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「菅」には「姦」の意味もある

 「北京ランダム・ウォーカー」というタイトルで中国情報を伝えている元『週刊現代』副編集長で現講談社(北京)文化有限公司副経理の近藤大介氏が、鳩山前首相と菅新首相の苗字についての中国人の反応を書いていました。
  http://gendai.ismedia.jp/articles/-/662?page=3「官という名前から中国人が連想する『草菅人民』とは」

 近藤氏は、昨年9月に鳩山政権が誕生した時、「アジア重視外交」を掲げた鳩山首相に中国人は拍手喝采を送っていると思い、すでに引退した旧知の中国人元外交官に鳩山首相の心象を聞いてみたそうです。すると、意外な答えが返ってきたそうです。
 「中国はね、ご承知のように漢字の国なんだよ。『鳩山』という名前を聞いて、大方の中
  国 人は、一人の人物を思い浮かべる。それは文化大革命の時に、江青(毛沢東夫人で文革
  を主導した四人組の一人)が指導した革命模範劇『紅灯記』に登場する、鬼のような悪役
  の日本人『鳩山』だ。だから、鳩山首相がいくら中国重視を唱えても、気の毒だけど名前
  が悪いねえ」

 菅直人新政権が発足したので、近藤氏は再度、くだんの元外交官に、新首相の心象を聞いてみたら、彼は、再び顔を曇らせてこう言ったとのことです。
 「前に、中国人は人を漢字で判断するって説明したでしょう。『菅』という字を見て、中国
  人が共通して思か浮かべるのは、『草菅人民』という4字熟語だ。『指導者が人命を軽視
  する』という意味だ。現代中国語では、『菅』という漢字は、この4字熟語にしか使わな
  い。だから、菅首相のイメージがいいわけないでしょう」


 手元の漢和字典にはこの成語はありませんでしたが、中国語の辞書には、「草菅人民」というのはありませんでしたが、「草菅人命」というのがありました。

 意味は「人命を草や菅草のように取り扱うこと。人命を軽視すること」(treat human life as if it were not worth a straw.)です。この成語の構造は「V+O」で、訓読すると「人命ヲ草菅ス」ということでしょう。「草菅」とは名詞ではなく、きっと「ヘナヘナな草や菅のようにヘナヘナにする」という動詞に使っているのです。

 それなら、「菅」というのはそんなに悪いイメージの姓なのでしょうか。

 そういえば平安後期の漢学者で右大臣、今や学問の神様といわれる菅原道真(845-903)という人がいました。 江戸時代には儒者で詩人で、頼山陽ともども昔はかなりの有名人だった菅茶山(1748-1827)という文人もいました。中国にも「菅」という姓があると、中国語辞書にも書かれています。

 それではこの「菅」という字、どんな意味の文字でしょうか。

 ある字書の文字解説では「官は音符で、管に通じ、くだを意味する。茎がくだ状にになっている、すげの意味を表す。」とあり、音と意味を組み合わせた形声文字でした。「菅」は「管」に意味もかさなり、日本語読みはいずれも「カン」ですが、中国語はなぜか「jiān」と「guān」で、これは疑問です。

 「菅」の意味は「①すげ。茅(かや)の一種。②ふじばかま。あららぎ。③水につけた茅。④わたくし。よこしま。姦。⑤地名。」とありました。

 問題は④の「わたくし。よこしま。姦。」でしょう。

 どうして「すげ」「かや」などのかよわい草名が「姦」などというおかしな意味に転じているのでしょうか。

 字書の引用例文は「[管氏、牧民]野蕪曠、則民乃菅。[注]菅、当為姦。」とあります。訓読すると、「野蕪曠ナレバ、則チ民乃チ菅ナリ。」でしょう。「田野が荒れると、民はよこしまになる」という意味だろうと思いました。


 確かにこの「菅」という文字、中国でも「草菅人命」という成語で使われる程度の文字のようです。でも、こんな成語を知っているのはかなりの知識人だけに相違ありません。中国でも人名や地名があるということですから、いちいち気にするほどのものではないはずです。でも、菅内閣が「わたくし」したり、「よこしま」なことをしたら、やっぱりこの「菅」は「姦」だったと攻撃されるに違いありません。心してほしいものです。


 今日の新聞には「常用漢字196字追加答申」という記事がでていました。

 漢字もIT時代で、ふえる傾向にあるのだそうで、いく昔も前の、福田恒存・三島由紀夫対漢字制限論者との国語漢字論争、なつかしいですね。

 ”漢詩漢文博士”の石川忠久先生は「3千字程度までにさらに増やしていくべきだ」と新聞で語っていましたが、「鬱」なんていう漢字、いまどきの小中学生、我慢して覚えようとする耐性があるのでしょうか。


 韓国や北朝鮮も昔は漢字を大いに使っていました。なのに、いまはオール、ハングルです。中国と近いだけに、反発が大きいからでしょうか。どうしてわが国は漢字を使い続け、さらにふやそうとするのか、ある意味、不思議ですね。


       (お隣のハングルもまったく読めない、ましてやモンゴルやタイやアラビヤの
        文字をみると、よくもまああんな文字が読めるものだと感心する 漢字オタ
        ク ネズミ)

≪追記≫
 ふつうの中国人に、「Rìběn Jiān shǒuxiàng」(日本Jiān首相)と中国語で発音したとき、まずどんな漢字を思い浮かぶかを聞いてみました。するとやはり、「奸」か「姦」かなあ、といっていました。前後のつなぎから、「奸」とか「姦」とかが思い浮かび、「日本のよこしまな首相」ということかと理解するのでしょう。
 この字と同音の漢字に「間」「監」「肩」「兼」「尖」「煎」「漸」というのがありますが、上記の中国人、「菅」は「guān」ではないかといい、正しく読めませんでした。でも、発音だけを聞いたときのイメージ、やっぱりいくらか問題ですね。
 わが国でも「小沢」を「汚沢」と書くブログもあるのですから、「””首相」とか「””直人」とか書くブログ、私のこの文を読んで(自惚れ<ダー)、さっそく出てくるのではないか、たのしみです。
by damao36 | 2010-06-09 12:11 | 政治 | Comments(0)
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