう品詞の語からなっているのかというと,それは[動詞/形容詞+助動詞/助詞]の塊からです。
この塊を,最近の日本語を外国語として教える日本語文法では,これまでの学校文法とは違って,以下のように名づけてまとめて,教えています。(『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』フリーエーネットワーク) 否定形:未然形+助動詞ナイ 意向形:未然形+助動詞ウ/ヨウ 受身形:未然形+助動詞レル/ラレル 使役形:未然形+助動詞ウセル/サセル マ ス形:連用形+助動詞マス テ 形:連用形+接続助詞テ タ 形:連用形+助動詞タ タリ・タラ形:連用形+助動詞タリとタラ 辞書形:終止形・連体形(動詞の場合) バ形:仮定形+接続助詞バ 可能形:可能動詞・未然形+助動詞ラレル 命令形:命令形 否定形、意向形、受身形、使役形、マス形、テ形、タ形、タリ・タラ形、辞書形、バ形、可能形、命令形と,日本語の述語は12種類にわけ,SV型の日本語を身につけるには,この12種類の述語の型をマスターすることになるのでしょう。 それでは,英語の述部はどうなのでしょうか。 まず英語が日本語と違うところは,英語の述語の核は動詞だけだということです。だからでしょうか。英文法では述語という用語は使わず,動詞(verd=V)という品詞名をそのまま述語の位置にすえて説明しています。 そうなっている理由は英語述語の核が動詞であということ以外に,以下のような理由があると考えられます。 一つはSVO/SVC型である英語述部の核である動詞には主語の単数・複数とか,文全体のテンスを明示する独自の役割があるということです。 もう一つは動詞の前に助動詞や副詞が,その後ろにはbe動詞+形容詞とかbe動詞+動詞過去分詞とか,前置詞などが来るということがあります。 ですから,日本語の場合は[動詞/形容詞+付属語(助動詞・助詞)]の一文節を述語と定義してすっきりするのですが,文節という概念のない英語では述語という塊でとらえるとかえって複雑になる,だから述語という概念は採用せず,述語の核である動詞(V)で文構造を捉えることにしているのでしょう。 それでは述語という文法用語を使っている中国語のはどうなるのでしょうか。 まず中国語の述語となる語の品詞は日本語と同じで,動詞だけでなく,形容詞や名詞も単独で述語になることができます。 しかし,日本語と違って英語に似ているところもあり,助動詞や否定の副詞が動詞の前に来ます。また,述語の核となる動詞や形容詞の意味を補う補語という文法成分が述語の核である動詞/形容詞を後ろから限定します。に直接つながります。例えば以下のようにです。 [助動詞/副詞+動詞/形容詞]の例 1 我想吃蛋糕。Wǒ chībuliǎo le I’d like the cake.(ケーキが食べたい。) 2 我不吃早饭。Wǒ bù chī le。 I don’t eat breakfast.(朝ごはんは食べない。) 3 我不能吃生鱼片。Wǒ I can not like to eat Sasimi.(私は刺身は食べられない。) 4 你别快吃。Nǐ bié kuài chī。 Don’t eat fast!(急いで食べるな。) 5 你不要把这些巧克力全吃掉。Nǐ bié kuài chī。 Don’t eat up all those dchocolates.(このチョコレート,全部食べてはだめよ。) 6 这很/真/特别好吃。Wǒ bù chī le。 This is very delicious!(とってもおいしい。) 7 这太不好吃了。Wǒ bù chī le。 This is no delicious!(あまりにもまずい。) 8 这不太好吃。Nǐ bú yào chī le。 This is’nt too delicios.w(あまりおいしくない。) ・1は[助動詞+動詞],2は[否定の副詞+動詞]の例です。日本語の感覚からは述語でしょう。 ・3は「否定の副詞+助動詞+動詞」,4は[禁止の副詞+程度の副詞+動詞]です。3は述語として違和感は ありませんが,4は“快”が入っているので,違和感があります。 ・4は[否定の副詞+状態副詞+動詞]で1字程度の状態副詞なら述語としていいように思われます。 ・5は[S+否定の副詞+助動詞+“把”介詞連語+副詞+動詞]の構造です。2~3の否定の副詞は述語とし たので,ここも“不”と“吃”の間の“把这些巧克力・全”も述語に含めるとなると余りにも長すぎます。中国語 は“把”介詞連語の文を否定形にするときは,否定語をその前にもってくる構造です。もし否定語は述語とい う考えに立つなら,ここは述語が分断された例と考えるしかありません。 ・6、7、8の“好吃”は形容詞とされています。6の“好吃”の修飾語”很/真/特别”は述語に入れるべきでしょ うか。”真/特别”の二語は状語とすべきですが, ”很”が迷います。この”很”,しばしば実質的な意味を持た ず,“お飾りの很”なんていわれていますから,その場合は述語の一部とすべきなのでしょう。 ・7と8の“好吃”は形容詞とされています。いずれも[副詞+副詞+形容詞]です。否定の副詞の位置が違っ ており,7は全否定,8は部分否定です。7は程度の副詞”太“を除いて“不好吃”とした方が日本人としては 納得できます。8は“不好吃”の中に”太“があるので,違和感がありまが,中国語の述語は一字語程度なら 述語に混ざってもいい,そのように考えておきます。 [動詞+補語]の例 9 我吃饱了。Wǒ chī。 I’m full.(腹いっぱいです。) 10 我吃完饭。 Nǐ yǐjīng chīwánle wùfàn ma? I alredy had my lunch. (ご飯は食べ終わりました。) 11 我吃不惯。Wǒ chī。 I don’t like flavor.(私は食べつけていない。) 12 我吃不了了。Wǒ chībuliǎo le I’ve had enough.(もう食べられません。) 13 这菜吃得很香。Wǒ chībuliǎo le This food is very appetizing.(この料理,実にうまいなあ。) ・9と10は中心語は[動詞+動詞]で,後ろの動詞が前の動詞の動作の結果を表す補語になります。この9と 10の文型を9はSVC,10はSVCOとしていいものか,迷います。 ・11,12,13は連語となっている補語です。この場合は11,12, 13ともSVCの文型だとして迷いはありま せん。しかし,よくよく考えると,核となる動詞/形容詞と補語を切り離すことは述語のないように何か違った 化学反応を引き起こすようで,はたして妥当なのか疑問です。 上記の例文解説で述べたように,中国語は英語同様,述語の範疇を問題点なく設定することは,意外と難しいようです。 ならば,英語と同じく述語という用語は用いなければよさそうですが,述語の核になる語が英語のように動詞に限られてはいませんので,そこで日本語と同じように述語(中国語では”谓语wèiyǔ”)という用語を用いている,私はそのように感じられるのです。
by damao36
| 2010-12-04 15:37
| 中国語文法
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